作品解説&エピソード 『遠の朝廷にオニが舞う』

『遠の朝廷にオニが舞う』の世界⑨産鉄民としての鬼その2(by 珠下なぎ)

皆さん今日は、珠下なぎです。

 

今日は昨日に引き続き、産鉄民としての鬼について解説したいと思います。

 

古代メソポタミアにおいて、鉄の技術をいち早く取得したヒッタイトが覇権を握ったように、古くから「鉄を制する者は世界を制す」と言われてきました。

鉄の武器は青銅や石の武器よりはるかに高い殺傷能力を持ち、鉄を使った農具は穀物の生産性を飛躍的に上げます。

 

つまり鉄を持つものは「武力と富」を持つのです。武力と富、それは権力を欲するものが何よりも欲するものであり、製鉄の技術というものは政治的に大きな力をもつことになるのです。

 

ですから製鉄の技術を持つ民は、特別な力をもつものとして恐れられてきました。

その一方で、権力者は彼らを差別し、一般の人よりも下の地位に置くことで、彼らの鉄の力をわがものとしようとしました。

 

日本で最初の戸籍が作られたとき、鉄の技術をもつ人々は「雑戸」という、良民と賤民の中間に置かれました。

賤民というのは奴婢(=奴隷)などの被差別民で、一般人=良民よりも下の階級です。

 

鉄の技術をもつ人々は奈良時代以降、徐々に良民の身分に解放されたと言いますが、鉄の民に対する恐れと蔑みは、以後も続いたといいます。

 

特別な力をもつゆえに恐れられ、同時に差別されるという構図が、力が強く、自分たちの生活を脅かす醜い鬼という概念につながっていったのかもしれません。

 

最後まで読んで下って、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

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