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『作りたい女と食べたい女』シーズン2感想

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

さて、少し遅れましたが、NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』シーズン2、やっと見終わりました!

結論から言いますと、すごく良かったです!

シーズン1はやや、いやかなり消化不良な感じがあったのですが、今回は色々な問題をしっかり描き切った感じがありました。

しかも、10話で終わっていたシーズン1に比べ、今度は倍の長さの全20話! かなり見ごたえのある作品に仕上がっていました。

 

たまなぎの感想を思いつくままに述べてみます。

多分にネタバレを含みます。

 

シーズン1での不満点とシーズン2での描かれ方

シーズン1では、たまなぎは実は山のように不満を抱えていました(笑)。

以前の記事でも書いたとおり、主には次のようなものです。

・野本さんが春日さんへの気持ちを自覚したところで終わっている。春日さん側の気持ちが描かれていない。

・もちろん、二人が恋愛関係にさえなっていない。

・女性の生きづらさを描くエピソードが大幅にカット、もしくは骨抜きになっている。

 

シーズン1を見終わった後、たまなぎは「これでシーズン2なかったら暴れる!」と荒れておりました(笑)。

しかし、これらの不満点は、シーズン2でほぼ解消されていました。

 

野本さんと春日さんの心が少しずつ接近するさまを丁寧に描くシーズン2

シーズン1の終わりで春日さんへの想いを自覚した野本さん。

それでも急に告白できるわけでもなく、二人の距離はもどかしいくらいにゆっくりと、しかし、確実に近づいていきます。

節約料理を作ったり、バレンタインを一緒に過ごしたり。また、二人の部屋の間に越してきた南雲さんの登場、野本さんがネットで知り合った、相談相手の矢子さんも、二人が自分の感情を自覚し、関係を前に進めるのに一役買います。

小さな出来事の積み重ねと二人の心情が丁寧に描かれていき、二人がやっとお互いの想いを確認するのはなんとエピソード全体の半ばも過ぎてから。

しかし、二人の心情がとても丁寧に一つずつ描かれていくので、視聴者もその感情に同化しやすく、二人の感情を自分のように味わうことができます。

最終話では、二人がちゃんと「恋愛」関係だと象徴するようなエピソードも入り、たまなぎとしては大変満足しました。

 

描かれる女性の生きづらさ

シーズン1では春日さんの家庭については、過去の辛い出来事としてしか描かれませんでした。しかし、春日さんの家族は、現在の春日さんにとっても大きな脅威になっていました。

原作では比較的早い段階から描かれたこのエピソードが、シーズン1ではばっさりカット。これについてたまなぎは大いに不満だったのです。

 

しかし、今回のシーズン2では、声だけですが春日さんの父と叔母が登場。

春日さんの実家では、春日さんの父方の祖母が要介護となり、春日さんの母が介護を一手に引き受けている状況。

それを解消するために、父親は春日さんに「仕事を辞めて帰ってこい」と迫ります。近くには弟もいて、自分もいるのに。

今は介護保険もあって、その気になれば安価で公的サービスを受け、介護の負担を減らすこともできます。しかし、それはしないんですね、このタイプの中年男というやつは。「介護は女性が無償で担うべき」と考えているからです。

父親に絶縁を突き付けた春日さんですが、父親は納得しません。今度は叔母まで現れて、父親との関係修復を迫ります。しかも、春日さんの住所まで、勝手に父親に教えてしまいます。

 

いやいや、叔母さん、今問題になっている春日さんのおばあさんって、あなたのお母さんでしょう。なんで第三者目線で仲介役みたいになってるんですか。

 

このエピソードは、今なお残る「女性の生きづらさ」を象徴的に描いています。

ここまで極端な例は少ないかもしれませんが、「女性は家庭で無償労働を担うべき」「老人の面倒は長男の妻が見るべき」という古い価値観が、今でも女性の生き方を制限しています。

その上春日さんの父親は、春日さんの教育にかかった費用まで請求してきます。「本来教育が必要ない女に学費を出してやったんだから、親の言うことを聞くのが当たり前。聞かないなら金を返せ」ということでしょうね。

