はじめに
皆さん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。
今日も来て下さって、ありがとうございます!
赤楚衛二さん主演の映画『366日』、4週目でついに首位だそうですね!
口コミでどんどん評判が広がっているようです。
『366日』4週目で初首位!『忍たま乱太郎』もランクアップ【映画週末興行成績】
今回はネタバレだらけの感想を書きます。
ネタバレが嫌な方は、下のネタバレなし感想をどうぞお読み下さい!
つっこみどころ満載のストーリー
正直に言いまして、脚本そのものはわりと気になるところが多かったのは事実です。
設定的な部分では、たとえば、就職活動に難航する美海が、「今は氷河期で大変なんだよ。湊の時とは違うんだよ」というシーン。
たまなぎは、氷河期世代真っただ中ですから知っていますが、就職氷河期って、1993年後頃から2005年くらい。どっちかというと、湊くんの方が氷河期に近く、美海ちゃんの時(2009年)には景気はだいぶ回復してたはず。
それから、主人公の湊くんが急性骨髄性白血病になり、美海に真実を告げられず、彼女の元を去ってしまうシーン。
緊急入院が必要になるほどの急性骨髄性白血病が無症状で、健診で見つかるというのはちょっと考えにくい。しかもその間に荷物をまとめて、同棲していた家を引き払ったりしていますよね? 家探しも必要だったはず。かなりのエネルギーが必要な作業ですが、それをこの病状でやってのけるというのはちょっと不自然に感じてしまいました。
さらに、美海ちゃんが妊娠に気づくシーン。
つわりが始まってから妊娠に気づくって、昭和のドラマですか?
それよりも、お互いをあれだけ大切にしているように見えたのに、湊くん、避妊していなかったんですか。
もちろん、避妊は100%ではないのは分かっていますが、美海ちゃんが妊娠検査薬を常備していたということは、していなかったのか。純愛という設定に?マークをつけたくなるようなシーンでした。
細かい所でいえば、高校を卒業して上京する二人が、バスが来ているのになかなか離れがたく、湊くんがバスに何度も乗ろうとしてはやめて、5分くらいバスを待たせてしまっているシーンとか。運転手さん、切れますよ。
娘の陽葵ちゃんが、東京の湊くんを訪ねたシーンでも、簡単にオフィスのあるフロアにたどりつけたのも???という感じでした。セキュリティ、どうなってるんでしょうか。今時、社員証を見せないとオフィスビルの中って入れないのでは?
と、途中であれこれ突っ込みを入れたくなるストーリーでしたが、それでもやはり人の心を打つものが大いにあったと思います。大ヒットするのも分かる。
次の項でそれを述べたいと思います。
登場人物の弱さが愛おしい
この映画に出てくる登場人物たちは、皆、若くて未熟で、色々間違えます。それでも、皆、好きな人をとても大切に思っていて、相手の幸せを一番に、純粋に考えています。
その姿勢が共感と感動を呼び、ストーリーが進むにつれ、登場人物たちがますますいとおしくなる、『366日』そんな映画でした。
まず、主人公の湊くん。
成績優秀で夢に向かって頑張っていましたが、早くに父親を事故で亡くし、高校生の時に母親も亡くしてしまいます。
何もかもどうでもよくなっていたところを、高校の後輩の美海ちゃんと知り合います。音楽を通じて心を触れ合わせるうちに、もう一度自分の夢をかなえたくなり、東京の大学を受験します。
湊くんを追いかけて同じ大学に入学した美海ちゃんとも順調に交際を続け、卒業して希望どおりの音楽関係の会社に就職しますが、ある一通の通知書が運命を変えてしまいます。
それは、健康診断の「要精査」の結果。精密検査の結果、急性骨髄性白血病と診断されます。
美海ちゃんに言うべきか迷った末、湊くんは真実を隠したまま、別れる道を選びます。
「美海を巻き込むのが怖かった」と後に独白する湊くん。
急性骨髄性白血病は死ぬこともある病気。身近な人を病気で失う辛さを知っている港くんだからこそ、大切な人にそんな思いはさせたくない、と思ったのでしょう。
本当のことを知らせないまま、「もう好きじゃなくなった」と嘘をついて去る。
この行動は、すべての人を納得させるものではないと思うし、美海ちゃんの立場からすれば、本当のことを教えてほしかったと思うでしょう。けれど、それが湊くんが美海ちゃんの幸せを考えて、精一杯できることだったのだと考えると、湊がいとおしくなります。
一方、ヒロインの美海ちゃんは、とてもけなげで努力家。
湊くんと同じ大学に行きたくて猛勉強して上京し、以前からの夢だった通訳の仕事を目指します。しかし、就職活動がうまくいかない中、港くんの仕事も激務で、少しずつすれ違いが生まれていきます。
そんな中で突然「もう好きじゃなくなった」と出て行かれた美海ちゃん。彼女はきっと、以前からのすれ違いが原因だったと思い、傷ついたことでしょう。
