皆さんこんにちは、珠下なぎです。
『遠の朝廷にオニが舞う』は、福岡県筑紫野市にある九州最古のお寺・武蔵寺に伝わる「武蔵寺縁起」をもとにしているというのは、既に何度も述べました。
1300年も前の伝説ですが、「武蔵寺縁起」の世界は、現在も様々な形で、筑紫野市の人々の生活の中に受け継がれているんです。
まず、筑紫野市のマスコットキャラクター・つくしちゃん。
マスコットキャラクター「つくしちゃん」 - 筑紫野市ホームページ (city.chikushino.fukuoka.jp)より
可愛いですね(笑)。
筑紫野市の様々なイベントでは、着ぐるみのつくしちゃんに会えることもあるそうです。
このつくしちゃんは、「武蔵寺縁起」の主人公・藤原虎麿の娘・瑠璃子姫をモデルにしています。
『遠の朝廷にオニが舞う』を読んで下さった方には言うまでもありませんが、この作品の主人公でもあります。
このつくしちゃん、よーく見てください。
髪に何かお花を飾っていますね。
これ、椿の花です。椿の木は、筑紫野市の「市の木」に選ばれています。
椿の木は、「武蔵寺縁起」の「縁起絵図」の第2幅及び「縁起文」の両方に登場します。
縁起の主人公・藤原虎麿が山口村にしばしば怪火が現れるというので退治に出向き、怪火を矢で射たところ、夢に薬師如来の眷属・十二神将の一人である摩虎羅大将が現れます。
そして、「おまえが射た怪火は薬師如来の尊体を宿した霊木の精の光である。急いでこの木を使って薬師如来と十二神将の像を作り、寺を建立せよ」と告げます。
虎麿が次の日に矢を射た場所に行ってみると、椿の木に自分の矢が刺さっています。虎麿は夢のお告げどおりに薬師如来と十二神将の像を作り、これが武蔵寺の始まりとなった、というお話です。
市のHPを見る限り、椿の木が市の木に選ばれたいきさつには、特に武蔵寺縁起のことは書かれていませんが、「古事記や万葉集の歌によく詠まれている椿の花を、万葉の里・筑紫野市のシンボルとして選定しました」と書かれており、万葉の時代の伝説・武蔵寺縁起の世界観がここにも影響を与えていることがうかがえます。
そして、「武蔵寺縁起絵図」の第5幅のハイライトシーン。筑紫に疫病が流行り、多くの人が死に、瑠璃子姫も病にかかって苦しみます。
薬師如来のお告げで教えられた温泉に瑠璃子を入湯させるとたちどころに病が癒え、以後この温泉は病に効くと評判になり、温泉の周辺には町ができて繫栄します。
今は二日市温泉と呼ばれているこの温泉、実は100年ほど前までは、福岡県唯一の温泉でした。
現在はあまり表立って有名ではありませんが、老舗旅館もいくつかあり、ゆっくりとした時間を過ごせる場所です。
太宰府にも近いので、太宰府を観光される方には福岡市内に宿をとるより二日市温泉周辺に宿泊されることをお勧めします。
特に大丸別荘は、100年以上の歴史を誇り、皇室の方をお迎えしたこともある格式の高い宿で、サービスも客室もお料理も一流です。(回し者ではありません(笑))
最後まで読んで下さって、ありがとうございました!