『遠の朝廷にオニが舞う』 作品解説&エピソード

『遠の朝廷にオニが舞う』の世界㊳天邪鬼考その3~イメージの形成~(by 珠下なぎ)

皆さんこんにちは、珠下なぎです。

 

今日は前回の続き、天邪鬼についての連載は最後です。

時代が下ると、天邪鬼のイメージは、仏教に由来を持つ、四天王に踏みつけられている小鬼のイメージと混交します。

古事記に由来する、「天の意志=正当な意志を邪魔する」ことから、ひねくれもの、わざと人と違うことをする、といったイメージが作り上げられていったのもこの過程でしょう。

 

二つのルーツが混じる過程で、ひねくれものでいたずらずきの小鬼、というイメージが作り上げられていったようです。

 

天邪鬼には様々な民話が伝わっていますが、最も有名なのは、「瓜子姫と天邪鬼」でしょうか。全国的に色々なバージョンがありますが、おおまかな筋は次のとおりです。

おじいさんとおばあさんが川で瓜を拾うと、中から美しい女の子が生まれました。女の子は瓜子姫と名付けられて大切に育てられますが、一人で留守番をしている時に天邪鬼に騙され、天邪鬼は瓜子姫になりすまします。

※瓜子姫は殺されて皮を剥がれ、その皮を天邪鬼が被ったなどの凄惨な話は東日本に多く、一方西日本では強引に着物を交換されて木に縛り付けられるが最後には助けられるというハッピーエンドになるものが多いようです。

ところが、やがて天邪鬼の正体は露見して、天邪鬼は制裁を受けます。この時天邪鬼が受けた制裁に対しては、股裂きにされるなど、西日本のバージョンの方が残酷なものが多いようです。

 

また、人とわざと違うことをする、という性質の裏には、人の心を読むという能力が示唆されています。人が何を望んでいるか、どう行動するかを知り尽くしているからこそ、必ずそれと違う行動が取れるということです。

この性質は、山に住んで人の心を読むという「サトリ」という妖怪と共通するものがあります。

「サトリ」は山爺・山父など、山に住む妖怪と同一視されます。

日本人にとって山は一つの異界であり、山深くで里人と交わりを絶って暮らす人々は、鬼や妖怪とみなされました。

平安時代の鬼・酒呑童子も、大江山深くに城を築き、俗世と交わりを絶って独立した生活をしていたことが伝わっていますね。

 

天邪鬼についての連載はこれで終わりです。

 

ところで、天邪鬼考1で触れた、天邪鬼について調べるきっかけになったという俳優さんは、赤楚衛二さん。

今夏公開の『妖怪大戦争ガーディアンズ』で天邪鬼を演じられると聞き、天邪鬼について色々調べたところ、面白い事実が沢山出てきたので、ご紹介することとなりました。

予告編を観ると、赤楚衛二さんの面影が全くなくなっているようですが、どんな天邪鬼になるんでしょう?

現在の天邪鬼のイメージから、イケメン神様の天稚彦のイメージが全く感じられないのと同じですね(ちょっと違うか)。

最後までお読みくださって、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

© 2024 たまなぎブログ by LTA出版事業部