『大江山恋絵巻』 物語 作品解説&エピソード

御伽草子『酒吞童子』現代語全訳③

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

さて、連載中の御伽草子版『酒吞童子』の現代語訳、3回目に入ります。

()内はたまなぎのしょうもないつっこみです。

 

前回までのあらすじ

池田中納言国方の姫がさらわれたのをきっかけに、帝に鬼退治を命じられた源頼光ら一行は、体力に任せて大江山へgo!

猪突猛進の彼らのもとに、三社の神様たちが翁に姿を変えて現れ、策を授けてくれた上に、鬼だけに効く毒酒・神便鬼毒酒を差し入れてくれ、鬼の住処へ向かう洞窟へ案内する。

教えられたとおりに洞窟を抜けると、出会ったのは17、8歳の美しい姫君。血で汚れた帷子を洗いながら、鬼が姫たちの血を絞って飲み、肉を肴にしていると訴える。

 

花園中納言の姫、鬼が城の内情を語る

頼光は仰せになりました。

「鬼を簡単に従わせ(いや簡単になんて無理だから山伏に変装したり、三社の神様が助けてくれたりしてるんでしょ……)、あなた方を一人残らず都へ帰そうと、そのためにここまで訪ねてきたのだ。鬼の住処を丁寧に教えてください」

姫君は頼光の言葉をお聞きになると、

「これは夢か現実か、そのためならばお教えしましょう。この川上へ上って行かれてご覧下さいませ。鉄の築地をつき、鉄の門を建て、入り口には鬼が集まって番をして座っているでしょう。なんとかして門より中に忍び込んでご覧なさいませ。瑠璃の宮殿が玉を下げ、甍を並べております。四方に四つの季節を作り、鉄の御所と名前を付けて、鉄で館を建て(鬼が城は鉄筋なのですね、木造の時代に、これは時代の最先端!)、夜になればそのうちにわれらを集め手足をさすらせ寝起きしている(うらやましい……いや酒呑童子がじゃないですよ! 酒呑童子さまのそばに侍っている姫たちが! たまなぎは鬼推しですから!)のですが、牢の口は一族ども、星熊童子、熊童子、虎熊童子、金童子、この四人を四天王と名付けて番をさせて置いております。かれら四人の力のほどは、いかほどかと例えようもないほどだと聞いております。酒呑童子のその姿は、色は薄赤く背は高く、髪は禿で乱れ、昼のうちは人でありますが、夜になると恐ろしい、その丈は一丈(3m!?)あまりあって、たとえようもございません。あの鬼はいつも酒を呑んでいます。酔って寝てしまえば、自分の身がどうなっても気づきません(酒呑童子さまがお酒好きなのは本当みたいですね)。どうにかして忍び込み、酒呑童子に酒を飲ませ、酔って寝てしまったところを見て、思いのままに討ってくださいませ。鬼神は天命がつきて討たれてしまわなければなりません。どうにかしてお知恵を使いくださいませ、お坊様がた」

と仰せになりました。

 

頼光ら、鬼が城に着く

さて、六人の人々は、姫君の教えにしたがって、川上へおのぼりになるとほどなく、鉄の門に着きました。

番をしている鬼どもがこれを見て、「これは何者だ、めずらしい。ここのところ人を食っておらず、人の肉が食いたいと思っていたちょうどその時に、愚かなものは自分で自分を危地におとしいれるものだとは、今こそ思い知られることだ。さあ、引き裂いて食ってしまえ」

と、われもわれもと勇み出しました。

その中の鬼の一人が、

「慌ててことを仕損じてはならぬ。このように珍しい肴はわれらではかなうまい。酒呑童子様にご許可を得てから、引き裂いて食べよう」

と申しました。

鬼たちはもっともだとして奥に入り、この様子を告げれば、童子はこれを聞いて、

「これは不思議なことだ。何にせよ会おう。こちらへお招きせよ」

と言ったので(優しいじゃないですか)、六人の人々を縁の上に招きました。

 

酒呑童子登場! そして攻防戦へ……

その時生臭い風が吹いて、雷が落ち稲妻が光り、前後も分からなくなったうちに、色は薄赤く背の高く、髪は禿(「はげ」じゃないですよ! 「かむろ」です。短く切りそろえた子どもの髪型です)で乱れており、格子縞の上着に紅のはかまを着、鉄の杖をついて、あたりを睨んでたったその姿は、身の毛もよだつばかりででした(『御伽草子』より古い『大江山絵詞』ではイケメンとなっています)。

童子は、

「わが住む山は尋常でなく、岩石が高く角だって聳え、谷は深く道もない。鳥も獣も、道がなければ来ることもできない。ましておのおのがたは人である。天を翔けてきたのか。話せ、聞こうではないか」

