皆さんこんにちは、珠下なぎです。
前回に引き続き、天邪鬼のルーツについてお話しします。
今回は天邪鬼の二つ目のルーツ、古事記について。
古事記で天邪鬼のルーツとなった神様は二人、「天稚彦(あめのわかひこ)」という男神と、「天探女(あめのさぐめ)」という女神です。
二人の神様ですが、天邪鬼のもとになったという言われるエピソードは一つです。
天稚彦は、芦原中国を平定するために天照大神から使わされます。この芦原中国というのは大国主命が治める国、現在の出雲地方です。
天稚彦は、美男の神様としても有名です。
ところが天稚彦は大国主命の娘と恋に落ち、彼女を妻として8年間も高天原に戻って来ません。
怪しんだ高天原の神々は、雉名鳴女を使者として遣わしますが、これを怪しんだ天探女が天稚彦をそそのかし、雉名鳴女を射殺させます。
天稚彦が放った矢はそのまま高天原の神々の元に届き、高天原の神々は「天稚彦に反逆の心があればこの矢が彼を射よ」と念じて矢を投げ返したところ、その矢は天稚彦に当たり、その命を奪ってしまいます。
このエピソードから、神々への反逆行為をそそのかした天探女を、「天の意志を邪魔する」という意味の「天邪鬼」としたという説が生まれました。
また、「天稚彦」は、「天若日子」とも表記されます。「天若」はそのまま「あまのじゃく」と読めることから、天稚彦自身を「天邪鬼」としたという説もあるのです。
やがて天稚彦の死をきっかけに、高天原は本格的に芦原中国の平定に乗り出し、やがて「大国主の国譲り」をもって、芦原中国は高天原の支配下に入ります。
これが、産鉄王国としても栄えていた出雲を、大和朝廷が完全に支配下におさめたことを示しているのは言うまでもないでしょう。
高天原にルーツを持ちながら、まつろわぬ民の娘と恋に落ちて彼女らに味方し、命を落とした若く美しい男性神。
これだけでも十分ドラマチックで様々な文学作品にも取り上げられる天稚彦ですが、時の権力に反逆して滅ぼされた人間たちの代表でもあったわけです。
そういった意味でも天邪鬼のもう一つのルーツも、とても「鬼らしい」ものであるといえますね。
いつか天稚彦を主人公にしたファンタジー小説も書いてみたくなりました。いくらでも想像の翼が広がりそうな神様ですね。
天邪鬼の二つのルーツについて解説してきましたが、次回はこの天邪鬼のイメージが時代が下ってどのように確立していったか、をお話ししたいと思います。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました。