医療・心のケア

災害後の心ケアのあり方④支援者にできること

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

1月1日の震災を受け、災害後に起こる心の変化や、それから回復するために知っておきたいことなどをお話してきました。

今回は、当事者の方より、むしろ支援者や、周囲の方々に知っておいてほしいことをお話したいと思います。

 

支援者が心がけてほしいこと

今まで述べてきたように、心の傷から回復するために「自分の気持ちを他人に聞いてもらう」ことは大変意味があります。だから、支援者が「話を聞く」ことは大変重要です。

「話を聞く」というと、一見誰にでもできそうですが、ここにもいくつか注意しなければいけない点があります。

まず、話を聞かねばならないからと言って相手に話すことを強く要求したり、話の途中で相手が話を続けられなくなった時に続けることを促したりしてはいけません。

あくまで、「相手のペースで」話を聞くことが重要です。特に、災害の直後、まだ生々しい記憶にさいなまれているときに、無理に話を聞きだすことはむしろマイナスになります。

 

「話を聞く」ことの効果のひとつは、相手が「自分が受け入れられている」「一人ではない」という安心感を得られることです。

この安心感は心の安定につながり、ひいては心のケガの回復にもよい効果をもたらすことが期待できます。

 

だから、別に「話を聞く」という行動に拘らなくてもいいのです。

相手と自分の関係の中で、ちょっとした自分にできることを手伝ったり、手伝いを申し出たりすることも相手の孤立感を和らげ、安心を得ることにつながります。安心できる人間関係ができ、「この人なら話しても大丈夫」と相手が思い、辛い気持ちを話すことができるようになれば、さらに回復が早まることも考えられます。また、遠く離れた場所にいる友人が災害に遭った場合などは、すぐにできることはなくても、「連絡を取り続ける」「友人であり続ける」ことだけでも少なからず相手の孤立感を和らげることができます。

 

一人ひとりの体力や体質が異なるように、回復の早さも人によって異なります。同じ場所で被災した人たちの中でも、早期に回復して復興のために奔走する人もいれば、なかなか回復できず思うように動けない人もいるでしょう。

今はまだそれほど目立ちませんが、時が過ぎれば過ぎるほど、比較的早く立ち直って様々な活動をしている方と、なかなか苦しみから抜け出せない方との間の差は目立つようになってきます。

そういう時、周りが回復の早さに差があるのだということを理解して、なかなか立ち上がれない人がいてもその人のペースを尊重すると、逆説的ですが早期の回復につながりやすくなります。

それとは反対に、「みんながんばっているのにあなただけいつまでもくよくよして……」など非難したり、「一緒にがんばりましょう」などと激励したりすることは、意図に反して相手を傷つけ、回復を遅らせることになりかねません。

 

震災から時が経つほど、この点には注意が必要です。

時間がたてばたつほど、周囲の人は心に傷を負った方の傷が治っていることを期待するようになり、また、先に述べたように、立ち直った方との差も目立つようになるからです。

 

また、一つ、支援する側自身にも注意しなければならないことがあります。支援する側も、悲惨な体験を直接聞くことで心に傷を受けることがあります。こんな時にも、「自分が支援する立場だから」と一人で抱え込まず、同じ立場の人と気持ちを分かち合ったり、無理せず休息をとるよう心がけたりすることが大切です。

 

まとめると、心に傷を負った方が、

① 気持ちを吐き出してもいい場所を作る

② その人のペースに合わせて見守る

③ つながりを持ち続ける

ことが原則なのです。

 

被災し、心に傷を負った方へのNGワード集

前回の記事で、悲しんではいけない空気を作ったり、やたら復興のために高揚した空気を演出することは、心の傷に苦しむ人にとってマイナスになることがあると述べました。

心に傷を負った人に直接かける言葉として、専門家の立場からして、かけない方がよい言葉は、次のようなものです。

「頑張れ」

「あなたが元気にならないと亡くなった人も浮かばれないですよ。泣いていると亡くなった人が悲しみますよ」(悲しい時には泣いていい、元気を失っていいという原則が守られていない。「喪失」がきちんと扱えていない。よく言われる言葉だが、たくさんの問題が含まれている)

「命があったんだからよかったと思って」

「まだ、家族もいるし、幸せな方じゃないですか」

「このことはなかったこと思ってやりなおしましょう」

「こんなことがあったのだから将来はきっといいことがありますよ」

「思ったより元気そうですね」

「私ならこんな状況は耐えられません。私なら生きていられないと思います」(しっかりしているとほめるつもりで言われていることがおおいのだが、おめおめと生きている自分を非難されたと感じる人がおおい)

「いつまでもくよくよしないで前に進むことを考えましょう」

「他の人は立派に立ち直って毎日頑張っていますよ」

(参考文献「心的トラウマの理解とケア」平成13年、じほう出版)

もちろん、言葉というのは、「誰に」「いつ」「どんな状況で」言われたかによって、受け手の受け止め方は大きく変わるものです。言った人と言われた人の関係性・それまでの信頼関係・性格などによっては、上記の言葉がむしろ回復を後押しする場合もゼロとは言えません。

しかし、関係の浅い人に対し、相手のことをよく知らない状況では、決して使うべきでない言葉がこれらです。

あくまで、傷を負った方が「つらい時はつらいと言え」「その人なりのペースで」「十分に悲しむ」環境をできるだけ作ることが重要なのです。

 

最後に

災害で心に傷を負った方に接する際、支援者の方に知っておいてほしいことをまとめました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

 

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