と申しました。

頼光はこれをお聞きになって、こう仰せになりました。

「わたしたちの行のならいでは、役の行者と申した人は、道なき山を踏み分けて、五鬼前鬼後鬼悪鬼という鬼神に出会って、呪文を授け餌を与えて憐みました。わたしたちもこの流れを汲むものです。本国は出羽の羽黒の者だったのですが、大峰山にこもってやっと春になったので、都を一目見ようと昨夜徹夜をして出発したが、山陰道から道に迷い、道があったように見えたので、ここまで参りました。

童子様のお目にかかることができたこと、ひとえに役の行者のお引き合わせと、何よりうれしく思います。一本の木の陰、ひと筋の河の流れを汲むことも、皆他生の縁と聞いております。お宿を少しお貸し下さい。お酒を持って参りましたので、恐れながら童子様へもひとつ差し上げましょう。わたしたちも酒をのみ。一晩中酒盛りを致しましょう」

童子はこのことを聞いて、さては問題無い人かと縁より上に呼び上げました。

が、なおも本心を知ろうと童子は、

「持参のお酒があると聞く。われらもあなたがたにお酒をひとつ差し上げよう」

と申されました。

「分かりました」

と頼光は申すと、家来の鬼が、鬼が酒と名付けて血をしぼり、銚子に入れて盃を添えたものを、童子の前に置きました。

童子は盃を取り上げて、頼光に銚子の中身を注いでやりました(血って体から出たら固まるんですけどね。本当に血なの? それ)

頼光は盃を取り上げて、これもさらりと呑み干しました(だから本物の血はさらさらしてませんて)。

酒呑童子はこれを見て、「その盃を次へ」と言いました。

頼光は、「承知した」と言って、綱に酒を注ぎました。綱も盃をひとつ受けて、さらりと呑み干しました。

童子が、「肴はないか」と申すので、「承る」と家来の鬼が言って、今切ったばかりとおぼしき腕と股を板に置いたものが童子の前に置かれました。

童子はこれを見てすぐ、「料理して差し上げよ」と言いました。「承知しました」といって家来の鬼が立つところを、頼光はご覧になって、「私が料理して、頂きましょう」と、腰の脇差をするりと抜き、肉を4、5寸押し切って、舌を打って召し上がりました。

綱はこの様子を見て、「お志のありがたさを、私も頂きましょう」とこれも4、5寸を押し切って、美味そうに食われました。

童子はこの様子を見て言いました。

「あなたがたはどんな山に住み慣れて、このような珍しい酒肴を召し上がるとは不思議なことだ」

頼光はお聞きになって言いました。

「ご不審はもっともです。私たちの行のならいとして、慈悲として頂くものがあるならば、たとえ心で望まなくとも嫌と言うことはございません。ことにこのような酒肴を、食うにつけ心に浮かんだことがございます。討つも討たれるも夢の中、この身はすなわち仏である故、空(くう)にふたつの味はありません。わたしたちもともに空に浮かぶ、ああ、ありがたいことでございます」

そう言って頼光が礼をすれば、鬼神には邪道の行いはないということか、童子も返して頼光に、礼拝したのは嬉しいことでした(そう、鬼は邪道のことはしないんです。これ伏線)。

童子が申されるには、

「心にそまぬ酒肴を、差し上げたのは悲しいことだ。わたしがあなたがたに差し上げたのは無益であった」

と打ち解けたように見えました。

その時頼光は座敷を立ち、例の酒を取り出して、

「これは都より持って参った酒でございますが、恐れながら童子様へもひとつ差し上げましょう。毒味のために」

と言って、頼光は一つさらりと呑み干して、酒呑童子に注がれました。

童子は盃を受け取り、これもさらりと呑み干しました(ダメ―!)。

まことに神便のありがたいことか、不思議の酒なので、その味は甘露のごとく、心も言葉も及ばぬほどです。

この上なく喜んで、酒呑童子は、

「わが最愛の女がおります、呼び出して飲ませよう」

と言って、國方の姫君と花園の姫君(最愛の女……!)を、呼び出して座敷に侍らせました(ん? 頼光はなぜ池田中納言國方の姫と分かったのか?)。

頼光はこれをご覧になって、

「これは都の高貴な女性たちに差し上げましょう」とお酌に立たれました。

 

まとめ

・頼光たちは鬼にさらわれたと訴える花園中納言の姫君から、鬼の住処の内情を聞き出す。

・頼光たちは鬼の住処に着き、門番をしていた鬼たちに食われそうになったが、酒呑童子がそれを止め、招き入れた(酒呑童子いい人じゃん)。

・酒呑童子は頼光たちを試そうと血や人肉を出したり、様々な質問をしたりするが、頼光は何とか切り抜け、鬼だけに効く毒の酒・神便鬼毒酒を酒呑童子に飲ませることに成功する。

 

 

 

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