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たまなぎブログ by LTA出版事業部

『「ベルサイユのばら」の真実』感想

はじめに

みなさん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

ずいぶん間が空いてしまってすみません。

新刊の準備、仕事、その他諸々多忙のため、ブログさぼりがちでしたが、これが届いたので感想を書かざるを得なくなりました!

↓『「ベルサイユのばら」の真実』

 

概要

たまなぎは実はこれ、2003年に発行され、今は絶版となっていて、中古ではものすごい値段になっている『「ベルサイユのばら」 その謎と真実』の新装版かと思って買いました。

『「ベルサイユのばら」その謎と真実』には、色々本編に書かれていない裏設定が暴露されているらしいと聞きまして。特に気になったのは、アンドレの過去。いや、7月12日夜のシーンで、アンドレ初めてじゃないなとは思ってましたけど、パレロワイヤルで18歳の時に……とかいう情報、自分の目で確かめたかったんですよ。

 

結論。

これはタイトルこそ似通っているものの『「ベルサイユのばら」その謎と真実』とは別物でした。

お間違いのないように。

 

2022年『芸術新潮』9月号に掲載された特集『「ベルサイユのばら」の真実』を増補・再編集したものだそうです。

 

でも、でも、これはこれでものすごく読み応えのある内容でした!

ベルばらファンは買って損はないです!(あ、結局アンドレの過去は謎でした)

 

(追記;公開後に相互フォロワー様からご教示を頂きました。アンドレの過去の経験について記載があるのは、2002年出版の『ベルサイユのばら大事典』だとのことです。画像も見せて頂きました。こちらには確かにアンドレは18歳の時に、パレ・ロワイヤルでプロの方と初めての経験を済ませたとの記載がありました。また、たまなぎは『「ベルサイユのばら」その謎と真実』は2002年出版と書いていましたが、2003年出版とのことです。訂正させて頂きました。ありがとうございました)

 

内容紹介

ベルばら年代記~本編、美麗な着色版も!~

まず最初は「ベルばら年代記」。ベルばらの物語を年代順に解説。

名場面をちりばめつつ、初心者にも分かり易いように物語を紹介しています。

嬉しかったのは、愛蔵版やマーガレットコミックス版には収録されていない、カラーページが収録されていたところ。

「あなたを刺しオスカルを連れて逃げます……」からの3ページのカラーページは圧巻でした!(完全版には収録されているそうです)

 

登場人物についても、生没年をはじめ史実との違いや一致点を簡単に解説。デュ・バリー夫人についても、「実際は本作に描かれるような意地悪キャラではなく、朗らかで人好きのする女性だったらしい」と書かれていました。

 

物語の舞台

次は、物語の舞台となった場所を写真で紹介。

たまなぎはフランスには足を運んだことがないので、これは嬉しかった。

ベルサイユ宮殿をはじめ、オルレアン公の居城パレ・ロワイヤル、アンドレが落命したテュイルリー広場、バスティーユ牢獄跡のバスティーユ広場。豊富な写真で、本当に現地を旅しているような気分になれます。

 

革命と絵画

お次は、美術史家の鈴木杜幾子氏による、「ベルばら」時代の絵画の解説。

当時の画家たちの紹介にとどまらず、彼らが手掛けた絵画、権力者たちとのかかわりなどを通して、「ベルサイユのばら」の時代から、アントワネット死後のフランス革命期の時代まで、当時の人々の思想を精神性を読み解いていきます。

マリー・アントワネットの肖像画を数多く描き、ベルばら本編にも登場する王党派のルブラン夫人と、「マラーの死」などで有名な、革命派画家ダヴィッドとの対比も面白かったです。

大変読み応えのある章でした。

 

オルレアン公の素顔

続いて、エピソード編にも登場するマリー・アントワネットの名を関したブレゲの時計や、アントワネットのジュエリーについてもそれぞれ章が割かれています。

そして、あの、ルイ16世の宿敵オルレアン公についても丁寧な解説が!

オルレアン公はルイ16世の従兄で、居城パレ・ロワイヤルを革命家たちに開放するなど、ベルばらではルイ16世の敵ながらも新しい時代の風に敏感な王族として描かれます。

しかし、実際のところオルレアン公の行動はルイ16世・アントワネット夫妻への私怨に基づいて庵、暗躍するパレ・ロワイヤル派がオルレアン公を操っていたというのが実際のところのようです。この章では、オルレアン公とパレ・ロワイヤル派の人々、フランス革命との関係について丁寧に解説されています。

詳しい歴史を知りたい方にはお勧めの一章。

 

ヅカばらについても丁寧に解説!

