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たまなぎブログ by LTA出版事業部

謎の女神・八女津媛の真相に迫る②八女に伝わる「日向神神話」

皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

さて、今日は前回の続きです。

前回の記事はこちら↓

謎の女神・八女津媛の真相に迫る①「八女津媛誕生秘話」

皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。 今日も来て下さって、ありがとうございます!   さて、本日からは、以前もTwitterで少し取り上げた、八女津媛の出生の謎について。 以前Twitt ...

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前回ご紹介した『日向神案内助辨』には、正史には書かれていない、瓊瓊杵尊らについての興味深い記述が沢山あります。

これらについてご紹介しましょう。

 

1.正史のおさらい

ご紹介の前に、正史をざっとおさらいします。

『日本書紀』においては、瓊瓊杵尊が、国津神の大山津見神の娘・木花咲耶姫をめとって生まれたのが火闌降命(ホスソリ=海幸彦)、彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト=山幸彦)、火明命(ホアカリノミコト)の三神。最初、大山津見神は、姉の磐長姫も一緒に差し出しますが、瓊瓊杵尊は磐長姫の容貌が醜かったため、磐長姫を親のもとに返してしまいます。

また、一夜にして妊娠したことから、自分の子ではないのかと疑ってきた瓊瓊杵尊に怒り、木花咲耶姫は、「真の天孫の子なら何があっても無事に生まれてくるはず」と産屋に火を放って出産します。

 

2.『日向神案内助辨』に書かれた天孫たち

『日向神案内助辨』は、日向神の観光案内と、神話を織り交ぜて書かれていますが、その中から、神話部分を抜き出してご紹介しましょう。

日向神明神は火明命でいらっしゃいます。

神天父(みてんふ)は瓊瓊杵尊、神胎母(みたいぼ)は木花開耶姫(ママ)です。木花開耶姫は、姉姫の磐名賀姫の嫉妬を甚だ恐れになって、此の岩窟の地にお籠もりになったという趣旨を神書(注1)にも見られます。然るに、木花開耶姫はご妊娠したと思われました。そのことを瓊瓊杵尊に申し上げると、瓊瓊杵尊のお気持ちは疑いが強かった。そのため、姫は身に覚えのないことから、深くお恨みになって、穿室(うつろ)にこもり、一心にお祈りされました。

(もし私が奇怪に犯されたり、病気によって不合理な懐妊だったりしたものであれば、天の子ではないのでここで横死する罰を受けます)

こう誓って、月が満ちてつつがなく三人の尊を誕生させました。第一が彦火火出見尊、第二が火明命、第三が火闌降命でした。皆美しく健やかでした。

そうして疑いも晴れ、第二の火明命を日向神に留めなさり、他のお二人は日向国に遷しなさったと、そう言ったことから火明命がすなわち日向神明神となります。

(注1:日向神神社に伝わっていたという『日向神本記』のこと。現存しない。『日向神案内助辨』の神話部分は、これからの引用と推定される)

 

なるほど。木花咲耶姫の胎内の子が疑われたこと、それに対して姫が誓いを立てて身の潔白を証明したことなど、大筋は正史をなぞりながら、細部ではかなり違ったお話が伝わっています。

 

また、火明命も、記述の少ない神様です。

兄弟に当たる火闌降命(ホスソリ=海幸彦)、彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト=山幸彦)が非常に有名なのとは対照的で、ほとんど記述がありません。

瓊瓊杵尊の兄、つまりこの神話の火明命の伯父にあたる神にも、「天火明命(あめのほあかりのみこと)」という名の神がいたり、『播磨国風土記』では、「大己貴命」 ( おおなむちのみこと=大国主命 )の子として同名の神がいたりします。

饒速日命と同一神とされることもあり、何かと謎の多い神様ですが、このようにエピソードがはっきり描かれているものは、珍しいのではないでしょうか。

 

3.天孫たちが日向神に残した足跡

先に、不貞を疑われた木花咲耶姫が、誓いを立てて身の潔白を証明する話がありますが、これには別バージョンもあり、同じ『日向神案内助辨』には、こう書かれています、

蹴穿(けほぎ)岩のことについては、三人の尊の誕生の時、木花開耶姫(ママ)が、

(この子らが真の天孫ならば後代までの不思議をお残し下さい)

と誓ったので、人力では及び難いような大盤岩が、このように丸い満月状に蹴穿を残したのです。

と。

その蹴穿岩がこれ。

 

 

ちなみにこの岩については、別の由来も同書に伝えられています。

又一説によると、火闌降命、彦火火出見尊が日向の地に飛び立った時に、蹴り穿たれたとのことです。

 

この岩を模した八女市・隆勝堂のお菓子・蹴洞は、こちらの説を取っています。

白あんに卵黄を混ぜた卵黄餡を、ピーナッツバターとバターを使った皮でくるみ、蹴洞岩(現在はこちらの表記を用いる)に見立てたクルミをアクセントに使ったお菓子。表面がカリカリしていて美味しいですよ。八女の名産品、八女茶にとてもよく合います。

ちなみに隆勝堂は、大正年間創建の、八女市の老舗のお菓子屋さん。和菓子だけでなく洋菓子もおいしいです。たまなぎのイチオシはクッキーシューにクリームをたっぷりはさんだシュークリーム「ドラゴンボール」。八女特産の抹茶を使った「よなわなバウムクーヘン」も好きです。通販もありますよ。

隆勝堂フーズ株式会社(りゅうしょうどう) 〜八女・久留米 菓子/ベーカリー製造販売〜 (ryushodo.com)

 

次回は実際に訪ねた日向神峡の様子をご紹介します。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

 

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