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たまなぎブログ by LTA出版事業部

昭和アニメ版『ベルサイユのばら』の魅力と、今抱く嫌悪の理由

はじめに

皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。

初めての方は初めまして。心療内科医でゆるく作家活動をしております、珠下なぎと申します。

ブログをご訪問頂き、ありがとうございます。

さて、またベルばら記事に戻ります。今回は考察というより、たまなぎ個人の感想に近いです。

 

昭和アニメにどうして嫌悪感を抱くようになってしまったか

視聴当時と今と、昭和アニメに対しての見方の変化

さて、今までの記事で、昭和アニメ版『ベルサイユのばら』については結構ボロクソに書かせて頂いていました。

その根底に感じられる女性蔑視と、オスカル像の大きな歪曲など、原作ファンとしてどうしても受け入れられない点を挙げたり、なぜそういった改変がなされたかについて時代背景も含めて考察してみたりしてみました。

沢山の反響も頂きましたし、原作を一番大切に思っている方たちの中にも昭和アニメを受け入れられない方が多くおられるのも分かりました。

 

たまなぎも、昭和アニメの改変についてはどうしても好きにはなれません。

しかし、アニメを見た当時は、終盤のオスカルの行動や衛兵隊への転属理由については引っかかったものの、概ねは感動しましたしハマりました。当時は40話すべてのタイトルを暗記していましたし、セリフもほぼ頭に入っていたと思います。

同じような方は他にもおられるのではないでしょうか?

 

昭和アニメが受け入れられなくなった理由

しかし、令和劇場版でベルばらブームが再燃し、改めて振り返ると「やはりあの改変はどうしても受けられない」という心情に傾いた方も多いのではと思います。

(当時から原作のファンで、「昭和アニメは昔から大嫌いだった」という方や、逆にアニメのファンで「原作よりも面白くなっていたので昭和アニメが大好き」という方もおられるとは思いますが、それについては今回は触れません)

これにはいくつか理由があるのではと思います。

①昭和アニメ放映から時間が経ち、視聴者も年齢を重ねたことや時代が進んだことで、当時の改変のいびつさが目立つようになったこと。

②原作に非常に忠実な令和劇場版アニメが公開され、昭和アニメに違和感を覚える方が増えたこと。

そしてもう一つ、たまなぎはこれが大きいのですが、

③インターネットの普及で、当時の改変の背景やオスカルのキャラ変を行った監督のインタビュー記事などを目にする機会が増えて、「昭和アニメ制作陣への嫌悪感」が「昭和アニメそのものへの嫌悪感」に拍車をかけてしまった。

 

③について少し補足すると、昭和アニメ後半を監督したD氏のインタビューは、断片的に流れてきただけでも、正直引用する気も起きなくなるほどひどいです。

「女子供に受けていただけでのつまらない原作をオレがドラマチックな人間劇にしてやった」「傲慢で可愛くない主人公(オスカル)を、愛されるヒロインにしてやった」と言わんばかりの、原作を変えた部分を自分の功績として強調する発言が目立ち、原作ファンとしては非常に不愉快になります。

原作蔑視だけでなく、根底にはオスカルというキャラそのものへの否定、今でいうなら「冷笑系」に該当するような、フランス革命そのものへの否定的な態度などが透けて見え、アニメを視聴するとどうしてもそれを思い出してしまうのです。

たまなぎ個人に関して言えば、「昭和アニメを受け入れられなくなってしまった理由」は、③が一番大きいと思うのです。

 

昭和アニメの良かったところ

その一方で、改めて思い返してみると、昭和アニメにも良かったところ、涙したところが沢山あったのも否定できないのです。改変も、オスカルのキャラ変は論外ですが、尺が長い分より深く書き込まれていたなと思うこともありました。昭和アニメを堪能した過去の自分と、現在嫌悪を感じざるを得ない自分。

その間でもやもやしたものを抱えていたのですが、最近になってこう思うようになりました。

「アニメの監督は原作をリスペクトしていなかったけれど、監督が一人であの作品を作り上げたわけではない。様々な人が関わってあのアニメ作品が出来た訳であって、心を動かされたところも沢山あった。それは否定したくない」

と思い、昭和アニメの大好きだったところを挙げてみることにしました。

 

声優陣のすばらしさ

令和の声優さんも役のイメージに合っており、歌も素晴らしく、年齢と共に変化する口調や声など、「さすがプロ!」と思わせるところが沢山あったのですが、たまなぎは昭和の声優さんたちのイメージが強すぎて、正直言うと令和の声優さんの声に慣れるのにちょっと時間がかかりました(今では令和の声優さんたち大好きです)。

