目次
はじめに
皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。
初めての方は初めまして。心療内科医でゆるく作家活動をしております、珠下なぎと申します。
今日も来て下さってありがとうございます!
先日は令和劇場版『ベルサイユのばら』の感想記事に、沢山のアクセスと反響をありがとうございました!
ありがたいことに、「たまなぎのうるさいベルばら愛をもっと聞かせろ!」とのお声を頂きまして、ベルばら愛をもう少し叫んでみることに致しました。
『ベルサイユのばら』に描かれた恋模様
『ベルサイユのばら』では、実在の人物であるマリー・アントワネット、その愛人となるフェルゼン伯爵、そして架空の人物である、男装の軍人・オスカルを中心に恋愛模様が描かれます。
最初オスカルはフェルゼン伯に叶わぬ恋をしますが、フェルゼン伯のアントワネットへの強い想いは揺るがず、オスカルの恋は砕け散ります。
落ち込むオスカルに思わぬ求愛をしたのが、幼馴染のアンドレ。
アンドレはオスカルの乳母の孫で、平民でありオスカルの従者です。
小さい時にオスカルの遊び相手として引き取られ、それからはオスカルとは兄弟のように育ちます。
身分の違いこそあれ、オスカルとの関係はとてもフラット。遠慮のない口をきき、時に突っ込みを入れたり、オスカルをからかうそぶりを見せたり。従者というよりも、親友のような存在です。
ところが、アンドレはいつの間にか、オスカルを女性として愛するようになります。そして、一度は拒まれるものも、じっとそばでオスカルを支え続け、フランス革命のうねりが迫りくる中、ついにオスカルの愛情を勝ち得るのです。
絶大な人気を誇るオスカル&アンドレ
オスカル&アンドレカップルの軌跡
オスカル&アンドレが相思相愛であることを確認するのは、フランス革命の起こった1789年7月の前月の6月下旬。アンドレは7月13日、オスカルは7月14日に戦闘で落命しますから、二人が「カップル」であったのは、わずかひと月にも満たないわずかな間でした。
しかし、この「オスカル&アンドレ」カップルは、世代を超えて(特に女性に)絶大な人気を誇っています。
なぜでしょうか?
もちろん、オスカルとアンドレが、二人ともとても人として魅力的であることはもちろんでしょう。
オスカルは女性でありながら軍人として育てられ、剣の腕は誰にも劣らない上、高潔な魂と深い思いやりを持ち、とても正義感の強い人物。激動の時代を、迷い苦しみながら、自分の選んだ道を突き進み、その生涯を全うします。
一方、アンドレは序盤でこそ目立ちませんが、オスカルの一番の理解者であり、常に味方。何があっても、オスカルのそばを離れず、オスカルを支え続けます。
昭和時代に書かれたアンドレの魅力分析
アンドレの魅力について、1987年初版の『ベルサイユのばら 愛蔵版』解説で、作家の田辺聖子氏は、次のように書かれています。
女にとって、こんなに嬉しい「男の実」があろうか。男同士のような理解と共感を寄せてくれて、しかも異性として愛し、献身してくれるというような。
(中略)
女たちは、男に献身されればそれで満足するのかといえばそうとも限らないのであって(中略)
女は、男に献身され、また男に支配されたい。女の愛は欲深で、女の論理は矛盾している。
献身と支配、この相反する要素を男に求めたいというのが、女の本音ではないだろうか。
(『ベルサイユのばら 愛蔵版 第2巻』、池田理代子、中央公論社より)
この文章を読んだ時、まだ中学生だったたまなぎは「う~ん……」と何とも言えぬ違和感を覚えたものです。
前半はまあ分かる。理解と共感に加えて、異性としての愛情。
けれど、後半は分からない。
それに、「男同士のような」理解と共感というのは何でしょうか?
「理解と共感」は性を超えては成り立たないのか。「一人の人間同士としての理解と共感」と言った方がしっくりくる。
それに、女性が男性に求めているのは「支配」なのでしょうか?
今考えると色々違和感を言語化できるのですが、当時は分からなかった。しかし、この文章が書かれたのが1980年代であることを考えると、当たり前のことかもしれません。
男女雇用機会均等法が施行されたのは、やっと1986年。1992年までは、女性には産休はありましたが、育児休暇はありませんでした。
寿退社(結婚と同時の退社)も当たり前の時代。まだまだ女性は「男性に依存しなければ生きていけなかった」時代でしたから、こういう分析も一理あったのかもしれません。
時代を超えて愛されるオスカル&アンドレの魅力
けれど、今の時代でもなお、この二人が強く支持されるのは、オスカルが自立した魅力的な女性であることに加え、二人が性愛を超えて、深い信頼と愛情で結ばれていることにあるのではないかとたまなぎは思います。
この二人には、男女の関係になる前から、深い絆を感じさせるエピソードが沢山あります。
まずは最初のエピソード。
マリー・アントワネットが王太子妃だった時代、アンドレはアントワネットのわがままから、アントワネットの乗馬を手伝います。その時馬が暴れ出し、オスカルの活躍でアントワネットは助かったものの、落馬して怪我をしていまいます。
「死刑だ!」と怒り狂う国王に、オスカルは身を挺してアンドレを庇い、アンドレは赦されるのです。
他にも、オスカルの黒い騎士捕獲計画のために片目を失っても「おまえの目でなくてよかった」とほほ笑むアンドレ、フランス衛兵隊に入隊し、目の不自由さもあって慣れない射撃に苦戦するアンドレに射撃を指導するオスカルなど、二人は一人の人間同士として深く信頼し合い、慈しみあっていることが随所に描かれています。
現代の女性にとって、自立した女性は魅力的な存在です。
そして、恋愛においても、単なる性愛ではなく、一人の人間同士として、関係が対等であり、精神的に強い絆で結ばれた関係というのは、誰もが憧れるものではないでしょうか。
話は少しそれますが、男性同士の恋愛(いわゆるBL)を好む女性には、恋愛においても対等な関係を求める傾向があるという研究結果があります。
(詳しくは↓
新エッセイ開始!「茅の輪くぐりの由来2」&チェリまほキャラの魅力10 | 物語る心療内科医・珠下なぎのブログ)
オスカルは男性ではありませんが、男装の麗人であり、このオスカルとアンドレの恋の中には、疑似BL的な要素もあるような気がします。(不快に思われた方がおられたらすみません)
まとめ
・時代を超えて愛されるオスカル&アンドレは、カップルとしての期間は短いが、絶大な人気を誇っている
・オスカル&アンドレカップルの魅力は、性愛を超えて、二人が一人の人間同士として、深い信頼の絆で結ばれているところにあるとたまなぎは考える
最後までお読み下さり、ありがとうございました!