おっさんずラブ チェリまほ

社会派ドラマとしてのチェリまほ③~おっさんずラブとの比較

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

ここ3回分のチェリまほ(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)記事には、沢山のアクセス、ありがとうございました!

反響が大きいようなので、しばらく過去記事を加筆修正してアップしたいと思います。

アニメも始まりますしね。

そう思って過去のameblo記事を漁っておりましたら、ちょうど『おっさんずラブ』との比較記事を複数見つけました。

これは……タイムリー!?

というのも、『おっさんずラブ』もなんと、6年ぶりに正統派続編が制作され、2024年1月から放送されるとのことなんです。

というわけで、今回は前回の記事のテーマを引き継ぎつつ、チェリまほとおっさんずラブの社会問題の描き方の違いについて書いていきたいと思います。

 

『おっさんずラブ』とは

前回、7話のセクハラエピソードを取り上げ、社会派ドラマとしてのチェリまほの側面について感想を書かせていただきました。

セクハラということで、チェリまほに関連して思い出したのが、2018年に大ヒットしたBLドラマ『おっさんずラブ』。

社会現象とまで言われ、映画化もされました。

知らない方のためにざっと説明します。

田中圭氏演じる春田創一(33歳)は、天空不動産の営業所に勤めるサラリーマン。人は好いが要領が悪く、営業成績は最下位、女性にもモテず、5年間彼女なし。ところが、そんな彼に長く片思いしていた人がいました。それは春田にとって直属の上司である黒澤武蔵部長(55歳)。(チェリまほの黒沢優一ではない!)演じるのはベテラン俳優の吉田鋼太郎氏。

突然の上司の恋心に戸惑う春田、そして部長にとって恐るべき恋敵が。本社から異動になったイケメンエリート後輩・牧凌太(25歳)も、ひょんなことから春田とルームシェアを始め、春田に恋をしてしまったのです。牧を演じたのは、当時の20代を代表するイケメン俳優、林遣都氏。

男性三人の三角関係のドタバタを時にコミカルに、時に切なくピュアに描いたドラマです。男性同士の恋愛を描いたドラマでこれだけヒットしたのは、おそらくこれが初めてではないでしょうか。

2019年に続編である映画が作られてヒットしましたが、同年ドラマとして放送されたシーズン2は春田創一と黒澤武蔵以外はキャスト総入れ替え。舞台も航空会社に移行し、別の物語となってしまい、ファンも二分されてしまいました。そのまま、終わりとなると思いきや、5年のブランクを経て、2024年1月、初期の不動産メンバーでの続編『おっさんずラブ~リターンズ』が放送予定となっています(今ココ)。

 

『おっさんずラブ』に描かれたセクハラ問題

『おっさんずラブ』は上司と部下の恋愛が描かれているため、それ自体についてもセクハラ的な側面がないか、様々な意見があるのですが、私が思い出したのは、主人公・春田と幼馴染・ちずの第1話における会話です。

お母さんがだらしない息子に呆れて出て行ったしまったため、主人公の春田は、幼馴染の荒井兄妹が経営する居酒屋に食事を摂りに行きます(春田は家事が何もできない。33歳にもなって情けない)。

ここで春田の幼馴染、荒井ちず(27)が初登場。内田理央さん演じるちずは、美人できっぱりとした性格の、気持ちのいい女性。女性から見ても憧れてしまうような素敵な方です。

ちずが転職活動中であることがここで明かされます。

ちずは、「飲み会の席で、触ってきたおっさん殴ったら、それが取引先の偉い人でさぁ」と会社を辞める羽目になってしまった事情を説明します。

「それでクビか」と尋ねる春田に、ちずは「あたしからやめてやったの。上司に謝ってこいって言われたんだんだけど、なんであたしが謝んなきゃいけないのって話じゃん」。

それに対して春田は、「こんな妹で鉄平兄も大変っすね」とちずの兄に話を振ります。それに対して兄の鉄平は、「本当だよ。誰でもいいから早く嫁にもらってくんねえかな」。

……え!?

