オリジナル小説 『大江山恋絵巻』 物語 作品解説&エピソード

たまなぎの新刊『大江山恋絵巻~人の巻~』と酒呑童子伝説

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

ブログでは、お久しぶりです(笑)。

前回、前々回では7月(多分)発売のたまなぎの新作『大江山恋絵巻~人の巻~』のご紹介をさせて頂きました。

 

前回、前々回の記事はこちら↓

今回はこれについてたまなぎから補足です。

 

酒呑童子伝説と『大江山恋絵巻~人の巻~』

LTA出版事業部の月那さんがご紹介して下さったとおり、今回の作品のテーマは、「酒呑童子」です。

たまなぎブログを読んで下さっている多くの方はご存じかもしれませんが、たまなぎは鬼が好きです。

鬼はまつろわぬもの、敗れ去ったもの、歴史の中から消されたものたちの代名詞。そこには表の歴史に現れぬ深い闇がある。鬼の歴史を知ることは、表の歴史をより深く知ることにもなると思うからです。

 

中でも酒呑童子は、日本の鬼の代表格。伝説や伝承も豊富で、大変魅力的な鬼さんです。

今回の『大江山恋絵巻~人の巻~』は、かなりたまなぎ風に好き勝手に伝承をねじまげています。

テーマも独自のものを盛り込んでいて、もともとの話とは似ても似つかぬものになっていますが、まず、もともとの伝説を知りたい、という方もいらっしゃると思い、今回の記事を書くことにしました。

ただ、伝承を全くご存じない方にとっては、『大江山恋絵巻~人の巻~』のうっすらネタバレを含みますので、ネタバレなしで作品を読みたい方は、先の閲覧をお控え下さい。

 

酒呑童子伝説の分類

酒呑童子伝説は、大きく分けて三つに分かれます。

最も古いのが、南北朝後期から室町時代に成立したとされる『大江山絵詞』。

その次に、鎌倉時代から江戸時代にかけて広く流通した、『音御伽草子』の『酒吞童子』の段。

その他、新潟県や滋賀県、京都府、奈良県などに独自の伝承が残っています。

 

酒吞童子伝説のあらすじ

『大江山絵詞』版

最古の『大江山絵詞』版では、あらすじは次のとおりです。

一条天皇の時代、京の若者や姫君が次々と神隠しに遭った。安倍晴明に占わせたところ、大江山に住む鬼(酒呑童子)の仕業とわかった。そこで帝は長徳元年(995年)に源頼光と藤原保昌らを征伐に向わせた(あるいは正歴元年(990年)に源頼光に勅宣を出した。頼光らは山伏を装い鬼の居城を訪ね、一夜の宿をとらせてほしいと頼む。酒呑童子らは京の都から源頼光らが自分を成敗しにくるとの情報を得ていたので警戒し様々な詰問をする。なんとか疑いを晴らし酒を酌み交わして話を聞いたところ、大の酒好きなために家来から「酒呑童子」と呼ばれていることや、平野山(比良山)に住んでいたが伝教大師(最澄)が延暦寺を建てて以来、そこには居られなくなり、嘉祥2年(849年)から大江山に住みついたことなど身の上話を語った。頼光らは鬼に八幡大菩薩から与えられた「神変奇特酒」(神便鬼毒酒)という毒酒を振る舞い、笈に背負っていた武具で身を固め酒呑童子の寝所を襲い、身体を押さえつけて首をはねた。生首はなお頼光の兜を噛みつきにかかったが、仲間の兜も重ねかぶって難を逃れた。一行は、首級を持ち帰り京に凱旋。首級は帝らが検分したのちに宇治の平等院の宝蔵に納められた。(酒呑童子 - Wikipediaより)

 

御伽草子版

大筋では『大江山絵詞』と似ていますが、細部では異なります。

まず、物語は池田中納言の姫がさらわれたところから始まります。池田中納言は大変なお金持ちで、美しい一人娘を溺愛していました。この姫がある日突然行方知れずとなり、大金を積んで陰陽師の村岡のまさとき(もしくは安倍晴明)に占わせたところ、大江山の酒呑童子の仕業と分かり、帝に申し上げます。帝は源頼光らに鬼退治を命じ……あとは大筋で変わりません。

ただ、源頼光らは酒呑童子の居城に着いた際、血を絞られた姫の衣を洗っている洗濯女に会い、その女性から内情を聞き出すのですが、この洗濯女は『大江山絵詞』では老婆、『御伽草子』では、17、8歳の美しい女性で、花園中納言の姫君となっています。

さらに、頼光らに騙され、毒酒を飲まされて動きを封じられた酒呑童子は、「鬼神に横道なきものを!(鬼は卑怯な手は使わない)」と激しくののしったとされています。

 

各地方の伝説

新潟県、滋賀県、奈良県には、それぞれ酒呑童子が大江山に居を定めるまでの伝説や、少年時代の伝説が残っています。

中でも、越後の伝説では、「絶世の美少年であったため数多くの女性から恋文をもらっていたが、それらを一顧だにしなかったため、女性たちの恨みで鬼になった」なんていう、魅力的な伝説も残っています。

絶世の美少年・酒呑童子さま……。

このあたりから何となく、たまなぎの酒呑童子さまのイメージが固まりました。

前回の記事でもご紹介したように、『大江山恋絵巻~人の巻~』に出て来る酒呑童子さまも、イケメンに描いています。

また、酒呑童子の配下である茨木童子も、大変な美少年であったという伝説が残っています。

茨木童子についてはまた別にご紹介したいと思います。

 

さいごに

酒呑童子伝説、いかがでしたでしょうか?

『大江山恋絵巻~人の巻~』はかなり鬼サイドに立ったお話となっています。

ただいま編集作業は最終段階となっています。

どうぞお楽しみいただけますように!

 

 

 

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