はじめに
皆さん今日は、珠下なぎです。
今日も来て下さって、ありがとうございます!
Amazonで発売中の、『神眠る地をオニはゆく』、読んで下さった方々、ありがとうございます!
前回から少しずつ、作品の裏話をご紹介しています。
今回は作品の舞台の一つでもあり、古代史上も重要な史跡である、「高宮祭場」についてご紹介したいと思います。
1.宗像大社の原型・高宮祭場
まずは高宮祭場の写真をご覧下さい。
社殿も何もなく、森の中に開けた場所があるだけです。
実は、現在のような社殿が作られ、神社が今に近い形になったのは、7世紀ごろから。
それ以前は、巨木や巨石を神の依り代=神が降りる場所に見立て、祭祀を行うことが一般的でした。
これを「神籬(ひもろぎ)」と言います。
宗像大社の一部であり、海の正倉院とも言われている沖ノ島でも、最も古い時代は巨石の上で祭祀を行ったことが分かっています。
高宮祭場は、宗像大社の辺津宮(本土にある宗像大社)の奥の山の中腹にあり、下高宮祭祀遺跡と言われる遺跡の一部です。この遺跡からは、沖ノ島と共通する遺物が多く出土しており、社殿が出来る以前、このあたりが祭祀の中心だったことがうかがえます。
最近は「パワースポット」として人気を集めているそうです。私はあまりパワースポットという言葉は好きではないのですが、この場所には非常に清浄で濃い、独特の「気」があります。
2.今の高宮祭場=古代祭祀そのままの跡ではない
ただ、注意しておかなければならないのは、現在の高宮祭場は、昭和30年に整えられたもので、古代祭祀の遺構そのものではない、ということです。
しかし、遺跡の中でも巨樹のある場所が選ばれていますし、写真の中に見える石の段々は、「磐境(いわさか)」という、古代に神を迎える場所を囲んだ石を模して造られています。
古代祭祀の雰囲気を非常によく再現していると思いますし、古代の祭場もかなりこれに近いものだったのではと思われます。
物語の中で、初めてこの場所を訪れた瑠璃子姫は、こんな感想を持ちます。
それは、この場所を支配する、清浄(しょうじょう)で濃(こ)い、一粒(つぶ)一粒が光っているようにさえ見える、不思議な空気のためだった。
高く高く、人の手などがはるかに届かぬ場所まで枝を伸(の)ばした木々。時折風が吹(ふ)くたびに、先ほど聞いた海鳴りのような葉ずれの音が頭上から降り注ぎ、地面に落とした木々の影(かげ)が躍(おど)るようにゆれる。そのたびに、木々の合間をぬって届く日輪(にちりん)の光が、地面に描(えが)いた模様も形を変える。木々のすがすがしい香りと、暖かな土のにおいが一体となり、全身を包みこむような優しさに満ちているのに、穢(けが)れを寄せつけないとばかりにぴんと張りつめた空気。
自分などが足をふみ入れてはいけないような……それでいてどこか懐かしい。
(珠下なぎ『神眠る地をオニはゆく【上】』より)
瑠璃子はこの場所に、幽世(かくりよ)と同じ空気を感じ取ったのでした。
そしてこの後、瑠璃子の身に降りかかった大きな出来事とは……?
ちなみに上巻の表紙の背景は、この高宮祭場を元に描かれています。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!