どう見てもちずに非はなく、悪いのは取引先のセクハラおやじとちずの上司じゃないでしょうか。

けれど、春田も鉄平も、ちずに否定的な意見を述べます。その裏にある、「セクハラくらい社会人なら我慢しないと」もしくは「うまくかわせる女性の方が魅力的」という価値観が透けて見えます。

セクハラに対して正面からノーをつきつける気の強い女性はかわいくない、面倒くさいという気持ちが表れています。

「嫁にもらって……」というセリフもいかにも古い。

多分、このエピソードは、現代女性らしいちずの性格を表すのと同時に、春田がこの時点ではいかにも昭和的な、古い価値観に染まっている人間だということを強調するために作られたとは思うんですよ。

ロリで巨乳でかわいい女性が好き、男同士の恋愛なんて考えられない、という春田が、牧というゲイの男性に出会い、男性上司の黒澤部長から告白され、次々に既存の価値観を塗り替えられていく、そういう過程をより印象的に描くために、ことさらこのようなセリフを春田に言わせたんだとは思います。

でもそれなら、男性の牧に惹かれた後の、春田のちずに対しての見方の変化も描いて欲しかったし、鉄平兄が春田に同調する必要もなかったのではないでしょうか。

牧と付き合うようになった後の5話でも、なお春田は「ちずの作る卵焼きって半分くらい殻入ってるんだぜ」とちずをダメ女呼ばわりします。

あ!? 自分だって卵焼きなんて作れないだろ、ああん? 作れるものなら作ってみろ! 話はそれからだ! ……失礼。

 

『おっさんずラブ』の功績と、残る昭和的価値観

たまなぎは別に[『おっさんずラブ』をくさすつもりはないんですよ。当時は『おっさんずラブ』もめちゃくちゃはまったんです。

ドラマも繰り返し見ましたし、映画も3回見に行きました。公式本も買いましたしシナリオブックもコミカライズ版も買いました。

牧からあげ・牧カレーも定番メニューになりました(笑)。
今でもシーズン1は素晴らしいドラマだったと思ってます。

たまなぎが十数年ぶりに腐の道に戻ってきたのも、このドラマがきっかけでしたから(笑)。

何よりも、男性同士の恋愛を描いてあれだけヒットさせ、同性の恋愛をドラマで描くことをメジャー化させた、というのはものすごい功績だと思います。

ただ、やはり『おっさんずラブ』には、根底に昭和的な価値観が透けて見えるのです。

セクハラについての描き方もですし、春田に恋をする上司・黒澤武蔵の雰囲気にも、コミカルな中にもどことなく「気持ち悪さ」が漂っており、同性愛が色物として扱われていた時代の名残が見えるのです。

そしてこれはまた後日反響があれば書きますが、本来パートナーとして対等であるべき春田と牧の、関係の非対称性。

ドラマでは牧の好意をいいことに、家事全てを牧に丸投げしている春田。映画版ではそれが大きな喧嘩の原因にもなり、二人はまた別れてしまいます。

そして2024年の『リターンズ』の予告編を見たら……。え? あなたたち、まだ家事分担でもめてるの!? 

 

『チェリまほ』の社会派ドラマとしての成熟性

一方、『チェリまほ』は、セクハラの描き方一つにしても非常に細部に気を配っており、社会派ドラマとしても見ごたえのある作りになっています。

セクハラはだめ、という現代らしいメッセージもはっきり視聴者に伝わってきます。

黒沢優一と安達清が同期で上下関係がない、というところもポイントかもしれません。

まあ何が言いたいかというとそれだけ『チェリまほ』が素晴らしいドラマだということなんですが(笑)。

『おっさんずラブ』の春田と牧の関係、『チェリまほ』の安達と黒澤の関係を比較した記事もありますので、反響があればまた加筆して上げたいと思います。

 

おわりに

蛇足ですが、おっさんずラブの黒澤武蔵とチェリまほの黒沢優一、同じ「くろさわ」で乙女属性なんですよね。

全然似てないのにそこは同じで面白い。

それに、『おっさんずラブ』も2018年の初ドラマから5年たちました。チェリまほに代表される、優れたBLドラマも次々生まれ、同性愛に対する社会の認識も当時とはかなり変わったと思います。そういう中で、新しい時代のドラマとして、5年前から大きな飛躍を見せてくれるかもしれません。

1月はテレビのハードディスクをしっかり空けて待っておかなければなりませんね!

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

 

 

 

 

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