『遠の朝廷にオニが舞う』 作品解説&エピソード

『遠の朝廷にオニが舞う』の世界⑪鬼とは縄文の神か?(by 珠下なぎ)

皆さんこんにちは、珠下なぎです。

 

鬼についてのお話はまだまだ続きます。どうぞ末永くお付き合いください。

 

昨日までのエッセイでは、産鉄民としての鬼をご紹介しました。

 

本日は、鬼を、縄文の神々と考える説についてご紹介します。

 

古代史や怨霊の歴史に詳しい歴史作家の戸矢学さんは、著書『鬼とは何か』(河出書房、2019年)の中で、「鬼とは弥生人に滅ぼされた縄文の神々である」と主張されています。

 

日本に稲作が伝わる前、日本に住んでいた縄文人は狩猟や採集による生活を成り立たせていました。

ここに大陸から弥生人が渡来し、稲作を伝えるとともに縄文人を駆逐し、あるいは同化して日本に定着し、やがてヤマト朝廷として日本を統一します。

 

日本には、東北のナマハゲを代表として、鬼の面をかぶって人々を追い回す「鬼追い」の儀式が各地に伝わっています。戸矢学さんは「山間部や島に追いやられた縄文の人々が、自分たちのために鬼となって戦ってくれたものを懐かしみ、その思いを鬼祭りとして伝えてきた」と語ります。

 

弥生人がもたらした稲作は日本を豊かにしましたが、コメという形で富の蓄積を可能にしたことで、社会に貧富の差や身分の差をもたらしました。

それが進み、やがてヤマト朝廷を頂点とする中央集権国家が出来上がるわけです。

弥生人=ヤマト朝廷、縄文人=朝廷にまつろわぬ民と考えると、縄文人を鬼と考える説にも一定の説得力がありますね。

 

産鉄民にしろ、縄文人にしろ、大和朝廷による征服を拒んだ人々、という意味では、鬼としての共通の性格をもったものと思われるかもしれません。

 

最後まで読んで下さって、ありがとうございました。

 

 

 

 

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