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同性婚訴訟3件目、東京地裁の判決に思う①(少しチェリまほネタも)

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

さてさて、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』や『きのう何食べた?(何食べ)』など、同性愛を扱った優れた作品が大ヒットする一方で、日本ではまだ同性婚は認められていません。それに対してNHK夜ドラの原作コミック『作りたい女と食べたい女(つくたべ)』が、「#物語のままで終わらせない」と同性婚を求める主張を前面に出したのは記憶に新しいところ。

そんな中、2022年11月30日、同性同士の結婚を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法に違反するとして、同性カップルら8人が国を訴えた訴訟の判決が東京地裁で出されました。

これは、札幌地裁、大阪地裁に続く3件目の判決。これについて、2022年12月1日の朝日新聞の報道を中心にご紹介します。

 

1.判決の要旨

東京地裁(池原桃子裁判長)は、「同性愛者がパートナーと家族になる制度が存在しないのは、憲法24条2項に違反する状態にある」との見解を出しました。

しかし、結論として同性婚を認めない規定は「合憲」と判断し、国への損害賠償も棄却しました。

 

2.これまでの判決との比較

先ほども述べたように、同様の訴訟は今回で3件目です。他の判決と比較するとどうでしょうか?

同性婚を認めない規定が違憲かどうかの争点になった憲法の条文は次の3つです。

①憲法第24条1項「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」

②憲法第24条2項「婚姻や家族に関する立法は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚」

③憲法第14条「法の下の平等」

今回までのそれぞれの地裁の判決をまとめると、下の表のようになります

札幌地裁
(2021年3月)
大阪地裁
(2022年6月)
東京地裁
(2022年11月)
憲法第24条1項 合憲 合憲 合憲
憲法第24条2項 合憲 合憲 違憲状態
憲法第14条 違憲 合憲 合憲

これまでの判決と大きく違うのは、憲法第24条2項について、現在の規定が「違憲状態」としたところ。この点について朝日新聞はこう報じています。

「婚姻の本質とは何なのか。東京地裁は、『親密な人と人とが営む共同生活に、法的保護や社会的承認を与えるもの』と定義づけた。

大阪地裁の判決が『自然生殖で子孫を残す関係に保護を与える』点を重視したのとは違い、同性愛者だからといってパートナーと生涯、家族になれないのは「脅威」と踏み込んだ。

婚姻と似た制度についても積極的な検討を促した。

 

3.前進か後退か

この判決については様々な反応が見られています。

原告側弁護団の上杉崇子弁護士は「違憲状態という判断が示されただけでも素晴らしい」と述べる一方、原告側の方々は前進と受け止める人、及び腰な判決と受け止める人、様々なようです。

中でも、福岡訴訟の原告のうちの一人の方が「婚姻と別の制度によることは平等とは程遠いもので、偏見や差別を温存し続けるのではないか」と指摘しています。

これはそのとおりで、京都産業大の渡辺康彦教授(家族学)は、「異性カップルと同様の法律婚よりも同性パートナーシップ制度などの導入を重視している印象を受けた。(中略)あえて過渡的な方法を強調したのは時代に合っていない」と指摘しています。

私も、新しく違憲状態と言う判決を出し、婚姻の本質を「子孫を残すもの」としなかった部分については評価したいと思いますが、まだまだ同性婚を認めようとしない政府与党への忖度が透けて見える判決だという印象を持ちましたね。

 

4.「チェリまほ THE MOVIE」の事例から考える

これは以前も書いたのでざっと。

チェリ家の皆様がおかえり上映で盛り上がっているところに水を差すようで申し訳ないのですが、安達くんの長崎転勤→事故のエピソード。

安達くんは長崎の事故騒ぎをきっかけに、黒沢さんとの関係を周囲に認知してもらおうと考え始めます。

それは正しい選択です。しかし、東京に住んでいた黒沢さんと、長崎に転勤した安達くんが「法的に」パートナーとして認められる方法はなかったのです。

なぜなら、現在のパートナーシップ制度は「自治体単位」だからです。

チェリまほの事例を考察した記事はこちら↓

これについては、県同士で協定を結ぶことにより連携しようという動きも少しずつ出てきていますが、日本全体でパートナーシップが有効になるようにするには、47都道府県×46÷2=1081件もの協定が結ばれる必要があるのです。現在結ばれている協定はわずか2件。……あまり現実的とはいえませんね。

「チェリまほ」の幸せな世界、それに対しても「#物語のままで終わらせない」と、声を上げたいと思う私でした。

 

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

 

 

 

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