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映画『エゴイスト』ネタバレありがっつり感想

皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

今回は前回に引き続き、映画『エゴイスト』感想。今回はネタバレありのがっつり感想です。ネタバレが嫌な方は、こちらのネタバレなし感想をご覧下さい!↓

 

1.主人公・浩輔が抱えるもの

主人公の浩輔は、関東ではあるものの田舎の出身。幼い時に母を亡くしますが、同級生たちに母の死を侮辱され、「あいつらのいない世界で生きてやる」と上京し、ファッション誌の編集者になります。浩輔が幼少時に同級生たちに馬鹿にされるシーンからは、小さい頃から浩輔が性的マイノリティであることで、周囲に排除されていたことを思わせます。

東京での浩輔の生活ぶりからは、彼がかなり高収入であることが分かります。けれど、幼少時のトラウマからか、「服は鎧だ」とブランド服をまとい、仕事場では自分がゲイであることの片鱗も見せません。

彼が一番生き生きしているのは、ゲイの友人たちと遊んでいる時のように見えます。ゲイの友人たちといる時は、仕草も口調も「おネエ」風になる浩輔。このあたりも役作りの細かさがうかがえます。

そんな中、浩輔はジムトレーナーの龍太と出会い、瞬く間に惹かれ合います。けれど、彼はある時突然、浩輔の元を去ろうとします。龍太は実は、大きな秘密を抱えていたのです。

 

2.龍太をあらゆる意味で支えようとする浩輔、けれど…… 

龍太は体の弱い母と二人暮らし。生活を支えるため、ジムトレーナーの傍ら、実は十代の頃からウリ(売春)をしていたことを告白します。「今まではちゃんとできてたのに、浩輔さんのことを好きになってから、苦しい」と泣きながら浩輔のもとを去る龍太。

けれど浩輔はあきらめきれません。ある時龍太が客の指定したホテルに行くと、待っていたのは浩輔。浩輔は、「月20万で浩輔専属になる」「足りない分は龍太がバイトで稼ぐ」ことを提案し、龍太を説き伏せます。

ここで私は切なくなりました。男女のカップルであれば、結婚すれば、そこに売り買いなどという概念は介入する余地はありません。生計が同一になるので、経済的に支え合うのは「当たり前」だからです。浩輔が「結婚しよう」といえば済む話。なのに、同性カップルであるがゆえに、「自分が買う」などという言葉を口に出さなければならない不条理……。

龍太は「浩輔専属」になった後、肉体労働を中心に、まっとうなバイトに仕事を切り替えます。龍太は実家に浩輔を招待し、母親にも会わせます。龍太の実家の窮状を知った浩輔は、龍太名義で軽の中古車の購入を決めます。ところが、納車の日、待ち合わせの場所に彼は現れなかったのでした。

 

3.主人公を苦しめ続ける思い 

浩輔が龍太の携帯に電話すると、出たのは母親でした。そこで浩輔は、龍太が亡くなったことを知らされます。寝ている間の突然死でした。

浩輔は、龍太の不調に気づかなかったこと、慣れない肉体労働のバイトをさせてしまったことで自分を責めます。そして、実は二人の関係に気づいていた龍太の母親を、全力で支えようとします。

家の片づけを手伝ったり、入院に付き添ったり、ついには経済的な援助まで始めます。幼い頃に母を亡くした浩輔には、母に出来なかったことを龍太の母にしてやりたいという思いもありました。

もちろん龍太の母は、最初は断ろうとしますが、その度に浩輔は「これは、自分のわがままなので」と頼み込み、受け入れてもらいます。

龍太を亡くして以来、浩輔は「自分の愛が押し付け」「自分の勝手な思い」だという思いをずっと引きずっていました。龍太の母は、「受け取る側が『愛』だと思えば、それは『愛』なの」と優しく浩輔を受け止めますが、浩輔はその思いを、ずっと拭い去れずにいました。

龍太の母を援助する度に「これは僕のわがままでさせてもらっていることだから」「ごめんなさい」と言い続ける浩輔。その時の表情の切なさに、見ているこちらも胸が締め付けられました。

 

4.訪れる転機 

「自分の愛はわがまま」という思い浩輔が抱えたまま続けられた、龍太の母との奇妙な疑似家族関係は、龍太の母が末期がんで入院するという時点で急展開を迎えます。

最初は「息子がお世話になった人なの」と同室の患者に浩輔を紹介する龍太の母。けれど、病状が進んでくると、「息子さん?」という問いに、「そう、自慢の息子なの」と笑顔で答えます。

それが龍太と浩輔を混同してのことなのか、浩輔を息子と認識するようになってのことなのかは分かりません。けれど、疑似家族が本当の家族になっていく瞬間。この瞬間の浩輔の表情。鏡に向かって必死で眉を整えながらも、内心の動揺を隠せません。そして……。

 

5.救い 

末期がんを患う龍太の母は、次第に弱り、酸素を吸入しながらも意識を保つのがやっという状態に陥ります。

そんな中、ある日、帰ろうとする浩輔に龍太の母は、苦しい息の下から「帰らないで。もう少し、そばにいてちょうだい」と訴えます。

その言葉を聞いた瞬間の浩輔の表情……そしてこれがラストシーンとなり、映画は終了。

初めて「本当に求められた」「自分の愛は身勝手ではない」と感じた浩輔。この瞬間、彼は心の底から救われたのです。

浩輔の表情が何よりも雄弁にそれを物語っていました。浩輔を演じた鈴木亮平さん、本当にすごい役者さんですね。

この時やっと、題名の「エゴイスト」の意味を理解した私。素晴らしい映画でした。BLが好きであるかどうか、性的マイノリティであるかどうかなど関係なく、多くの人に見てほしい映画だと思います。今から原作も読もうと思います。

原作はこちら↓

原作を読んでまた書きたいことができたら記事を書くかもしれません。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

 

 

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