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同性婚容認派と否定派の議論はなぜ嚙み合わないのか③

皆さん今日は、珠下なぎです。今日も来て下さって、ありがとうございます!

2022年6月の同性婚訴訟についての判決の考察から始まり、「同性婚」について考えるこのシリーズ、沢山のアクセスと反響を頂いております。本当にありがとうございます。

今回は、法的なことはちょっと抜きにして、同性婚についてどうしても認めたくない心理、応援したいと思ってしまう心理について解説したいと思います。

 

③同性婚を認めたい/認めたくない心理

日本人におけるLGBTQの割合は、調査によって違いますが、おおよそ1割弱と言われています。

つまり、大多数の人にとっては、同性婚が認められようが認められまいが、「暮らしに何の影響もない」ことのはずなのです。

2021年の6月の朝日新聞の世論調査でも、65%が「同性婚を認めるべき」と回答し、特に20~30代は80%以上が「認めるべき」と回答しています。

同性婚、法律で「認めるべき」65% 朝日新聞世論調査:朝日新聞デジタル (asahi.com)

けれど、先日の大阪地裁の判決については、ヤフーのコメント欄は「当然」というコメントが圧倒的に多く、Twitterでも差別的なツイートが溢れました

どうしてこのようなことが起こるのでしょう。

 

1.同性婚を認めたくない心理~差別をすることで安心する!

以下のリンクの記事は、「偏見や差別」がなぜ生まれるかについて、社会心理学の視点から考察した記事です。

この記事で、東洋大学社会学部の北村教授は、次のように述べています。

(以下引用)

「簡潔に言うと、『人には自分が有利になりたい、偉くなりたい』という心理があるからです。心理学用語では『自尊心』、今のはやり言葉だと『自己肯定感』とも言い換えられます。たとえば、自己肯定感が低い人が、違うタイプの人をけなして、自分のほうが上だと思うことで、相対的に自己肯定感を補うのが一般的なケースといえます」。

日本は諸外国と比べても、自分たちが社会の中で『普通』の存在だと考えることで安心感を得る人が多い傾向があります。障害者問題、性的マイノリティー問題、民族差別の問題においても、偏見や差別を持つ側がマジョリティーであることに安堵感を抱き、日々の生活を送っています」

(引用以上)

つまり、同性婚を認めると、「普通」でなかった人たちが「普通」になってしまう。

すると、「普通でない」人たちを見下すことで「自分は普通だ」と安心していた人たちの自己肯定感が損なわれる、ということなのです。

よく同性婚を認めたくない人たちは、「同性婚を認めると社会が崩壊する!」といいますね。

崩壊するのは社会ではありません。差別をしてきた人たちの自己肯定感なのです。

「偏見や差別」はなぜ生まれる、社会心理学の観点から読み解く | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

 

2.同性婚を認めたくない心理~他人に得をさせたくない!

次に、この記事を見てみましょう。これは1990年代、日米の経済学研究者によって行われた実験のデータ。これによると、日本人は他の人種(アメリカ、カナダ、中国など)と比べ、「自分が損をしてでも他人にダメージを与えたい」という行動を取ることが多いことが分かったそうです。

“日本人は特にいじわる”とデータが証明? 行動経済学が明かす「スパイト行動」 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん (wingarc.com)

さらにこちらの記事は、「自分が不利益を受けるわけではなくても、他人の利益を不快に感じる。そんな人たちが少なからずいる」という記事。

「他人の得が許せない」人々が増加中 心に潜む「苦しみ」を読み解く | from AERAdot. | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

同性婚を認めても、異性婚が禁止されるわけではありません。

それでも、「自分より下に見ていた同性愛者」が「利益を得る」ことに対して「納得できない」「許せない」という心理は、こういうところから生まれるのでしょう。

 

3.同性婚を認めたい心理~マイノリティが迫害されることへの懸念

当事者である同性愛者の方々が同性婚を認めたいのは当然として、異性愛者の中にも「同性婚は認められるべき」と主張する人たちも一定数います(私もその一人です)。

いわゆるBL(ボーイズラブ)ものを愛好する女性たちで、「推しカプ(注;応援するカップル)が幸せになれる社会であってほしい!」という心理ももちろんあるでしょう。

私も『チェリまほTHEMOVIE』の黒沢さんと安達くんの結婚式を見て、「こういうのが普通になったらいいな」と思いましたから。

けれどそれだけではないと思います。

さきほど引用した記事に、そのヒントがあります。

前述の北村教授は、「偏見や差別を持つ側がマジョリティーであることに安堵感を抱いて生活している」としつつ、次のように述べています。

(以下引用)

「とはいえ、それでは少数派が常に負け続けることになり、人権的な価値が侵害され、不公正な社会になります。そのような社会にしないためにも、マイノリティーへの配慮が必須なのです

(引用以上)

マイノリティーへの人権侵害を黙認していると、どうなるでしょうか。

いつか自分が迫害される側になるかもしれません。

 

そもそも、全ての属性において多数派である人間などそうはいないでしょう。

(今の日本ですべての意味で多数派であろうとすれば……「日本国籍を持っていて、異性愛者で、大卒以上で、ある程度以上の年齢なら結婚していて、子どももいて、正社員で働いていて、選挙では必ず与党に投票していて……」全部なんて無理ですよね。私も全部は無理です。)

下のリンクは私が1年前に書いた記事。

ここではドイツのルター派牧師であり反ナチ運動組織告白教会の指導者マルティン・ニーメラーの言葉に由来する詩『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』を紹介し、マイノリティへの人権侵害を黙認すべきでない理由について書いています。

次作予告の予告&チェリまほとニーメラーの詩 | 物語る心療内科医・珠下なぎのブログ (ameblo.jp)

 

4.「同性婚を認めても社会は崩壊していない!」ニュージーランド元議員のスピーチ

ニュージーランドでは2013年に、同性婚を認める法案が議会で採択されました。

この時にされたスピーチが、昨年大きく注目を集めました。

通称「ビッグ・ゲイ・レインボー・スピーチ」と呼ばれたそのスピーチは、ニュージーランドで同性婚を認める法案が採択された際に、賛成票を投じたモーリス・ウィリアムソン元議員がしたものです。

ちなみに元議員が属していたのは、保守派とされるニュージーランド国民党です。

元議員は、2021年に日本の政治家に向け、「同性婚を認めて8年、社会は崩壊していない」と訴えました。

「同性婚を認めた世界のどの国を見ても、あなたたちが懸念するようなことは起きていない。日本だけが例外になるほど、日本は特別なのか。あなたたちは何を恐れているのか」

このスピーチは日本語字幕付きで今でもYouTubeで見ることができます。興味のある方は是非ご覧下さい!

「同性婚を認めて8年、社会は崩壊していません」ニュージーランド元議員が日本の政治家に問いかけること (buzzfeed.com)

 

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

 

 

 

 

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