そしてついに、宝塚版「ベルサイユのばら」についても時代を追って丁寧に解説!

そもそもたまなぎはベルばらブーム当初は生まれておらず、ベルばらを知ったのは、1989年から始まった宝塚でのベルばら再演でベルばらブームが再燃した時のことでした。

その時愛蔵版を貸してもらって読んだのが始まりで、以後30年以上沼にハマり続けて今があります(笑)。

宝塚版の「ベルサイユのばら」の舞台写真集も持っていたので、宝塚版が上演されるに至ったいきさつや主なキャストは知っていましたが、21世紀のベルばらについては知らなかったので、勉強になりました。明日海りおさんの出演されたベルばら、見たかったです。

何よりも嬉しかったのは、平成ベルばらの中で、たまなぎ一押しの涼風オスカルさまが、

「軍神マルスの子」がステージに現れたかのような涼風は、「♪我が名はオスカル」を歴代最高峰の歌唱力で歌いあげた。

と紹介されていたこと。

涼風真世さんは、あの天海祐希さんが二番手時代のトップスター。

あまりよく知らない方からは、「あの抜群のスター性を持つ天海祐希さんを二番手にしたトップって、食われていなかったの? だから早くに退団したんじゃないの?」などと意地悪なことを言われたりしているようですが、全くそんなことはありませんでした。

何よりも、当時の男役スターの中では誰も敵わない歌唱力と声量を備え、抜けるように白い肌と大きな瞳、透明感のある可愛らしい美貌の持ち主。男っぽくてきりりとしたタイプの美人の天海さんとはタイプが違い、さらに歌唱力が群を抜いていたので、どの舞台でも主役としての圧倒的な存在感がありました。

『赤と黒』のジュリアン・ソレルのような、男くさくてちょっと冷徹な二枚目がハマってしまうのに、舞台を降りると本当に愛らしい女性そのもの。そのギャップも魅力でしたね。実際に演じてはいませんが、『罪と罰』のラスコーリニコフや『銀河英雄伝説』のラインハルトなどがハマるんじゃないかと言われていました。

 

『ベルサイユのばら』では、舞台映えのする大胆な演技で、原作のちょっと口が悪くて喧嘩っ早くて豪胆なところがある一方で女性的で可愛らしいオスカル様を、余すところなく再現されていました。たまなぎのイメージでは「一番原作のイメージに近い」オスカルさまでした。

 

ここからたまなぎの宝塚沼が始まったのです……。

涼風真世オスカル・天海祐希アンドレの宝塚版「ベルサイユのばら オスカル編」は後にDVD化もされましたので、お財布に余裕のある方はぜひお求め下さい!(Amazonで取り扱いあり)

 

池田理代子先生のインタビュー

最後には、池田理代子先生のインタビュー。

そして、こちらにもバスティーユ攻撃の本編場面のカラー版が! 眼福。

理代子先生が「ベルサイユのばら」に女性の地位向上のメッセージを込められたことは、あちこちで話されていますが、今回はこのお言葉が印象的でした。

当時に比べると、現在は女性の社会進出が増えましたけれど、男女間の格差はなかなか埋まりませんね。昔は結婚しても働きたいという女性は望まれなかったけれど、今は逆に働いてもらわないと困ると言われるようになった。それなのに、子育てに対して無責任な男性も多いようです。政治の世界でも、まだ女性議員の割合は低いですし、21世紀になってもいまだに少子化の原因は「女性が高学歴になってわがままになったせい」だなんていう政治家がいる。本当にすべきことは、女性が働きながら子供を産み、育てやすい社会をつくることでしょう。私のような素人でも思いつくようなことを日本の政治家は分かっていません。(注;太字たまなぎ)

 

もうすぐ参院選。「進学より子育てを選びたい女性に支援を」などと言っている政党が支持を伸ばしているようですが、理代子先生の目にはどういうふうに映っているのでしょうね。

 

まとめ

・2025年6月発売の『「ベルサイユのばら」の真実』2022年『芸術新潮』9月号に掲載された特集『「ベルサイユのばら」の真実』を増補・再編集したものであり、2002年発売の『「ベルサイユのばら」謎と真実』とは別物である。

・作品解説に加え、時代背景や人物などを様々な視点から解説しており、大変読み応えのある一冊である。

・単行本や愛蔵版に収録されていない本編カラーページも収録されている。

 

ベルばらについては他にもいくつか記事を書いています。気になった方はご覧下さい!

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

 

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