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見どころと謎が満載の筑前の国一之宮・筥崎宮②筥崎宮の元宮・大分八幡宮

皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

さて、今回は前回の続きです。筥崎宮の元宮・大分八幡宮に、遷宮の謎を求めることにしましょう。

 

1.筥崎宮の元宮・大分八幡宮とは

大分八幡宮とは、福岡県飯塚市大分にある神社です。

由緒は、社のHPによると、このように書かれています。

神亀3年(726)の創建と伝えられる大分八幡宮は、神功皇后の所縁の地で、筥崎宮の元宮とされています。御祭神は応神天皇(八幡大神)、神功皇后、玉依姫命です。

神功皇后は、三韓征伐から帰国した後、粕屋の宇美邑にて応神天皇を御出産遊ばされ、その翌年の春、粕屋と嘉穂の郡境にある大口嶽(大口嶽の乳呑坂)を越えて当地に至ります。神功皇后は、当地にて引率していた軍士を解隊し、それぞれの故郷に返します。その大分から大分と称されるようになったと伝えられています。

御祭神である応神天皇(八幡大神)の神霊は、欽明天皇32年(571)に豊前国宇佐郡に所在する馬城嶽(御許山)に出現したと伝えられ、神亀2年(725)に現在の宇佐神宮の鎮座地である小倉山社へ遷座します。その翌年の神亀3年(726)、御神託により豊前地方と穂波地方、太宰府を行き来する拠点であり、大分の由緒ある当地に鎮西第一といわれる壮麗な社殿、穂浪宮(大分宮)が造営されたのが大分八幡宮の創始とされています。

宇佐宮御託宣集の延喜21年(802(注))6月1日の件にて『我宇佐宮より穂浪の大分宮は本宮也』と記され、箱崎の松原への遷座の神託があり、3年後の延長元年(923)に遷御したことから筥崎宮の元宮とされています。その遷座の前からの御神体で、神功皇后が腰裳に挟んでいたとされる「くしみ玉」は、大分八幡宮にて奉斎されていたとされています。

(引用元;【公式】大分八幡宮 : 由緒と歴史 (daibu-hachiman.com)

筆者注:延喜21年は正確には921年であり、802年というのは間違いと思われます)

まとめると、

571年 応神天皇の神霊が御許山に出現

725年 応神天皇の神霊が現在の宇佐神宮に遷座、宇佐神宮の創建

726年 大分八幡宮の創建

923年 神託により、大分八幡宮が筥崎宮に遷座

ということになります。

ではでは、この時にあった神託とはどのようなものだったのでしょうか。

 

2.遷宮のきっかけになった神託

大分八幡宮から応神天皇の霊が筥崎宮に遷されることになったきっかけになった神託は次のようなものです。

『宇佐宮御託宣集』

延喜二十一年六月一日、筥崎神託す。

我が宇佐宮よりは、穂浪大分宮は我の本宮なり。去る二十日辰時を以て、来り着く。今日巳時を以て、爰に来る所なり。其の故は、香椎宮は我が母堂、住吉宮は我が親父なり。我が幼少の当初、志賀嶋を点住して、これに跡づく所なり。夷類を征伐せしむる後、吾出生の時、号を崇めらるべし。我が先の世に、三箇所に居住せしむべき由、所々に有りと雖も、先の世に天下国土を鎮護し始めし時に、戒定恵の筥を納め置く。埋むる所は、彼の父母両所の敷地の中間に、松一本を殖うる、巳に其の璽なり。適生土の上へ、彼の所に居住せしめんと欲ふなりてへり。

私に云く。大分宮は我が本宮とは、欽明天皇の御代、御示現の前、御霊行の時なり。

(引用元;【公式】大分八幡宮 : 由緒と歴史 (daibu-hachiman.com)

921年6月1日にあった御神託です。ざっとまとめると、「応神天皇の神霊が、自分が生まれた地に帰りたいと神託を通して欲した」ため、筥崎宮へ応神天皇を遷すことが決められた。ということらしいのです。

921年は、醍醐天皇が筥崎宮に「敵国降伏」の御宸筆を下賜されたのと同じ年。御宸筆の下賜は、この神託を受けてのことと考えられます。

 

ちょっと脱線しますが、よくよく見ると、この神託にはさらっととんでもないことも書かれています。

「香椎宮は我が母堂、住吉宮は我が親父」

これは、応神天皇が「自分の母は神功皇后、自分の父は住吉大神」と言っているということなのです!

 

正史の上では、応神天皇は神功皇后とその夫である仲哀天皇の子ということになっています。しかし、このブログでも何度も取り上げたように、妊娠週数の不自然さや、『住吉大社神代記』の記述からは、応神天皇の父は住吉大神(≒武内宿禰)と考えられます。それがまた、『宇佐宮御託宣集』でも裏付けられた形になっているのです。

 

さて、応神天皇の神託によって、筥崎宮へ応神天皇の遷座が決められました。では、醍醐天皇は、下賜した「敵国降伏」の御宸筆に、どんな思いを込めたのでしょうか。次の記事で考察したいと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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