はじめに
皆さん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。
初めての方は、初めまして。心療内科医でゆるく作家活動をしております、珠下なぎと申します。
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最近ベルばら記事ばかりになっていますが、今日もまたベルばら記事です(笑)。
歴史記事もまた書きますが、当面はベルばらネタが多すぎて、しばらく続くと思います。
今回もネタバレしまくりのエピソード編感想続き。ネタバレが嫌な方や「そもそもエピソード編って何?」という方はは、こちらの記事をご覧下さい。
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『ベルサイユのばら』エピソード編初読感想①(ネタバレなし)
今回は、コミックス11巻収録分3番目のエピソード、フェルゼン編の感想です。
理代子先生がずっと描きたかった「フェルゼンのその後」
このお話は、理代子先生が連載終了後から「いつか描きたかった」と言われていたフェルゼンのその後のお話。
『ベルサイユのばら』本編は、オスカルの死後は10週で終了するようにとの編集部からの要望があったというのは有名なお話。理代子先生はベルばらの主人公を、「あくまでマリーアントワネット」と考えていらっしゃいました。ですから、バスティーユ陥落後、アントワネットの処刑までを10週で終わらせなければならないというのは、かなり描きたかったものをそぎ落とさなければならなかったことは想像に難くありません。
エピソード編を読むと、バスティーユ陥落後からフェルゼンの死までを扱った作品がかなりの部分を占めています。この作品群を以て、理代子先生は本当に描きたかったものを描かれたのだな……たまなぎはそんなふうに感じます。エピソード編を以て、ベルばらは本当に完成したのだ、そんなふうに思わせてくれるのです。
アントワネット処刑後、フェルゼンに届けられた指輪
アントワネットの処刑後、本編で取り上げられたフェルゼンの記述はごくわずか。ヴァレンヌ逃亡の時にアントワネットのそばをはなれたことを悔やむ姿と、その後心冷たい権力者となって民衆に虐殺されたシーンが描かれるのみです。
このエピソード編「フェルゼン編」は、フェルゼンが亡命先のベルギーで、ジャルジェ将軍からアントワネットの形見の指輪を受けとるシーンから始まります。
指輪に彫られた言葉、「いっさいがわたしを御身がもとへみちびく」。
テュイルリー宮へしのびこんだ夜、フェルゼンがアントワネットに贈った指輪。処刑直前、タンプル塔でアントワネットと面会したジャルジェ将軍が、アントワネットからフェルゼンに届けてくれと預かったものでした。
革命後のマリー・テレーズ王女
さて、ここで場面は変わり、フランスのタンプル塔へ。ここにはアントワネットの死後、たった一人、娘のマリー・テレーズ王女が残されていました。
マリー・テレーズはアントワネットの第1子。ベルばら本編ではおてんばで愛くるしい幼少期の姿が印象的ですが、革命後は彼女も過酷な運命をたどります。
マリー・テレーズは、1795年、17歳の時、ついにタンプル塔から解放されます。当時交戦状態にあったオーストリアに囚われていたフランス人捕虜と交換に、母の実家のオーストリアに引き取られることになったのでした。
このシーンでも、マリー・テレーズがタンプル塔で屈辱的な扱いを受けていたことが容赦なく描かれます。
捕虜交換を告げる参事が去った後、マリー・テレーズは革命後に自分たちに襲いかかった悲劇を思い返します。フランス革命が勃発した時、わずか11歳だったマリー・テレーズ。思春期の多感な時期に、次々と家族を失った彼女は、解放されると聞いてももはや先の人生に何の希望も持てていないようでした。
ベルばら本編で、公務に追われるアントワネットを追い、「オシュカルおにいちゃまあ」と甘えていたあの無邪気な少女がどれほどの悲しみにさらされたのか。読んでいるこちらが胸が痛くなるようなシーンでした。
運命の再会
母の実家、今は従兄のフランツ皇帝が治めるウィーンにたどりついたマリー・テレーズ。ようやく王女らしい本来の扱いを受けるようになりますが、華やかなドレスにも興味を示さず、心を閉ざしている模様。
一方、フェルゼンは、グスタフ4世の親政開始と共に祖国スウェーデンでオーストリア大使に任命されます。
赴任先のオーストリアで、「フランスに嫁いだあの方」のお名前を出してはならない、と釘を刺されるフェルゼン。
ところが、その宮廷で出会ったのは、かつてのマリー・アントワネットに生き写しの少女。
一目で彼女をマリー・テレーズだと見抜いたフェルゼンですが、マリー・テレーズの方はフェルゼンをはっきりとは覚えていません。
フェルゼンは彼女の姿と共に、かつてフランスで過ごした美しかった日々が、もう二度と戻らないものであることをかみしめるのです。
マリー・テレーズとフェルゼンがオーストリア宮廷で一瞬の再会を果たすエピソードは実話で、理代子先生はこのシーンをこそ描きたかったようです。
「流転の王女マリー・テレーズ」
このエピソードは、「フェルゼン編」とされていますが、それ以上にマリー・テレーズのたどった悲劇の運命と、多感な少女の絶望と悲哀が胸を打ちます。
「エピソード編、容赦ない(泣)」となったのは、このエピソードが最初でした。
この物語はフェルゼンとマリー・テレーズの再会で終わっていますが、その後マリー・テレーズの運命はさらに歴史の波に翻弄されます。
池田理代子先生の『フランス革命の女たち』でも、まるまる一章を割いて、「流転の王女マリー・テレーズ・ド・フランス」として、マリー・テレーズが紹介されています。
マリー・テレーズは、その後ルイ16世の弟・アルトア伯の息子であるアングレーム公の妻となります。いとこ婚ですね。
ナポレオンによる第一帝政を経て、王政復古の時代になると、ルイ16世の弟プロヴァンス伯がルイ18世として王位に就き、1824年にマリー・テレーズにとって義父であり叔父でもあるアルトア伯がシャルル10世となります。この時マリー・テレーズの夫であるアングレームは王太子となり、マリー・テレーズは王太子妃となります。
シャルル10世は反動的な体制を敷いたため、1830年に7月革命が起こり、一族は再び国外亡命を余儀なくされます。亡命先は諸説ありますが、彼女は祖国フランスには戻ることなく、亡命先で没します。
どうでもいいおまけ
このお話に限らず、エピソード編のお話はかなり重く、精神的にダメージを与えて来るものが多いです。
立ち直れなくなった時のために、ベルばらの平和な世界観が描かれた『ベルばらKids』や『ベルばら絵本シリーズ』『ベルサイユのばら外伝』などを手もとに置いておくと安心です(笑)。
まとめ
・『ベルサイユのばら』マーガレットコミックス11巻のエピソード編②『フェルゼン編』の感想
・このエピソードでは、アントワネット処刑後のフェルゼンと、オーストリア宮廷でのマリー・テレーズ王女との一瞬の再会が描かれる。
・マリー・テレーズは流転の運命の末に異郷で生涯を閉じている。
・エピソード編は重いお話が多いので、ベルばら平和な世界観が描かれた『ベルばらKids』や『ベルばら絵本シリーズ』『ベルサイユのばら外伝』などを手もとに置いておくと安心
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