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たまなぎブログ by LTA出版事業部

『ベルサイユのばら』エピソード編感想その②アンドレ編・ネタバレあり

はじめに

皆さん今日は、たまなぎこと珠下(たまもと)なぎです。

初めての方は、初めまして。心療内科医でゆるく作家活動をしております、珠下なぎと申します。

 

ブログご訪問下さり、ありがとうございます!

最近ベルばら記事ばかりになっていますが、今日もまたベルばら記事です(笑)。

歴史記事もまた書きますが、当面はベルばらネタが多すぎて、しばらく続くと思います。

 

さて、今回は『エピソード編』について、それぞれのお話についての感想です。

今回はネタバレしまくります。ネタバレが嫌な方や「そもそもエピソード編って何?」という方はは、こちらの記事をご覧下さい。

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今回は、コミックス11巻収録分最初のエピソード、アンドレ編の感想です。

子ども時代のアンドレと故郷との別れ

このお話は、ジャルジェ家に引き取られる直前のアンドレのエピソードから始まります。

アンドレのお母さんが亡くなり、アンドレはジャルジェ家に仕えている祖母のもとに引き取られることに。

幼馴染の可愛らしい少女・クリスティーヌとも別れを告げます。

アンドレがジャルジェ家のお嬢様の遊び相手兼護衛として引き取られることになったと知ったクリスティーヌは寂しそう。

「きっと、きれいなお嬢様ね……」「きっとアンドレはあたしのことなんか、すぐに忘れてしまうわね」とすね気味です。それを慌てて慰めるアンドレ。小さい頃から優しい子だったんですね。

でも、ばあやの「それはそれはおきれいなお嬢様」という言葉に、ちょっと未来への期待に胸をふくらませているよう。

 

ええ、オスカルさまは、それはそれはおきれいなお嬢様ですとも(笑)。ただし、初対面のアンドレにいきなり剣を持たせて稽古に連行するようなお嬢様ですが(笑)。多分、あの後アンドレは容赦なくボコボコにされたはず。

 

そんな先の運命など知る由もないアンドレ。おばあちゃんが出発をせかす中、クリスティーヌはアンドレに自分がつけていたリボンを渡します。

「大きくなったらあたしをアンドレのお嫁さんにしてね!」

と。アンドレ、幼少期からモテてたんですね。いや、そりゃモテないはずがないですよね。

宮廷でオスカルさまについていったら、オスカルさま目当ての貴婦人たちの中でさえ、「ふふ、わたしはアンドレの方が……」なんて言い出す人が出てくるくらいのイケメンですから。

ちょっと脱線しますが、アンドレがオスカルさまの相手役に決定したのは連載がかなり進んでからで、最初はアンドレはガチモブ扱いだったのです。それでも初期からイケメンに設定されていたのはなにゆえでしょう。まだ相手役が決定していなかったオスカルさまのために、身近な男性の誰が相手役になってもいいように、とりあえず身近な男性は全員美形にしておいたのでしょうか。

またまたちょっと脱線ですが、文章にせよ漫画にせよ、連載をこなす方って本当にすごいとおもうのですよ。連載では、一度発表してしまったらやり直しがききません。

たまなぎなどは、最後までプロットを立ててひとつの物語を書き終わっても、後から辻褄が合わなくなって修正したり、途中で思いついた設定を補強するために、後戻りして伏線をぶちこむなんてしょっちゅう。

 

やっぱりここが才能の差というものなのでしょうか……(弱小物書きの悲哀)。

 

革命直前のパリ、パレ・ロワイヤル

アンドレと故郷の村との別れから、いきなり話は革命直前のパリへ。アランたちがアベイ牢獄から救い出された直後、アンドレとオスカルはパレ・ロワイヤルへ。

ここは市民派王族として有名なオルレアン公の居城。オルレアン公は平等公を自称して革命家たちに自分の居城を開放していました。

オスカルさまとアンドレはここでロベスピエールと再会。アベイ牢獄からアランたちを救い出すため、オスカルはベルナールを通じて市民を動かします。この様子だとロベスピエールもかなり協力してくれたようです。

 

またまた脱線しますが、このように原作では、ロベスピエールとオスカルが親交があったり、ベルナールの出自が半分貴族であったり、アランは反体制派ではあるものの一応貴族の称号があったりと、「豊かな貴族vs貧しい平民」という単なる対立ではなく、グラデーション的に描かれています。

それを昭和版アニメはアランを平民とし、ベルナールの出自は設定をなかったことにし、サンジュストは「血に飢えたテロリスト」と改変。貴族と平民を単なる二項対立に単純化しています。

監督はそれで深みを出したつもりらしいですが、原作ファンから言わせれば、複雑な原作を単純化し、深みを無くしたようにしか見えません。

もっとも例の監督、別のところで見ましたが、あの女々しくてマザコンでロリコンで顔と身分だけが取り柄の光源氏を「男らしくすがすがしい」なんて評しているので、どっかズレた人であるのは間違いないでしょうけれど。

