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池田理代子先生著『「ベルサイユのばら」で読み解くフランス革命』感想

はじめに

皆さん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。

初めての方は、初めまして。心療内科医でゆるく小説を書いたりブログを書いたりしている、珠下なぎと申します。

 

今日も来て下さって、ありがとうございます。

最近ベルばら記事を訪問下さる方が多いので、ついベルばら記事が多くなってしまいますね。

前回に引き続き、ベルばら関連書籍のご紹介です。

 

池田理代子先生著『「ベルサイユのばら」で読み解くフランス革命』

前から気になっていた、ベルばら作者の池田理代子先生自らが『ベルサイユのばら』の歴史的背景を解説して下さるこちらの書籍。

先日読んだ『フランス革命の女たち』よりも、さらに読みやすい文章でつづられています。

たまなぎはちょうど出かける用事があったので電車の中で読もうと持って出たのですが、行きの電車の中であっという間に読めてしまい、帰りの電車の中で読むものがなくなってしまったほどです(褒めてます)。

とても平易な文章で書かれているので、文章を読むのが苦手な方でもとっつきやすいと思います。

 

この書籍は、『ベルサイユのばら』のストーリーを中心として、フランス革命の歴史をわかりやすく解説したものです。

 

内容紹介

この本は、

第1章 革命前夜のフランス

第2章 フランス革命勃発

第3章 王政の廃止、新しい時代へ

の三部から成っています。

第一章では、18世紀のフランス社会の階級制度(貴族・聖職者・平民)や人々の暮らしの実態、貴族社会の文化、首飾り事件やアメリカ独立戦争がフランスへ与えた影響などが解説されます。

この時代は、「絶対王政が揺らぎ始めた時代」と紹介されています。航海技術の発達による貿易が進み、科学技術が発展し、経済的には豊かになり、平民の間でも経済的に力を持つ者――ブルジョワジーが現れます。身分や建前よりも、経済的に強い者たちが一定の勢力を持ち始め、国王を頂点とした強固な身分制度が絶対的なものではなくなった、という時代です。

『ベルサイユのばら』の主人公の一人である、男装の麗人オスカル・フランソワについても一節を割いて説明されています。

オスカルのモデルは、ベルばらファンの方には周知のことでしょうが、フランス衛兵隊の隊長で、王室を裏切って革命側についたユラン伍長です。理代子先生は「男性の心情や生活は想像できないと思い女性にした」と書かれています。実際、この時代、貴族の夫人が男装して妖しい魅力を振りまくことは流行しており、オスカルのように男装した女性というのは珍しくなかったそうです。

先日ご紹介した『フランス革命の女たち』にも、場合によって女装と男装を使い分けた、18世紀半ばの騎士、エオン・ド・ボーモンが紹介されています。

 

第2章では、オスカルに影響を与えた啓蒙思想家・ルソーの生涯や著作について、首飾り事件の背景、バスティーユ陥落から人権宣言への流れが語られます。

首飾り事件の鍵を握った高等法院の役割と王室との関係についても、丁寧に解説されており、より理解が深まります。

 

第3章では、ヴァレンヌ逃亡事件からナポレオンの台頭と失脚、7月革命と2月革命までの流れが解説されます。

連載当時は、オスカルの死後は10週で終了するようにと編集部からの指示があったというのは、理代子先生自身が愛蔵版の前書きを始め色々なところで語られています。

本書を読むと、理代子先生がフランス革命後の流れを、1848年の2月革命で一区切りと考えておられたのではないかと想像できます。

また、フランス人権宣言についても、それが「白人男性だけのものだった」ことを強調されており、『フランス革命の女たち』同様、理代子先生が女性の権利が長いこと抑圧されていたことに激しい怒りを感じておられることが分かります。

フランス革命が近代社会(自由・平等・人権の概念)に与えた影響を、理代子先生独自の視点で考察されており、先生のお考えを知ることのできる貴重な一冊となっています。

 

『ベルサイユのばら』の登場人物との絡み

本書は、革命前夜のフランスの情勢の解説から始まり、ルイ16世とマリー・アントワネットの治世下での政治的・社会的問題を、物語の登場人物(オスカルやマリー・アントワネットなど)に絡めて紹介されているので、『ベルサイユのばら』の読者にとっては非常に読みやすく分かり易いです。

理代子先生の歴史研究や創作の背景を語り、漫画がどのように史実とフィクションを織り交ぜているかを説明されており、ベルばらファンにはたまりません。

 

繰り返しになりますが、文章がとても読みやすいので、フランス革命の複雑な歴史がすっと頭に入ってきます。

 

『ベルサイユのばら』初心者で歴史にもあまり詳しくない方は、こちらを先に読んで、フランス革命の歴史を頭に入れてから、ベルばら本編を読む、という楽しみ方も出来るかもしれません。

ベルばらファンの方にも、フランス革命の初心者の方にも、歴史好きの方にも、自信をもって進められる一冊です。

 

まとめ

・『「ベルサイユのばら」で読み解フランス革命』は、『ベルサイユのばら』の物語を通じてフランス革命の歴史を解説し、史実とフィクションをバランスよく融合しています。

・初心者から歴史愛好者まで楽しめる内容で、革命の背景や意義をキャラクターの視点から生き生きと伝え、とても読みやすい文章で書かれています。

 

ベルばらについては他にもいくつか記事を書いています。気になった方はご覧下さい!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

 

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