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珠下なぎの歴史メモ㉓『鬼滅の刃』の「鬼」についてその3 吸血鬼と血

皆さんこんにちは、珠下なぎです。

今日も来てくださってありがとうございます!

 

本日は前回予告したとおり、吸血鬼と血の切っても切れない関係についてお話ししたいと思います。

さて、吸血鬼は生きている死体であり、人間の血を吸って栄養にし、そして吸血鬼に血を吸われたものは吸血鬼になります。

あまり有名ではありませんが、スラブの伝承では、吸血鬼に血を吸われても、吸血鬼の血を飲めば死後吸血鬼になることを防ぐことができる、というお話もあります。

このように、吸血鬼と血は密接に結びついているのですが、これはのちにキリスト教的な信仰とも結びつき、反キリスト的なものとしての吸血鬼の位置づけを確実なものにしました。

旧約聖書「申命記」には、「血は命であるから食べてはならない」という記述があります。

今でもキリスト教の宗派の一部によっては、この記述を根拠に輸血を拒むものもあります。

このように、キリスト教においては血は命の根源であり、それを飲む吸血鬼は、反キリスト的なもの=悪魔である、というイメージが確立します。

 

ギリシアには、ヴリコラカスという、狼に似た吸血鬼の存在が知られていましたが、これが1世紀ごろに人々を恐怖に陥れた時、キリスト教会は、ヴリコラカスは「生前に罪深い行いをしたもの、教会から破門されたもの、洗礼を受ける前に死んだ赤ん坊」などと定義しました。

これも、吸血鬼=反キリスト教的なもの、とういイメージに沿ったものであり、また教会の指図に従わない民衆への威嚇でもありました。

時代が下って中世になると、騎士の間で敵の血を飲み自分の力をパワーアップさせる、ということが行われるようになります。

このように吸血鬼を産んだヨーロッパにおいては、血は生命の根源であり、それを啜る吸血鬼は反キリスト的なものである、という認識が確固たるものになっていきます。

 

『鬼滅の刃』の鬼はどうでしょう?

『鬼滅の刃』において鬼たちは、最初の鬼である鬼舞辻無惨の血を分けてもらうことにより、鬼としての力を得ます。また、鬼に襲われて死んだ禰豆子は、鬼として甦ります。

吸血鬼に吸血されたものは死後吸血鬼になる、というのと似ていますね。

また、鬼たちは「血鬼術」という技を使います。

『鬼滅の刃』の鬼たちの世界でも、血は力を媒介するものとして、大変重要なものとされているのです。

 

その一方で、日本の鬼はどうでしょう?

大江山の酒呑童子は、人の血を飲んだと言われていますが、ことさらに人の血でパワーを得たわけでもありません。

同時に人の肉も食らったと言われているので、鬼に食われた人が鬼として甦る、ということもありませんでした。

つまり人の血を啜る、というのは日本の鬼においては、単なる「人喰い」以上の意味は持たなかったわけです。

こういった視点から見ると、『鬼滅の刃』の鬼は、日本の鬼よりも吸血鬼に似た特徴を備えていることがわかりますね。

 

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

 

 

 

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