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たまなぎブログ by LTA出版事業部

チェリまほキャラの魅力⑦六角祐太編

はじめに

皆さん今日は、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

さて、今日は「チェリまほキャラの魅力」最終回です。

黒沢さんと安達くんの後輩、六角祐太くん。一見チャラい今時の若者キャラですが、彼も作品の中で大きな役割を果たしています。

 

新世代の象徴としての六角君の魅力

実写版で描かれた、古い価値観を打破するキャラとしての六角くん

ドラマ放送時に発売されていた原作版を読んでの六角くんに対して、たまなぎはこんな印象を持っていました。

黒沢さんにはなついているけど、安達くんのことはしょっちゅう名前を間違えたり、「影うすい」と失礼なことを思ったりしている、「チャラい今時の若者」キャラだなあ、と。

一方、ドラマ版では、様々な場面で見せる顔が、「古き悪しき価値観を打破する、新世代の魅力的な若者」として描かれていました。

 

私が特にそれを感じたのは、二か所あります。

「社会派ドラマとしてのチェリまほ」を考察した時にも書きましたが、最初は、3話。

飲み会の席で始まった王様ゲームで、安達くんと黒沢さんがキスを強要されるシーンです。

六角くんは、王様ゲームの最中は安達くんの胃薬を買いに行くために席を外していました。

ちょうど六角くんが帰ってきた時、王様ゲームは黒沢さんが安達くんの額にキスをして終わり、「もうこういうの終わりね」と上司に向かって釘を刺して出て行ってしまった後でした。

何となく白けてしまったような40代以上の上司たちと、委縮して何も言えなくなってしまっている20~30代。

事情を聞いた六角くんは、

「王様ゲームとか、時代錯誤過ぎて引くんですけど」

とばっさり。

 

王様ゲームなど、上司から強要されたらパワハラ以外の何物でもありません。

けれど、今の40代以上の世代は、「場の雰囲気を壊さないため」「盛り上げるため」に、仕事がらみの飲み会の席でも頻繁にこういった悪質なゲームにも従ってきたでしょうし、気付いたら自分たちも下の世代にそれを強要している。

けれど時代は変わってきている。もうそういうのは許されないんだよ、とはっきりしたメッセージがここで打ち出されるのです。

 

もう一つは、柘植さんに避けられた湊くんから電話を受けた六角くんが、安達くんに頼んで柘植さんを喫茶店に呼び出す場面。

柘植さんは、ひそかに思いを寄せる湊くんが元彼にキスされているのを見てショックを受け、湊くんを避けるようになってしまうのですが、湊くんはそれを、「ゲイと知ったから避けている」と誤解してしまいます。

 

柘植さんを呼び出した六角くんは「どうして湊を避けるんですか。あいつがゲイだからですか!」と柘植さんにつかみかかります。

なかなかダンサーとして芽が出ず、焦っていた湊くんに、ダンスを続けるように背中を押してやった柘植さん。それを湊くんから聞き、湊くんが柘植さんに信頼を寄せていると知った六角くんは裏切られたような気持になったのでしょう。

そして、

「そんなくだらないことであいつを避けんのかよ!」

と柘植さんを責めます。

六角くんたち、新しい世代の若者にとって、同性愛者であることは、人間関係において障害となり得るようなことではない。

「くだらないこと」なんです。

六角くんのセクシュアリティは明らかにされてはいませんが、同性愛者であろうが異性愛者であろうが、恋愛に興味がなかろうが、それはその人の一部にすぎず、それを理由にして今までの人間関係を壊してしまうようなものではない、という六角くんの価値観が、ここで示されます。

まして湊くんは、同じ芸術を志すものとして、柘植さんの言葉に救われ、彼に信頼を寄せ始めているのですから。

「あんた、湊にダンス続けろって言ってくれたんですよね」

このセリフには、芸術という同類項で結ばれた二人の気持ちの方がずっと大事だ、という気持ちがこめられているように思います。

 

マイノリティへの差別、飲み会の席でのセクハラやパワハラ、そういった古い時代の因習に傷ついた経験のある人間、あるいは傷ついた人を間近で見た経験のある人には、六角くんのキャラは、新しい時代の希望として、輝いて映ると思います。

 

