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たまなぎブログ by LTA出版事業部

珠下なぎの読書メモ「最恐のアンソロジー『堕ちる』『潰える』」

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます。

 

ちょっと間が空いてしまってすみません。

今日は久しぶりに、読んだ本の感想です。

角川ホラー文庫から昨年出版されたアンソロジー『堕ちる』『潰える』。

誕生日プレゼントに頂いたもの。なかなか自分ではアンソロジー系は買わないので新鮮でした。

それでは感想です。ネタバレはありません。

 

『堕ちる』感想

執筆陣は、宮部みゆき氏、新名智氏、芹花公園氏、内藤了氏、三津田信三氏、小池真理子氏の6名。

たまなぎが一番印象に残ったのは、小池真理子氏の『オンリー・ユーーかけがえのないあなた』。

独身を貫いて亡くなった女性実業家の身辺整理を頼まれた、司法書士事務所に勤める主人公。

決定的に怖い、というより「どこか不気味さを感じさせる」「何かひっかかる」出来事が次々と起こり、「この先どうなるのだろう」「これは何の伏線なんだろう」と気になってしまい、先へ先へと引き込まれていきます。

謎が解けた時、残るのは「怖さ」というより、「切なさ」と「哀しさ」。それでいて、静かに温かい涙が流れ出してくるような、心地よい読後感が残ります。

 

三津田信三氏の、『湯の中の顔』も大変印象的です。

『アラビアン・ナイト』のように、物語が入れ子構造になっているのですが、核になる話の怪異がとにかくとんでもなく怖く、インパクトがすごい。

挿入話として語られる怪談もひとつひとつが粒ぞろいで、短編ながら大変贅沢な一編です。

また、「実話怪談」について学ぶことが多く、ホラーを書くことを勉強中のたまなぎには大変勉強になりました。

 

『潰える』感想

こちらは『堕ちる』よりもさらに粒ぞろいの短編集でした。

執筆陣は澤村伊智氏、阿泉来堂氏、鈴木光司氏、原浩氏、一穂ミチ氏、そして小野不由美氏!

「怖さ」で言えば、『堕ちる』よりこちらが上かな。

 

ホラーシーンのインパクトは、阿泉来堂氏の『ニンゲン柱』が一番強かったように思います。

スランプに陥った駆け出しホラー作家の主人公は、父に勧められて、母方の祖母の故郷を訪ね……そこで封印された記憶と共によみがえる、今なお続くおぞましい村の秘密。ホラーシーンがまざまざと目の前に浮かんでくる筆力は抜きんでていたように思います。

 

原浩氏『828の1』は、「意味が分かるととんでもなく怖くなる」タイプの話。

謎に引き込まれて一気に読了した後、「何でもない日常的なフレーズがとんでもなく恐ろしい言葉に聞こえる」テクニックには唸らされました。これも怖かった。

 

一穂ミチ氏『にえたかどうだか』。これも怖かったです。ありふれた日常が徐々に変化し、気が付くと引き返せない怪異の中に引き込まれている。怪異の元と思われた人物が意外な正体を見せる展開も良かった。

 

そして、最後に小野不由美氏の『風来たりて』。

私はあの名作『ゴーストハント』シリーズを始め、この方のホラー小説は全て読破しているほどファンです。

今回の作品は、あの『営繕かるかや怪異譚』の最新作。

ありふれた市井の人々の家に起こる怪異を、営繕工事を請け負う尾端が、少しずつ建物や外構に工夫を加えることで解決していくシリーズです。

この物語は、「怪異=悪」と決めつけず、時には怪異の元となった人や霊に寄り添い、その場にいるものが正者死者を問わず「心地よく暮らせる」環境を整えていく、という不思議で温かいシリーズです。

ホラーの巨匠らしく、怪異が起こるシーンはすさまじい迫力をもって描き、ラストシーンは温かく穏やか。アンソロジーの最後を飾るのにふさわしい作品でした。

 

アンソロジーを読むということ

たまなぎは、本は「作家買い」するタイプなので、あまりアンソロジータイプの作品は読む習慣がありませんでした。

しかし、アンソロジーの良い所は、「未読の作家さんに出会えるところ」ですね。

「この作品が面白かったから、別の単著も読んでみよう!」となりますからね。

この「最恐の書き下ろしアンソロジー」シリーズは最新作『慄く』も出ているようですので、こちらも読んでみたいと思います。

 

たまなぎとホラー

たまなぎは、ホラーは読むのも好きですが、書くのも好きです。

 

2022年発売の日本児童文学協会編『1話ごとに近づく恐怖』1巻『憤怒の恐怖』には、たまなぎのショートショート『図書室の怪』が収録されていますし、Amazonではホラーミステリー長編『ウラヤマ』を発売しています。

『ウラヤマ』は、中学受験を終えた最初の夏休み、廃トンネルを探検した少年たちの身に次々と怪異が訪れ、やがて彼らの前に、近代史の深い闇が現れる……という物語。

児童向けに書いたのでホラーシーンは抑えめに書いたつもりですが、「かなり怖い」とのお声を多数頂いています。

 

『ウラヤマ』はシリーズ化のお声かけも頂いており、また続きを発表できたらと思っています。

 

珠下なぎの作品のご案内はこちらです↓(『ウラヤマ』は一番下にあります)

興味を持って下さった方は、ぜひこちらもお手にとって見て下さいね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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