主人公オスカル(田島令子氏)の透明感のある凛とした、それでいて繊細な声。アンドレ(志垣太郎氏)の、甘く包み込む声。フェルゼンも、前半の声優さんはちょっと好みではなかったですが、後半野沢那智氏のフェルゼンは、気品があり甘く深く、貴公子そのもので、ベルばらの世界を余すことなく表現してくれました。

 

そして、実はたまなぎはアントワネット役の上田みゆき氏に、一番衝撃を受けました。

昭和アニメではアントワネットは2話からの登場なのですが、最初の笑い声を聞いただけで、

「な、なんだこの声の持ち主は? 人間の声帯からこんな愛くるしい声が出るのか? 妖精か? 天使か? 天人か? いやいや迦陵頻伽(極楽にいる半人半鳥の鳥・声が美しいとされる)か?」

とびびりまくったものでした。

そんな愛くるしいアントワネットも、回が進むにつれ、だんだん女王としての風格と威厳を身に着けていきます。

第36話『合言葉は”サヨナラ”』で、永遠に道を分かつ運命となった、アントワネットとオスカルのやり取りで見せたお二人の声優さんの演技力は圧巻でした。20年にわたってはぐくんだ互いへの信頼と愛情、それが胸の内からあふれ出しそうになるのをこらえながら、アントワネットは旧支配者として、オスカルは新しい時代を感じる者として、精いっぱい自分の想いを伝えようとする。そして最後の「オ・ルヴォワール(また会いましょう)」。これが永遠の別れになることを感じながら……。

オスカル役の田島令子氏は、大げさな演技を命じる前半の長浜忠夫監督に耐えられず、長浜忠夫氏を降板させるという事態を招いた方ですが、それだけこの役に熱意を持ち、真摯に演じられたのだと思います。原作よりも感情を抑え気味で、儚い魅力をも持つオスカルを、完璧に演じられていました。

ナレーションの本山可久子氏も、個性的ながらも一度聞くと癖になる、不思議な味をお持ちでした。

 

音楽も素晴らしく、「麗しき人よ!」などは歌詞のないただのBGMにもかかわらず、鮮烈に耳に残っています。

 

後半のパリの描写

D監督はマジで嫌いですが、皮肉にもD監督の手による、革命前夜のパリの描写は、私は好きな面もあります。貧困と増税によって生まれた、やり場のない怒りと憎しみ、民衆の苦しみ。それがどんどん溜まっていき、ついに爆発を迎える。

希望が見えず、鬱屈とした、昏いパリの雰囲気がよく描写されていたと思います。

象徴的だったのは、随所に出て来る片足のアコーディオン弾き。その時々のパリの人々の気持ちを代弁するように、哀愁を帯びた調べに乗せて歌います。

 

『たった一杯の酒 こいつが命 一日中働いて手にしたもの それがたった一杯の酒

色も恋もねえ 家に帰れば借金と 飢えた家族

ベルサイユのことなんか知らないねえ オーストリアから来た皇女だって? スウェーデン貴族との火遊びごっこだって?

知らないねえ 俺たちはベルサイユの ことなんか これっぽっきりも 知らないね

それより欲しいぜ、たった一杯の酒……』

 

この人については賛否が分かれているようですが、たまなぎはわりと好きです。

視力を失いそうになって荒れて飲み歩くアンドレを励ます描写も良かった。

そして、7月13日の夜、アンドレを亡くしたオスカルの目の前で、セーヌの一部となって消えていくところも……

 

デュ・バリー夫人、ジャンヌの最期

これは以前の記事にも書きましたが、ベルばら三大悪女のうちの二人、デュ・バリー夫人とジャンヌの最期については、原作に少し改変が加えられています。

デュ・バリー夫人については、原作にない、修道院へ送られるシーンのオスカルとの会話が付け加えられ、ジャンヌについては少し改変されることで悲しい中にも救いのある最期となっています。

このあたりの改変は、たまなぎ的には好きでした。

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こうやって書き出して見ると、昭和アニメにも好きなところはいっぱいあったのですね。

オスカルのキャラ改変は受け入れられませんが、最後の4話以外はまた繰り返して見たいと思っています。

 

まとめ

・たまなぎは昭和アニメ版ベルばらはそれなりに楽しんでみていたが、オスカルのキャラ変には当時から違和感を持っていた。

・令和になり、劇場版が公開され、ネットから色々な情報が入ってくるようになると、オスカルのキャラ変を行った監督に嫌悪感を抱くようになってしまい、それが昭和アニメ版への嫌悪につながってしまった。

・昭和アニメ版の好きなところを挙げてみると、やはり大好きだった面も沢山あるので、今は監督への嫌悪感とは切り離して見直してみたいと思ている。

 

ベルばらについては他にもいくつか記事を書いています。気になった方はご覧下さい!

 

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最後までお読み下さり、ありがとうございました!

 

 

 

 

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