『ウラヤマ』 作品解説&エピソード

『ウラヤマ』裏話④歴史の闇とエンタメ小説

皆さん今日は、珠下なぎです。
今日も来てくださって、本当にありがとうございます!

新作『ウラヤマ』も発売から約1ヶ月を迎えました。
予想以上の反響を頂き、大変嬉しく、また驚いております。

管理人の月那さんも書かれていましたが、当初この作品を発表することには迷いも多くありました。

理由は主に二つです。

一つは、『遠の朝廷にオニが舞う』と異なり、有名な賞の最終候補になるなど、質を担保された作品ではないということ。

もう一つは、近代産業史の闇という、物議をかもしかねない社会的なテーマを、ホラーというジャンルで扱っていいのか、という自問でした。

最初の理由に関しては、管理人の月那さん始め、作品を読んでくれた方々が「これは面白い」「遠の朝廷〜よりも引き込まれた」など、非常に前向きな感想をくださったことでクリアできました。

ただ、二番目の理由については、かなり色々考えました。

ホラー小説というのはエンタメ性の強いジャンルであり、ホラー小説を読む人は「純粋に恐怖を楽しみたい」と思って手に取る人も多いと思います。

その時、怖がる対象が、弁解の余地のない絶対悪であったり、あるいは解明されていない不気味なものであった方が、純粋に恐怖を楽しめる、という面もあると思います。

さらに、あくまでエンタメ小説の一ジャンルである以上、近代史の中で社会的に弱い立場に置かれた人々の痛みを描いたり、社会的なテーマを扱ったりすることは、「問題を軽々しく考えている」「犠牲になった方達に失礼である」などの誹りを受ける可能性もあるかもしれない、とも思いました。

現在のところそのような声はなく、概ね好意的なご感想を頂いています。

特に、過去の悲劇については、「モデルとなった事件自体を知らなかったので知れてよかった」「これをきっかけに近代産業史の闇の部分を知った」「入口としては十分成功では」などありがたいご感想も頂きました。

また、純粋にホラーだけでなく、深く考えさせるテーマを持たせたことを積極的に評価するレビューも複数いただいています。

今後厳しいご意見も出ることはあるかもしれませんが、こうしたご感想を頂けたことで、やはり発表してよかったと、今では思っています。

二番目のエッセイで書いたように、この作品には私の若い時の実体験も反映されています。

作品を通して、今まであまり光を当てられることのなかった近代史の悲劇や、犠牲になった方たちの痛みにみなさんが心を寄せてくだされば、作者としてこれに勝る喜びはありません。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

 

 

 

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