あ、またまた脱線すみません。

 

オルレアン公の寵姫・クリスティーヌ登場

ここで登場したのがグラマラス美女、マリー・クリスティーヌ。

ロベスピエールによると、オルレアン公の寵姫で、革命家の活動に理解してくれる人物だということ。もともとの出自が平民らしいというのもロベスピエールは匂わせます。

マリー・クリスティーヌに挨拶をして帰途についたオスカルとアンドレ。

 

マリー・クリスティーヌがじっとこちらを見ていることに気づいたオスカル。

ここで、貴重な両想い期のアンドレとオスカルが見られます。

めっちゃ尊いです。ラブラブです。

たまなぎなんぞが言及すると汚れそうな気がしますので、未読の方は是非是非本編でお確かめ下さいませ。

 

マリー・クリスティーヌの正体と革命後

そしてマリー・クリスティーヌが、あのアンドレの幼馴染の女の子・クリスティーヌだったことが彼女の回想で語られます。彼女はあの後両親を亡くし、病弱な弟のために必死で働いていたところある男爵に見初められて教育を受け、オルレアン公の寵姫となったのでした。

でも、アンドレはクリスティーヌのことを覚えていない様子。10年以上片思いした身分違いの相手とやっと両想いになった直後ですからね。そりゃ他の女性なんてどんな美女でもカボチャにしか見えないでしょう。いやそもそも、オスカルさま以上の美女なんてそうそういませんが。

いや、一瞬意味深な表情でクリスティーヌを見た……? でも何も言わず。

 

その一方で、ずっとアンドレを想い続け、どこかで会えることを励みに頑張って来たクリスティーヌには胸が痛みます。辛いこともたくさんあったでしょうし、オルレアン公の愛情にだけ頼っている寵姫の立場とは不安定なもの。今でも幸せと言えるのかもわかりません。

 

そして、ついに革命が勃発。混乱の中、クリスティーヌを訪ねてきたのはアンドレの祖母でした。

ということは、実はアンドレ、気づいていたんですね。マリー・クリスティーヌがあのクリスティーヌであることに。オスカルさまを不安にさせないために、その場では何も言わなかったのでしょう。

さすがアンドレ。クリスティーヌには辛い選択でしたが……。

 

ばあやは、アンドレが昔クリスティーヌから預かったリボンを返し、アンドレの死を告げます。

クリスティーヌは、昔アンドレにリボンと交換に預かったドングリを、庭に埋めます。そこをオルレアン公に見つかったクリスティーヌ。

そこで聞かされたのは、恐ろしいオルレアン公の野望でした。

オルレアン公が革命家に理解を示していたのは、実はルイ16世を処刑させて自分が王位に就くためだと。

衝撃を受けるクリスティーヌ。

 

やがてクリスティーヌが埋めたどんぐりは、芽を出し、大樹に育ちます。

その中に幻のように浮かび上がる幼い日のアンドレとクリスティーヌ。

これは二人で過ごした日々が、遠い昔の幻となってしまった無常さを示すとともに、1789年よりもさらに時が過ぎ、クリスティーヌの身にも起こったであろう悲劇をも予想させているようにも思えます。

 

オルレアン公のその後

オルレアン公はその後、フランス革命では終始革命側につきますが、1793年、オルレアン公の息子・ルイ・フィリップを擁して王政復古のクーデターが謀られ、失敗に終わると、オルレアン公も嫌疑をかけられ断頭台の露と消えます。

バスティーユ陥落からわずか4年後のことでした。

その時、マリー・クリスティーヌはどうなったのか。この人物はベルばらオリジナルキャラのようなので想像するしかありませんが、オルレアン公の庇護を失った彼女が苦労したであろうことは想像に難くありません。いや、ひょっとしたら最悪、オルレアン公を同じ運命をたどった可能性さえあるのです。

 

一方、王政復古のクーデターに参加したオルレアン公の息子・ルイ・フィリップは、外国に亡命し、紆余曲折を経て、1830年の7月革命で王位につき、フランス初の立憲君主制を敷くことになるのです。

 

この『アンドレ編運』は、ベルばら本編より過去のエピソードを描き、また、未来を匂わせることにより、より長い時間の流れから登場人物たちの人生に焦点を当てています。

運命の残酷さ・歴史の無常を強く印象に残す物語でした。

重さが半端ない……!

ベルばら本編より格段に辛い! 

と思い始めたたまなぎ。しかしこの後に続く物語は、さらに容赦がなかったのです(笑)。続きはまた次回。

 

まとめ

・『ベルサイユのばら』マーガレットコミックス11巻のエピソード編①『アンドレ編』の感想

・このエピソードでは、アンドレの幼馴染の少女クリスティーヌと、革命直前のアンドレとの一瞬の再会が描かれる。

・運命の残酷さと歴史の無常が容赦なく描かれる重い物語である。

 

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