目次
はじめに
皆さん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。
初めての方は、初めまして。心療内科医でゆるく作家活動をしております、珠下なぎと申します。
今日は、話題の映画『教皇選挙』を見に行ってきました。
一言で言うと、「予想以上に素晴らしかった!」です。以下、作品の紹介と感想です。
教皇選挙(コンクラーベ)とは
ローマカトリック教会の最高指導者であるローマ教皇は、教皇の最高顧問である枢機卿100人以上の中から選ばれます。
教皇選挙の間、枢機卿はシスティーナ礼拝堂に集められ、ふさわしい枢機卿へ一人1票で投票します。
一人の枢機卿が参加者の3分の2の得票に達すれば、その時点で教皇が決まります。
誰も得票できなければやり直し。投票は1日4回まで、教皇が決まるまで、枢機卿はバチカン内にとどめ置かれ、外部との接触を禁止されます。
決選投票などはなく、決まらなければ1からやり直しなので、これはなかなかハード。過去に、1268年に教皇クレメンス4世が死去した後、教皇選挙は1271年まで続き、史上最長となったそうです。
「コンクラーベ」は、ラテン語で “cum clavi”(鍵がかかった)という意味。
外部の勢力の干渉や秘密漏洩を防ぐため、外部と遮断された状態で行われるからです。
ちなみに日本語の「根比べ」は、仏教用語の「六根」から来ており、「コンクラーベ」とは何の関係もありません。
教皇選挙は、ベストセラー小説となったダン・ブラウン氏の小説『天使と悪魔』で取り上げられた頃から、日本でも広く知られるようになりました。
折あしく、この記事を書いている2025年4月の21日、サンフランシスコ教皇が亡くなったため、近く教皇選挙が行われることになるでしょう。
日本からも2名の枢機卿が参加し、教皇選挙は5月上旬ころになる見込みだということです。
日本の2枢機卿、ローマ教皇選挙出席へ 東京大司教と大阪高松大司教 | 毎日新聞
フランシスコ教皇は広島や長崎の被爆地を訪問し、平和や核廃絶を訴えるなど、宗教を超えて人類の平和に尽力した方。心よりご冥福をお祈りいたします。
映画『教皇選挙』
概要
公式ホームページにはこのように紹介されています。
カトリック教会の総本山・バチカンのトップに君臨する
ローマ教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>は、
世界中が固唾をのんで注目する一大イベントだ。
ところが外部からの介入や圧力を徹底的に遮断する選挙の舞台裏は、
ほんのひと握りの関係者以外、知る由もない。
この完全なる秘密主義のベールに覆われた選挙戦の内幕を描くのが映画『教皇選挙』である。
聖職者が政治家に見えてくるほどの熾烈なパワーゲーム、
投票を重ねるたびに目まぐるしく変わる情勢、そして息を呑む急展開のサプライズ。
政治的分断が深刻化している現代社会の縮図のような選挙戦の行方は、
悲劇か、それとも新たな時代の希望をたぐり寄せるのか——。
あらゆる観客の好奇心を刺激しながら、先読みを一切許さないストーリー展開で魅了する
超一級のミステリーが、遂にその禁を解く。
ワクワクドキドキさせるような紹介です……!
登場人物たち
たまなぎは前情報ゼロで見に行きましたが、最初不安だったのは、
「登場人物多そうだけど、ちゃんと覚えられるかな?」ということでした。
こういう権力闘争系は、登場人物がきちっと頭に入っていないと、誰が誰か分からなくなってストーリーについていけなくなったりするもの。
それに、今回の登場人物はおじいさんばかり。「見分けがつくかな?」という不安もありました(←コラ)。
でも大丈夫! 皆さんキャラがはっきりしているので、すぐに覚えられます。
名前が覚えにくかったら、とりあえず「主人公」「アフリカ系の人」「アフガニスタンから来た人」などととりあえずの名前をつけておけば、こんがらがることはありません。
どうしても心配な方は、下の人物だけ何となく覚えておけば準備は完璧です。
ローレンス……主人公。教皇選挙を取り仕切ることになった首席枢機卿。温厚そうなおじいさん。
ベリーニ……主人公の親友。バチカン教区のリベラル派急先鋒。真面目で正義感の強そうな眼鏡さん。
ベニテス……前教皇が生前に任命していた、カブール教区の枢機卿。バチカンでは新顔。若めのイケメン。謎が多い。
トランブレ……カナダ・モントリオール教区の保守派。多めの銀髪・大柄。
テデスコ……ベネチア教区、伝統保守主義。厳格そうな縁あり眼鏡。
アデイエミ……初のアフリカ系教皇を狙う。
息もつかせぬストーリー、張り巡らされた伏線
前教皇が心臓発作で急死、新しい教皇を選ばなければならない。
主人公・ローレンスの肩には、教皇選挙を取り仕切るという重圧がのしかかります。
いざ投票が開始されると、情勢は主人公の予想を大きく裏切ります。
しかも、回数を重ねるごとに情勢は大きく変化。その間にも、脛に傷を持つ候補者たちの本性が、徐々に明らかになっていき、一人、また一人と脱落していく。
そこに大きな事件が起き………!
クライマックスからはまさに息もつかせぬ展開。
最後の大きな落ちは、「そう来たか!」とびっくりさせられました。
ミステリーとしても大変すばらしい出来になっています。
貫かれた「真っ当な価値観」
この映画の素晴らしいところは、単に権力闘争、心理的な駆け引きなどに留まらないところ。
信仰とは何か、異教徒といかに向き合うべきか。登場人物が一人一人、 丁寧に向き合い、感情的になる人物を理性的に諭し、常に自らを疑い、正しい道を模索する。その過程が非常に丁寧に描かれています。
どちらかというと、多様性や対話を重んじる、リベラル的な価値観が貫かれているので、このあたりは好き嫌いが別れるかもしれません。
終盤のとある人物の演説は素晴らしかった。
そして、最後の最後で明かされる秘密には(現実的にはあり得ないことなのですが)、瞠目するとともに、新しい未来への希望を感じました。
原作はあるが本邦未訳
原作があるのか、見てながらもずっと気になってたまりませんでした。
最後のエンドロールで、 based on the book"Conclave"と出てきたのを見て、「これはベースになった本があるはず!」と、映画館を出て急いで検索してみたのですが……。
確かにありました、ありましたけど!
"Conclave" Robert Harris。
Amazonでも売ってます! でも、これ日本語訳はないんです。
けれど、けれど!
電子書籍でサンプルをダウンロードすると……、なんと、翻訳機能で日本語で読むこともできます!
ちょっと変な日本語ですけど。
元も英語なので、日本語が変だと思ったら英語で読み直すこともできなくはないです。
電子書籍は1600円。
でも、日本語訳を読むようにはスムーズにいかないでしょうね。どうするべきか。
とりあえず買ってkindleの肥やしにしつつ、少しずつ読み進めるか。邦訳を待つか。悩むところです。
まとめ
・映画『教皇選挙』はローマ教皇の選出のために行われる「教皇選挙(コンクラーベ)」の様子を描いた物語である。
・ミステリーとしてもよくできており、権力闘争・心理駆け引きの描写も素晴らしいが、それにとどまらず、人間が求めるべき「真っ当な価値観」を丁寧に描いている。
・原作本は存在するが日本語版はない。電子書籍を買えば翻訳機能を使って日本語で読むことは可能である。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。