こんな親、本当にいるのか? と懐疑的に思った人もいるでしょうが、似たような事例に遭遇したことは何度かあります。決して大げさではないでしょう。

 

シーズン1では描かれなかった、春日さんの家族の問題と、春日さんの家族との訣別の決意を、今回のエピソード2はしっかり描いていました。

それにより、現代においてなお続く女性の生きづらさを浮き彫りにするとともに、春日さんが、「過去を捨て、野本さんとの未来へ踏み出す」という、新しい人生の出発点に立ったことを、より強調していたと思います。とても良かった。

 

同性カップルの生きづらさ

連れ戻しに来るかもしれない父親から逃れるため、春日さんは野本さんと一緒に引っ越しをする決意をします。

そこで部屋探しを始めるのですが、通常の不動産屋さんでは、二人が同性カップルであることを言い出せません。

そして、友人同士のルームシェアだと勝手に勘違いした不動産屋の悪気のない言葉にも傷つきます。

そこで、矢子さんがLGBTフレンドリーの不動産屋さんを紹介してくれ、無事に部屋を借りることができます。最近は増えましたね、こういうところ。

最後は、二人の引っ越し→新生活のスタートというところでシーズン2は終了します。とてもきれいな終わり方でした。

その他にも、婚活中の野本さんの同僚が、「結婚がゴールなんだろうか」「結婚しない生き方もあるんじゃないか」と苦悩するシーン、同性カップルであるために結婚という選択肢すらない野本さんを気遣い、同性婚ができない現状を憤るシーンなど、社会的なメッセージが随所にちりばめられています。

社会的な問題についても、女性同士の恋愛を描くことについても、原作に比べ「かなり腰の引けていた」シーズン1に比べて、思い切って「踏み込んだ」印象がありました。NHK、本気出しましたね。うんうん。満足です。

 

その他雑多な感想

シーズン2からは、原作でも登場した矢子さんと南雲さんが登場。矢子さんは、自炊をしない人で、南雲さんは、人前で食事をすることができない会食恐怖症。矢子さんはそれに加え、どちらかというと恋愛対象は女性だが、性的欲求を持たないノンセクシャル。

「レズビアンの中にも、恋愛が重要な人もいればそうではない人もいる。同じ人はいない」という矢子さんの言葉はとても印象的でした。生理が重い野本さんにかけた、「同じ女性はいませんから」という春日さんの言葉ともシンクロします。「女性は」「男性は」「レズビアンは」と一言で雑にまとめてしまうことの暴力性が、さりげなく指摘されています。

 

それから、小ネタですが今回印象的だったのは、野本さんと同僚の佐山さんが参加したプロジェクトで一緒になった三上さん(男性)。

この作品では、家父長制度の幽霊みたいな春日さんのお父さんとか、お弁当を持参しただけで野本さんに「いいお母さんになれそう」などと言ってくる気持ち悪い同僚とか、ラーメン屋さんで食事をしてくる春日さんに食べ方が気に入らないといちゃもんをつける男性客とか、ネガティブな存在の男性が多く登場します。

しかし、この三上さんは違います。バレンタインデーの前後、三人の参加するプロジェクトは猛烈に忙しくなります。仕事がバレンタインデーの予定を控えて、何とか終わらせようと必死で仕事をこなす佐山さんと野本さん、それでも当日は残業にもつれこみそうになります。青ざめる二人に、「僕は大丈夫ですから、もう帰られていいですよ」と、優しく声をかけるのです。

こういったエピソードが入ることで、全体に漂っていたミサンドリー(男性嫌悪)的な雰囲気がやわらげられ、バランスの取れた印象になったのはとても良かったと思います。

三上さん、原作にも登場していたかな。またゆっくり読み直してみます。

 

さいごに

シーズン1にはさんざん文句をつけたたまなぎですが、今回のシーズン2はとても良かった。

NHKさん、ありがとうございました!

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