皆さん今日は、珠下なぎです。
今日も来て下さって、ありがとうございます!
さてさて注目のNHK夜ドラ「作りたい女と食べたい女」ついに今週最終回を迎えました!
というわけで早速感想。
ドラマのネタバレに加え、原作のネタバレ(3巻まで)も含みます。
これからどちらかを鑑賞予定の方は、ご覧になってからもう一度見に来てくださいね。
1.7~10話概要
6話で「食べたい」「作りたい」にこめられた、それぞれの切実な思いを語り、絆を深めた野本さんと春日さん。
クリスマスを一緒に過ごす約束をします。
浮かれた野本さんは、シュトーレン風パウンドケーキを持って春日さんの自宅を突撃。
ご存じの方も多いと思いますが、シュトーレンはたっぷりのドライフルーツとナッツを使った、ドイツの焼き菓子。クリスマス前に用意して、薄くスライスして毎日少しずつ頂きます。熟成されるに従って味が変化していくのも楽しめます。(私も現在頂き物のシュトーレンを毎日頂いています。本格的なシュトーレンを頂くのは初めてで、贈って下さった方に毎日感謝しています。)
そこで、「今日は一切れにしておきましょう」とシュトーレンをしまいこむ野本さんに、「一切れしか食べられないんですか?」と子犬のようなお目目で訴える春日さん(笑)。
この時の野本さんの表情、ナイスでした。
「こんなに春日さんが訴えてるのよ!もう一切れくらいいいじゃない!」という本能と、「ダメダメ、シュトーレンは毎日一切れずつなんだから!」という理性が、野本さんの中で戦っているのが目に見えます。まるでチェリまほ原作の黒沢さんみたいに。
そして勝ったのは本能。もう一切れだけ切ってもらったシュトーレンを、春日さんは宝物のように大切に、少しずつ食べるのです。
ところがはしゃぎすぎたのか、野本さんはクリスマス前に熱を出してしまいダウン。
そんな野本さんに、春日さんは「クリスマスはとりやめましょう」と野本さんの体を優先し、買い物をしたりきつねうどんを作ったりとかいがいしく看病します。
野本さんが回復すると、快気祝いに牛の塊肉を持参。
二人でローストビーフを作り、年末も一緒に過ごす約束をします。
このローストビーフがまたおいしそう。ローストビーフなんて、一人暮らしじゃなかなか作らないですものね。
そして年末には、二人で年越し。寝過ごしてしまい、海で初日の出を拝む計画はおじゃんになってしまいますが、二人で高台の公園に走ります。
途中で音を上げそうになる春日さんの手を、野本さんは優しく取って春日さんを引っ張り上げます。二人で新しい年の日の出を見、野本さんは自分の中の春日さんへの気持ちを確認、そこで物語は終わっています。
2.自分を発見する野本さん
7~10話では、春日さんへの気持ちを自覚し始めた野本さんが、「自分の気持ちはなんだろう?」と模索するさまが描かれます。
今まで恋愛をしたことがなく、世間一般が押し付けてくる「彼氏がいて当たり前」「料理上手はいいお母さんになれそう」「野本さんモテそう」などという言葉に息苦しさを感じていた野本さん。
クリスマス直前に見た悪夢の中で、過去に投げかけられた言葉の数々がよみがえります。
悪夢の中の、冷たい目をして背を向ける春日さん、あれ、「チェリまほTHEMOVIE」の真似じゃないですよね(笑)。よくある描き方だとは思うのですが、でも絶対NHKの中にチェリ家の人いますよね。
さてさてそうするうち、野本さんはネットを調べたり、同僚に話を聞いてもらったりして、少しずつ自分が春日さんに恋をしていることを自覚し始めます。
そして「これからも春日さんと一緒にいたい」「春日さんのことが好き」と思える自分を、受け入れるのです。
世間からのジェンダーバイアスに苦しんでいた野本さんは、「やっと自分が自分になれた」と思えたのではないでしょうか。
3.描かれなかった春日さんの気持ちと、その後
野本さんはラストシーンで、やっと自分を見つけ出し、自分らしく生きていけると晴れやかな表情をしていますが、春日さんの気持ちはまだ明らかにされていません。
これには私としてはかなり不満が残ります。
原作がまだ3巻までしか出ておらず、春日さんの気持ちが分からないままというならまだ分かります。
ところが原作では春日さんも野本さんへの気持ちをはっきり自覚しています。
さらに、保守的な家庭から逃げてきた春日さんは、「祖母の介護のために帰ってこい」と父親から高圧的な命令を受けます。
しかし春日さんは「あの家にいたら、自分は家の一部で、尊重もされないし傷つけられても謝ってももらえない。私は私でいられなくなる。だから一生あの家には帰らない」と父親に告げます。
コミックには収録されていませんが、ガンガンpixivでの連載分では、追ってこようとする父親から逃げるため、春日さんはマンションを出ることを決意。ショックを受ける野本さんに「一緒に住みましょう」と提案して、二人は気持ちを確かめ合うのです。
野本さんの気持ちを描くなら、春日さんの気持ちもきちんと描いてほしかったと思います。
春日さんの実家の介護エピソードも、「女性の生きづらさ」を描くこの作品には欠かせないエピソードだと思うので、ここは省略してほしくなかった。
他の「女性の生きづらさ」を描くエピソードも、ドラマ版ではかなりマイルドに変えられていましたし、二人を「はっきりとした恋愛関係」にもっていかなかったことといい、「ここでドラマが終わり」なら、せっかくドラマ化したのに、ちょっと腰が引けているのではないか。女性カップルの恋愛を描くのには、まだまだNHKはためらいがあるのではないかと思ってしまいます。
続編ありますよね? 続編ではちゃんと春日さんの気持ちも描いて、二人は両想いになるんですよね?(なかったら暴れます)
本当は春日さんの実家の介護エピソードなどについても、まだまだ書きたいことがたくさんあったのですが、ドラマで切られてしまったので今回はやめておきます。
料理はとてもおいしそうだったし、女優さんたちの演技も素晴らしく、女性同士の恋愛を描いた実験的なドラマだっただけに、中途半端な終わり方をしてしまったのはとても残念。
それでも見る価値は十分あるドラマだと思いますので、未視聴の方はぜひご覧ください!
最後まで読んで下さって、ありがとうございました!