原作で描かかれる六角くんの成長

ドラマ放送時に進んでいた原作では、「ただのチャラい後輩」だった六角くんでしたが、その後巻が進むにつれ、だんだん成長を見せるようになります。

安達くんの名前を間違えるエピソードは、原作3巻で終了。

原作6巻では、長崎転勤の話を持ち掛けられ、動揺してミスをしてしまった安達くんをフォローするなど、頼もしい一面を見せます。

そして、10巻で、安達くんと黒沢さんの二人が指輪をしていることに気づいた朝比奈さんの、「それってむしろ、安達と黒澤が付き合ってたりしてな!」というセリフに、「それって最高じゃないですか!」と至極フラットな感想を表明します。

六角くんは、同性同士がおかしいとか普通じゃないとか、そういう旧世代の価値観にとらわれない存在であることが、ドラマと同様示されるわけです。

 

新しい世代の象徴としての六角くんは、実写版の方が魅力的なキャラに描かれているかもしれません。

名前を間違えるなどの「失礼エピソード」もカットされていますし。

しかし、もともとが「チャラくて失礼なキャラ」に描かれていた分、原作の方がより六角くんの成長を感じられる作りになっているとも思います。

最新刊では、藤崎さんへの憧れの思いも見え隠れしますしね。この想いの行方も、また、腐女子の藤崎さんが、六角くんの気持ちにどんな反応を見せるのかも楽しみです!

 

どうしてもせざるを得ないドラマ版への突っ込み

そんな魅力的なキャラですが、この六角くん、特に実写版では突っ込みどころ満載です。

 

六角くんの魅力が存分に発揮されているのは、本編はもちろんですが、スピンオフの「六角編」でしょう。

六角くんは、黒沢さんと安達くんが、正反対のタイプなのに最近しょっちゅう一緒にいるな、と不思議に思い始めます。

(ドラマ安達くんは超イケメンですから、本当は正反対のタイプじゃないんですが(笑))

安達くんと話していると、常に黒沢さんが割って入ることに気付く六角くん。

黒沢さんと安達くんとがおそろいの万年筆を持っていることにも気づいている。

 

なのにどうして二人の関係に気付かない。

 

原作だったら気づかなくても不自然ではないんですよ。

 

原作では、この時点では湊くんのセクシュアリティは明らかにされていませんし、柘植さんと湊くんの関係についても、六角くんは知りません。

 

でも、ドラマ版では、湊くんがゲイであることを六角くんは知っています。

「そんなくだらないことで湊を避けるのかよ」と柘植さんにつかみかかったくらいですから、ゲイであることで周囲から傷つけられることもある湊くんを、六角くんは間近で見ており、それでも友人として大切に思っていたことが分かります。

 

身近で大事な友人がゲイであるなら、男同士が恋愛関係になる、ということは当然前提としてあるはずです。

黒沢さんと安達くんの関係が急に近くなったことから、二人が恋愛関係ではないかな?ということも疑ってしかるべきだと思うのですが。

 

黒沢さんがお姉さまと歩いていたところを目撃して、元カノと勘違いしていたから、「黒沢さんは異性愛者だ」という思い込みがあったんでしょうか?

 

それとも単に、鈍いだけか。

 

でも、万年筆など細かいところにはすぐ気づきましたしね。

本編で、二人が同じおにぎりを食べていることにも気づいていましたし。

鈍いわけではない。

 

そうか、勘を働かせるべき方向が間違っているのか。

 

うーん、謎です。

皆さんはどう思われましたか?

 

ついでに実写版六角くんの突っ込みどころといえば、8話のくろあだ初デート。

「差し入れ、買ってくる」という柘植さんに、「あーじゃあ俺、アイス的なものお願いします」。

 

アイス「的な」ってなんですか、「的な」って。単にアイスじゃダメなんですか。

違いを教えてください。

 

それにせっかく買っていった差し入れ、喧嘩が勃発したせいで、湊くんのもとに届けられたのはずいぶん時間が経った後になってしまったんですが、「アイス的なもの」溶けちゃったんじゃないんでしょうか?

湊くんと元彼のキスシーンよりも、「アイス的なもの」の行方が気になって気になって仕方がなかった珠下なぎでした。

 

おわりに

これでチェリまほキャラの魅力についての記事シリーズは終了です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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