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珠下なぎの歴史メモ⑰ハロウィンの歴史その5 ハロウィン、大西洋を渡る

皆さんこんにちは、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

前回の記事は楽しんで頂けましたか?

皆さんのハロウィンパーティーのご参考になれば幸いです。

 

さていよいよ今回は、ハロウィンがアメリカに渡り、今のような形になった過程についてご紹介しましょう。

 

主にイギリスで祝われていたハロウィンですが、19世紀に大きな転換を迎えます。

1845年、胴枯れ病という植物の疫病がアイルランドを襲い、主要作物であるジャガイモが壊滅的な被害を受けます。

以後7年間の間におよそ百万人のアイルランド人が死亡、ほぼ同数のアイルランド人が国を離れます。

移住を選んだアイルランド人の多くは、アメリカに渡ります。

ハロウィンの習慣は、この時に「英国の伝統的な祭」としてアメリカに持ち込まれました。

当初はラギボウルなどの占いの風習、ガイ・フォークスの日に由来する焚火の習慣などが主体となりますが、細部は徐々に変容していきます。

ラギボウルの水が色水に変わったのもこの頃で、焚火の習慣は危険性などからあまり行われなくなりました。

同時にこの頃、新たなハロウィンの代表的なアイテムとして定着したものがあります。

 

皆さんもよくご存じのジャックオランタンです。

 

ジャックオランタンの伝説についてはこちらの記事で紹介しています。

 

イギリスではカボチャではなく、カブを使った提灯であったことは記事のとおりです。

ところが、この頃、このカブのジャックオランタンが、カボチャのジャックオランタンへと変容を遂げます。それは、こういういきさつなんです。

もともと新大陸アメリカでは、巨大なカボチャに不気味な顔を描く習慣がありました。これはハロウィンとは全く無関係に発展したものですが、1820年、アメリカの小説家アーヴィング・ワシントンは著書『スリーピー・ホローの伝説』の中でこの不気味な顔のカボチャを、永遠不滅の命を持つものとして描きました。

この小説のイメージと、魔女と悪魔の祝祭というイメージのハロウィンが結びつき、やがてカボチャをくりぬいたジャックオランタンが登場するのです。

カボチャのオレンジ色と、悪魔や夜のイメージの黒が結びつき、「ハロウィンカラーはオレンジと黒」との認識も、これをきっかけに徐々に定着していきます。

 

1900年代になると、ハロウィンはさらに変容します。

もともとイギリスのハロウィンにも、アップルボビングのゲームに代表されるように、「若者たちのバカ騒ぎ」的な側面があったのですが、アメリカ、特に地方では、その性格が強くなっていきます。

最初は害の少ないいたずらから始まりましたが、それは徐々にエスカレートし、自動車をひっくり返したり放火したりという、犯罪行為にまで発展します。

当然これらは社会問題になりました。

アメリカの大人たちは、これを解決するために、取り締まりを強化するのではなく、キリスト教団体やボーイスカウト団体が中心となって、パーティやパレード・仮装大会などを催して、平和的な娯楽としてハロウィンを楽しめる環境を若者に提供し始めました。

これにより破壊行為は徐々に収まり、ハロウィンは「家庭で祝う平和的な祭」として落ち着きます。

今のハロウィンの原型はこの頃にほぼ成立したと考えてよいでしょう。

 

もう一つ、この頃に定着したハロウィンの重要な風習があります。

これは、「トリックオアトリート!」です。

子どもたちが仮装して各家庭を回り、お菓子をもらうあの習慣です。

子どもたちが各家庭から物をねだる習慣のもっとも古いものは、ハロウィンと結びついた「ガイフォークスの日」の習慣にあることは以前の記事でも述べました。

 

ところが、トリックオアトリートのもう一つの重要なルーツは、実はカナダに存在していました。

これは「ベルスニクリング」というカナダのクリスマスの風習で、仮装した集団が各家庭を回るものです。

仮装した集団は小間物類を持参して食べ物と交換してもらうというものや、訪問先の子どもたちをわざとこわがらせていい子にしていたかどうかを尋ねて食べ物をもらうというもの(何だか「ナマハゲ」みたいですね)、仮装した人が誰かを当てられなければ食べ物をふるまわなければならないものなど、いくつかのバリエーションがあります。

「トリックオアトリート!」が今のようなフレーズで用いられた最も古い例はカナダに存在することから、ベルスニクリングがトリックオアトリートの重要なルーツであることは疑いないようです。

 

カボチャのジャックオランタン・仮装・トリックオアトリート、今ではハロウィンを代表する習慣やアイテムのように言われていますが、2000年を超えるハロウィンの歴史の中では、比較的新しいものであることがお分かりいただけたでしょうか?

 

次回でハロウィン関連の連載は最後になります。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

 

 

 

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