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珠下なぎの歴史メモ㉔『鬼滅の刃』の「鬼」についてその4 吸血鬼の弱点について

皆さん今日は、珠下なぎです。
今日も来てくださって、ありがとうございます!

 

本日からは、吸血鬼と鬼滅の刃の鬼、そして日本の鬼について、それらの特徴となる、弱点や倒し方について比較考察を進めていきたいと思います。

 

吸血鬼の弱点については首を落とす、ニンニク、杭、十字架、聖水、日光などが有名ですね。

ただし、キリスト教以前のスラブの伝承においては、首を落とすことやサンザシの杭で体を貫くことなどが吸血鬼の退治方法として有名だったようです。

杭についても、体を貫くことそのものよりも、サンザシという植物そのもののに魔を祓う力がある、ということの方が重要だったようです。

のちにキリスト教の影響で血を啜る吸血鬼=反キリストというイメージが定着するにつれ、聖水や十字架、日光などが苦手なものとして挙げられるようになります。

ニンニクについては、強い臭気が病気や魔を祓う、という考え方から、やがて吸血鬼よけのアイテムとして使われるようになりました。

ただし、日光については、日中は人の姿をして周りの人々を欺き、夜になると吸血鬼に変身して人を襲う、などといった伝承も見られることから、絶対に吸血鬼を退治することができる、といったものではないようです。

日光が吸血鬼を滅ぼす、というのが一般的になったのは、1922年の無声映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』以降の話です。

 

実は吸血鬼の弱点については、以上に述べたスラブの伝承、キリスト教以降の伝承などが混じり合い、さらに19世紀以降、吸血鬼がエンターテイメントの1ジャンルを形成するようになってから、それぞれの作者がさまざまな独創的な解釈や改変を施し、それぞれの世界観を構築していく中で生まれたものも多いのです。

ですから、ある作品の中で吸血鬼の絶対的な弱点とされていたものが、ある作品の中では弱点であっても絶対的なものではない、もしくは全く登場しない、いうことは頻繁に起きています。

ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の中のドラキュラ伯爵は、日中にも登場する描写があります。

また、小野不由美さんの『屍鬼』は日本を舞台とした吸血鬼ものとして有名ですが、日本が舞台のこともあり、十字架や聖水といったアイテムは全く登場しません。吸血鬼の弱点は、杭で体を貫くこと、日光、頭部の破壊とされています。

『鬼滅の刃』の鬼が首を落とされることが弱点であってもそれは絶対でなく、特に首領の鬼舞辻無惨については日光だけが絶対的な弱点である、というのも、こういった流れの中で生じたものだと思えば、特に不思議はないでしょう。

 

一方、日本の鬼についてはどうでしょう?

追儺を端として発した節分の時は、豆を撒いたり、柊や鰯の頭を戸に飾ったりします。

豆については平安時代に豆を使って鬼を追い払ったという伝承によるものとされています。

柊についてはもっと時代が新しく、室町時代くらいから始まったものと言われていますが、これはとがったもの一般に魔を祓う力があるという民間伝承から生まれたものとされています。

鰯の頭については諸説ありますが、鬼の研究で有名な沢史生氏は、鬼のルーツであるまつろわぬ民を魚編に弱いと書く鰯になぞらえ、その弱さを誇示すると同時に王権側の強さを強調するものであった、とされています。

また、昔話の『くわずにょうぼう』に登場する鬼婆は、菖蒲と蓬を弱点としましたが、これは全ての鬼に共通する弱点、というわけではなさそうですね。

 

弱点という視点から、西洋の吸血鬼と鬼滅の刃の鬼、日本の鬼について考察しました。

この視点から見ると、『鬼滅の刃』は西洋の吸血鬼ものの流れをくむものである、とう見方もできそうですね。

では、さまざまな優れた作品を産んだ、ホラーの一分野としての吸血鬼ものは、いかにして生まれたのか?

そして最初はどのように日本に入ってきたのか?

次回の記事でご紹介したいと思います。

 

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

 

 

 

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