皆さん今日は、珠下なぎです。
今日も来てくださって、ありがとうございます!
今日は、前回予告したとおり、『鬼滅の刃』の鬼にのみ見られるある弱点から、鬼殺隊と日本古来の鬼との関連についてお話ししたいと思います。
『鬼滅の刃』の鬼にのみ見られる特徴的な弱点……。それはある特定の植物を嫌う、ということです。
皆さんご存じでしょう。
藤ですね。
『鬼滅の刃』において、どうして鬼が藤を極端に嫌うのか?
平安時代には、鬼が豆によって追い払われたことから、藤がマメ科植物だからではないかとか、日光を好む植物である藤は、日光を弱点とする鬼とは対極にあるからだとか、あるいは王権と強く結びついた藤原氏を連想させるからだとか、ネット上では色々物議を醸してきたようですが、私はこう考えています。
鬼が藤を嫌うのは、藤が日本古来の鬼にとって大切なものであり、武器として使われた史実があるから。
ここまで来て、ピンと来たかもおられるかもしれません。
かつてこのブログで、諏訪神社の不思議な神様たちを紹介した時、諏訪大社の縁起の中にあった、次のようなエピソードを紹介したことを覚えておられるでしょうか?
「出雲国に降りてきた健御雷神(タケミカヅチノカミ)と戦って敗れた建御名方神(タケミナカタノカミ)は、諏訪に逃れ、この地から出ないことを条件に命を助けられた。建御名方神は地元の神、モレヤ神と戦って勝ち、モレヤ神を従えた。この時に建御名方神は藤の枝を、モレヤ神は鉄の輪を使って戦った」
この「藤の枝」、こそ、鬼=産鉄民族の象徴なのです。
『古代の鉄と神々』の著者である真弓常忠氏は、この時建御名方神が使った「藤の枝」は、中国山地で盛んだったたたら製鉄において、「鉄穴流し」の際に、砂鉄を掬い取ったザルの材料だった、と指摘されています。
一方、モレヤ神たちがいた諏訪の地では、昔ながらの褐色鉱を使った、原始的な製鉄が行われていました。
これは、古い産鉄民族と、新しい産鉄民族の戦いといえます。
産鉄民族という意味ではどちらも「鬼」ですが、ここでは、「藤が産鉄民=鬼の武器として登場する」ところに注目しましょう。
さらに、建御名方神は、モレヤ神から見ると侵略者ですが、大和王権の祖となった天津神の一族からすれば敗者であり、まつろわぬ民の子孫でもあります。
ここにも鬼としての性格があります。
『鬼滅の刃』の鬼は藤を嫌う=鬼殺隊は藤を鬼に対する武器として使っている。
日本古来の鬼にとって藤は象徴的なアイテムであり、しかも藤を武器として使ったエピソードがある。
ここからも、『鬼滅の刃』については鬼よりも鬼殺隊の方が、日本古来の鬼に近い存在であるといえるのではないでしょうか?
こう考えると、『鬼滅の刃』は西洋の吸血鬼から日本古来の鬼たちが日本を守るために奮闘する物語……と解釈するのはさすがにこじつけが過ぎるでしょうが、そういった見方もできなくはない、というお話でした!
諏訪神社の建御名方神とモレヤ神の戦いや、諏訪地方の古い製鉄については大変面白く、また私の著書『遠の朝廷にオニが舞う』の世界観にも多大な影響を与えていますので、興味を持ってくださった方は、ぜひ過去記事もご覧くださいね↓
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最後まで読んで下さって、ありがとうございました!