失意の中、発覚した妊娠。それでも生むことも将来の夢もあきらめず、卒業後に沖縄に帰って子どもを産み、仕事もあきらめないことを決意するのです。
学生なのに妊娠して戻ってきた美海ちゃんに、両親は激怒。
「相手は誰だ!」と詰め寄る両親に、いきなり、「すみません、俺です!」と名乗りを上げたのが、美海ちゃんの幼馴染の琉晴くん。
琉晴くんはずっと美海ちゃんのことが好きで、支えたいと思っていたのです。
最初は「誰とも結婚するつもりはない」と拒否した美海ちゃんですが、一緒に暮らし、娘が生まれ、生活を共にするうちに徐々に心情が変化し、二人は結婚することになります。
そして結婚式の前日。最後の思いを美海ちゃんはMDに吹き込み、湊くんの実家のポストに入れます。その日は治療を終えた湊くんが、沖縄に戻ってきた日でした。湊くんと鉢合わせたのち、実家を訪ねた琉晴くんは、湊くんに宛てた美海ちゃんのMDに気づいて、それをこっそりポケットに入れてしまい……
美海ちゃんの思いは湊くんに届かないまま、翌日美海ちゃんと琉晴くんは結婚式を挙げます。思い直して引き返したものの、幸せそうな二人の姿に、湊くんは声をかけることが出来ず、美海ちゃんが幸せになることを祈ってその場を去ります。
ここで流れる「366日」。湊くんの切なさが、歌詞と共に胸に染み入り、思わず涙がこぼれました。
それからさらに12年後。不治の病に侵された美海ちゃん。琉晴くんは、あの日隠したMDを、娘の陽葵ちゃんに託し、東京の湊くんに届けさせるのですが……。
家族って……?
たまなぎはいい年こいているからか(最初の項からお察し下さい)、どうしても恋愛そのものよりも、「家族」という枠で物語をとらえてしまいます。
琉晴くんは、湊くんの子を妊娠した美海ちゃんと結婚し、血はつながらないけれど「家族」になります。
けれど、琉晴くんの中には、どこか「(娘と血のつながらない)自分は本当の家族じゃない」という思いがあったのではないかと思います。
陽葵ちゃんが生まれた後も、二人の間に子どもは生まれなかったようですが、それはひょっとしたら琉晴くんの選択だったのかもしれません。血のつながる子どもが生まれてしまったら、陽葵ちゃんと同じように接することができなくなると思ったのかもしれないし、ひょっとしたら「美海ちゃんの弱みに付け込んで無理やり家族になった」という引け目があったのかもしれない。
死を間近にした美海ちゃんに、「最後は、湊先輩と三人で、本当の家族で……」と声を詰まらせるシーンは切なかった。
美海ちゃんは、「最後にそばにいてほしいのは琉晴だよ」と言います。それは当然の心情だと思います。
初恋の人であり、陽葵ちゃんの父親であっても、別れたままになった湊くんよりも、一緒に子どもを育て、十年以上の生活を共にした琉晴くんが、美海ちゃんにとっては本当の家族だったのでしょう。
しかし、その一方で、最期の時が近いと思われる、一人ベッドに横たわる美海ちゃんの耳に差し込まれたのは、陽葵ちゃんが湊くんから託されたMDにつながったイヤホン。
「湊先輩が作った曲を聞かせて下さい」という、高校時代の美海ちゃんとの約束に応えて湊くんが作った曲は、美海ちゃんに渡されることがないままに、二人は破局を迎えてしまいました。
果たされなかった湊くんのとの約束の曲を一人聴きながら、美海ちゃんは最後の時を待ちます。
彼女にとって一番大切だったのは、十数年を共に過ごした家族なのか、それとも初恋の人であり、娘の父親である湊くんだったのか。
娘を授かったことで、美海ちゃんは初恋を単なる「思い出」で終わらせることができなかった。それは彼女にとって幸せだったのか、そうでなかったのか。
美海ちゃんをおなかの子どもごと受け入れ、家族になった琉晴くんの度量は並々ならぬものだと思いますし、この琉晴くんも非常に魅力的な青年に描かれます。
琉晴くんと美海ちゃんが陽葵ちゃんと一緒に築いた家族。
それは最初から歪みを抱えながらも、皆が互いを思い、懸命に築こうとした幸せの形だったのではないでしょうか。
「君のお父さんは君を育ててくれた人だ」と陽葵ちゃんに告げ、最期の時の近い美海ちゃんに、会わない選択をした湊くん。
湊くんもまた、美海ちゃんの家族は自分ではないと思い、最期は美海ちゃんの家族=琉晴くんと陽葵ちゃんと三人で過ごしてほしい、そこに自分はいるべきでないと思ったのでしょう。
さいごに
気になるところは多々ありましたが、単に「切ない」「純愛」というだけでなく、色々なことを感じさせる映画でした。
登場人物たちが相手を想い、ひたむきに相手の幸せを願い、懸命に生きる姿には、様々な理屈を超えて登場人物たちが愛おしくなる。
映画『366日』、未見の方はぜひご鑑賞ください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!