読書

珠下なぎの読書メモ①『ひまりのすてき時間割』

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

その時々で関心のあることを書いていけるようになったこのブログ、本日は読了本の感想です。

本日は小児科医で児童文学作家の井嶋敦子先生の『ひまりのすてき時間割』。

 

以前からずっと気になっていたこの作品は、ADHDの小学校6年生、橋本ひまりちゃんが主人公。

ADHD(注意欠陥多動性障害)は成人でも3~4%の人が持っているとも言われていますから、30人のクラスに一人程度はいると思っていいでしょう。

ADHDは、最近になって認知されることが増えてきましたが、診断されないまま大人になる人も多い病気。

ひまりちゃんも、小学校5年生までは忘れ物やケアレスミスが多い、けんかっ早い女の子、として毎日を過ごしていきます。

ところが6年生になって、真面目でちょっと融通のきかないタイプの深雪先生が担任になったことをきっかけに、毎日がうまくいかなくなります。

勧められて受診したクリニックで、「さいきょうのADHD」と診断されたひまりちゃん。

主治医の和子先生やカウンセラーさんの力を借り、毎日を生きやすくするために、日々の生活に様々な工夫を凝らしていきます。

 

このひまりちゃんは、とてもポジティブで明るく、面白い子。ADHDの特性のために日常生活でつまづきがちなことも、まるで新しい遊びを考えるように工夫をこらして克服していきます。

ひまりちゃんの前向きな姿はとても素敵で魅力的。同じADHDの子どもたちにも、希望を与えてくれることと思います。

作品中にも書かれているように、「ADHDは、本人も周囲も困っていなければ治療なんてしなくてもいいい」んです。けれど、困っていることがあれば、ADHDの特性を知ることによって、周囲も本人も救われます。

 

ひまりちゃんを見て思ったのは、「早めに診断されてよかったなあ」ということと、「ひまりちゃんは皆に愛されて育っているんだなあ」ということ。

深雪先生も、最初はひまりちゃんにとってちょっと対立するような立ち位置ですが、深雪先生とうまくいかなかったことがきっかけでひまりちゃんは診断を受け、主治医の和子先生と出会う機会を得ます。

そしてひまりちゃんが診断を受けたことで、深雪先生にも変化が生まれます。

ADHDがあまり知られていなかった時代は、「行儀の悪い子」「ダメな子」として否定され、そのためにネガティブになってしまったり、うつになってしまったりという人も沢山いたでしょう。

今でも、大人の中には困りごとを抱えながらも、ADHDを持っていることもその特性も分からないため、周囲も自分も困ってしまっている、という方も、外来でちらほらお見掛けします。

こういった皆さんも、もう少し早く診断を受けていたら周囲も本人ももう少し楽になれただろうなあ、という感想を持つことが少なくありません。

この物語では、ADHDの特性やその対処法がとても分かりやすく語られ、とても勉強になります。

もちろん、日々の困りごとに立ち向かい、克服していくひまりちゃんの姿はとても生き生きとしていて可愛らしく、純粋に物語としても楽しめます。

井嶋先生、素敵な物語をありがとうございました!

 

 

 

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