はじめに
皆さん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。
今日も来て下さって、ありがとうございます。
今回はたまなぎの新作『大江山恋絵巻~人の巻~』キャラ紹介その⑤。
今回は大江山で暮らす第三の姫・紅葉(もみじ)です。ネタバレはありませんので、安心してお読み下さい。
紅葉のプロフィール・設定
茜との出会い
それでは、ご紹介です。画像はこちら。どうでしょう、この見事な艶やかな黒髪。平安時代は、長い黒髪は美人の条件でした。
茜が大江山に来てから、同じ貴族の姫として、先に大江山にやってきた浅茅を紹介され、すぐに仲良くなります。他に貴族の姫はいないのかと尋ねる茜に、浅茅はこんなふうに言葉を濁します。
「うーん、わたしたちの他にもう一人、いるにはいるんだけれど……」
そこへ酒呑童子がやってきて、会話は立ち消えになってしまいますが、ほどなく茜は紅葉と出会うことになります。
夜、ふと目が覚めてしまった茜は、むせび泣くように哀しい、琴の音を耳にします。その琴の音の主が、紅葉でした。
年の頃は十七、八か。ちょうど美しい盛りの年頃だが、わたしとあまり背丈(せたけ)は変わらない。背に流れる髪は豊かで長く、ぬばたまの闇のごとく漆黒で、灯火の光を映して艶々と輝いている。抜けるように白い肌に切れ長の目、通った鼻筋。小柄でふくよかな体に長い髪、整った顔立ち、都の美人の条件を余すことなく備えている。帝の後宮にいても決して他の女性に引けを取らないだろう。
茜が驚くほどの美貌の持ち主だったのです。しかも、しょっぱなからこんなセリフを吐いてきます。
「あなた、こちらで暮らしていく覚悟(かくご)はつきまして? もう二度と、都にはもどれませんことよ。ここは何もかも都とは違いますけれど」
ここの生活よりもどうしても都がいいというなら帰すこともできる、と酒呑童子に言われていた茜はショックを受けるのですが……。
性格
この紅葉は、浅茅や茜と同じ、もと貴族の姫でしたが、毎日体を動かしてこまめに働いている浅茅とは対照的です。茜や浅茅と同じ部屋で寝起きしているのですが、寝る時間も起きる時間も二人より遅く、昼間はどこで何をしているのかさっぱり分かりません。しかも最初に出会った時から、謎めいた言動で茜を翻弄します。そんな紅葉に、茜は少なからず反感を覚えるようになります。
ところがある日、茜は山の中で紅葉を見かけます。滅多に外に出ないと思っていた紅葉がなぜ? その日は天候が崩れそうだから早く帰るようにと酒呑童子から注意を受けていた茜は、彼女を止めようとするうちに、自分が道に迷ってしまいます。そこから茜の運命はまた、大きく動き出し……。
ここに限らず、紅葉は物語の随所で鍵を握る人物となるのです。気になった方は、続きを本文でぜひご覧下さい!
大江山の皆さんから
それでは毎度のように、大江山の皆さんへのインタビューです。
(茜)「ここではみんなが自分にできる仕事をして、支えあっていくのでしょう? 酒呑童子さまでさえ、暇さえあれば誰かを手伝っていらっしゃるのに。一人だけ何もしなくていいなんて」
(酒呑童子)「……間違いを犯そうが、大江山の大切な仲間だ」
(茨木童子)「……」
(浅茅)「うん……あの方は、ね。わたしみたいにみんなと一緒に働いたり動き回ったりするの、向かない方だから……」
んんん……。大江山の皆さんは紅葉に対しては、何か複雑な思いを抱いているようです。けれど、単に嫌われている、というのも違うようです。それは一体……?
紅葉の名は……
紅葉、という名を聞いて、鬼好きの方はぴんときた方もおられるかもしれません。そうでない方も。鬼女紅葉、と言う名は聞いたことがあるかもしれません。主人公・茜も、紅葉の名を聞いた時に、思い出したのはその名でした。
それは、村上帝(在位九四六年ー九六七年)の御代、都を騒がせ、冷泉帝(在位九六七―九六九年)の御代に信濃の国で退治されたという鬼女の名ではなかっだろうか。琴の名手で、大変な美貌の持ち主だったという。
『大江山恋絵巻~人の巻~』は一条帝の時代(在位九八六~一〇一一年)ですから、鬼女紅葉の時代よりは数十年後の話です。
鬼女と同じ名を持つ姫・紅葉。これは単なる偶然なのでしょうか?
まとめ
・『大江山恋絵巻~人の巻~』の紅葉は、謎の多い美貌の姫。大江山の中でも複雑な立ち位置にあるが、物語の展開の鍵を握る。
・紅葉の名は、酒呑童子伝説の時代である一条帝の時代よりも数十年前、都を騒がせた鬼女の名と同じである。
最後までお読み下さって、ありがとうございました!