『遠の朝廷にオニが舞う』 作品解説&エピソード

『遠の朝廷にオニが舞う』の世界㊱天邪鬼考その1~ルーツは河童と同じ!?~(by 珠下なぎ)

皆さん今日は、珠下なぎです。

 

今回は久しぶりに、鬼のお話に戻りたいと思います。

鬼は産鉄民族、外国人、縄文の神など、さまざまなルーツを持ち、平安時代以降に、角を生やし虎の下帯を履き、金棒を持ったいわゆる「鬼」のイメージが確立したことは、以前の記事でお話ししました。

 

けれど、鬼のイメージが確立した以降も、鬼の種類は多様に分化し、それぞれ特徴を持ったユニークな鬼が生まれたことは、特筆すべきでしょう。

 

代表的な鬼のイメージを持ちながら、固有名詞を持った酒呑童子や茨木童子(彼らについてはまたいつか書きたい)、地獄の獄卒である牛頭鬼(ごずき)・馬頭鬼(めずき。ばずきではない!)、そして今回お話しする天邪鬼(あまのじゃく)。

 

個人的な趣味で申し訳ないのですが、昨年の某ドラマ以来にわかファンになった俳優さんが、今夏公開の映画で天邪鬼を演じると聞いて、「そういえば天邪鬼って鬼がつくよね……?」と調べ始めたところ、興味深い話が色々出て来たのでご紹介したいと思います。

 

天邪鬼といえば、「心に思っていることとわざと反対のことを言う」「人の心を察し、期待されていることとわざと逆のことをやって混乱させる」というイメージがあります。

そう言えばNHK「みんなのうた」で「じゃくじゃくあまのじゃく」なんていう可愛い歌もありました(↓)。

これらのイメージは、民間の説話の中で作られたものですが、「天邪鬼」のルーツは実は二つあります。

 

一つ目は、仏教の中での天邪鬼。

四天王などの天部系の仏像の足元をご覧になったことがありますか?

よく見ると、小さな獣とも人ともつかぬ生き物が、踏みつけられているんです。

これを仏教では「天邪鬼」と呼び、人間の煩悩を示すものだと言われています。

もしくは、毘沙門天の鎧の腹部にある鬼の面とも称される、とwikipediaには書いてあります。

この鬼の面は、中国の「河伯(かはく)」という水鬼に由来するものであり、同じく水鬼である「海若(かいじゃく)」が、日本語で読むと「あまのじゃく」と読めるため、日本古来のあまのじゃくと混交された、とも。

 

さて、ここからは私の解説です。「河伯」は河童のルーツの一つと言われています。

河童にも様々なルーツが説としてあるのですが、民俗学者の折口信夫らは、河童はかつて「河原者」と言われていた被差別民であると考察しています。

芸能や土木など、特殊技能を持ち、それゆえに忌避されると同時に畏怖の念を持たれた人々。

これらの人々は異界との境界に住むとされました。

忌避されると同時に畏怖の念を持たれる、これは縄文の神々や産鉄民が鬼と呼ばれた構造と全く同じです。

 

「あまのじゃく」と発音すると、「鬼」の文字が意識されないので忘れがちでしたが、「天邪鬼」は「とても鬼らしい」ルーツを持つ鬼だといえるでしょう。

 

二つ目のルーツは、古事記に由来します。

こちらは長くなるので、次の記事に譲りたいと思います。

 

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

 

 

 

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