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たまなぎブログ by LTA出版事業部

同性婚訴訟4件目、名古屋地裁の画期的な判決

皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

さて、先日、同性同士の結婚を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法に違反するとして、同性カップルら8人が国を訴えた訴訟の判決が名古屋地裁で出されました。同性婚に賛成する立場からは、大変嬉しいニュースとなりました。なぜなら……?

 

1.今まで最も踏み込んだ判決

これは、札幌地裁、大阪地裁、東京地裁に続く4件目の判決です。

結論から言いますと、今回は今までの判決の中で最も、同性婚実現に向けて前進した判決と言えます(素晴らしい(^^))。

チェリまほ公式さんも、チェリまほ原作者の豊田悠先生も、このニュースをリツイート。豊田悠先生は、同性婚に賛成する「結婚の自由をすべての人に」プロジェクトに、「チェリまほTHEMOVIE」の著作権料の一部を寄付されるなど、同性婚には賛成の立場を取っておられます。

それでは、詳しく見てまいりましょう。

2022年5月31日の朝日新聞の報道を中心にご紹介します。

 

2.これまでの判決との比較

先ほども述べたように、同様の訴訟は今回で4件目です。今までの判決と比較するとどうでしょうか?

同性婚を認めない規定が違憲かどうかの争点になった憲法の条文は次の3つです。

①憲法第24条1項「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」

②憲法第24条2項「婚姻や家族に関する立法は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚」

③憲法第14条「法の下の平等」

今回までのそれぞれの地裁の判決をまとめると、下の表のようになります

札幌地裁
(2021年3月)
大阪地裁
(2022年6月)
東京地裁
(2022年11月)
名古屋地裁
(2023年5月)
憲法第24条1項 合憲 合憲 合憲 合憲
憲法第24条2項 合憲 合憲 違憲状態 違憲
憲法第14条 違憲 合憲 合憲 違憲

これまでの判決と大きく違うのは、憲法第24条2項・憲法14条の両方について、現在の規定が「違憲」としたところ。

憲法第24条第2項については、同性カップルが置かれている状況について「法律婚に付与されている重大な人格的利益から排除されている」と指摘。そのうえで、こうした状況を放置することは「個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠く」と判断。

憲法第14条「法の下の平等」についても違憲と判断。理由として、同性カップルについて「性的指向という自ら選択・修正できない事柄を理由として、婚姻に直接的な制約を課されている」としたうえで、差別的な取り扱いを受けていると結論づけました。

ただし、憲法24条1項については、「同性間の婚姻は想定されていない」として、合憲と判断しています。

 

3.当事者・識者の反応 

同様の訴訟が続く札幌・大阪・東京・福岡の原告らも、「これまでで一番いい判決」とこれを歓迎しました。

棚村政行・早稲田大教授(家族法)は、「国会議論の強力な後押しになる」と評価。

小林直三・名古屋市市立大学大学院教授(憲法学)は、「違憲判断のロジックが明快。こうした判断を受け政治が動かないといけない。国を待たずとも、パートナーシップ制度などをどんどん進めるべきだ」と主張されています。

私も、今回の判決は一番踏み込んだ判決だと思います。私自身は同性婚に賛成の立場です。しかし、それは別に同性愛ものを愛好しているというからだけではありません。憲法に明記された「基本的人権の尊重」の立場から、認められるべきと考えるからです。

 

3.同性カップルが直面する様々な問題

現在、同性カップルは、異性カップルなら遭遇しないですむ、様々な問題に直面しています。『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』の中にも、よく見るとさりげなくそういった場面が描かれています。

『チェリまほ』の二人は様々な試練を乗り越えて結ばれ、幸せな生活を築いていますが、法的には二人の関係を保障してくれるものはありません。そして、黒沢さんも安達くんも私たちも、そして全国にいる無数の同性カップルも(シロさんもケンちゃんも野本さんも春日さんも)、現実に生きているのは「同性婚の認められない世界」だということの意味を、もう一度考えてみたいと思います。

 

チェリ家の方で、今まであまりこの問題に関心を持っていなかったという方は、ぜひこちら(↓)の記事を考えるきっかけにしていただけたらと思います。

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他、たまなぎブログトップページの「社会」のタグから同性婚について言及した記事も沢山ありますので、ご興味ある方はこちらもご参照ください。

 

5.もし、改憲が実現したら?

今までに比べ大変前進したと思われる今回の判決ですが、おそらく近いうちに、政府与党主導で行われるだろう改憲が実現したら、いったいどうなるのでしょう。

自民党による改憲草案はその第12条で「公益及び公の秩序」の要請があれば基本的人権を制限することを認めています。今までは、基本的人権は「公共の福祉」に反しない限り認められてきました。しかし、「公の秩序」というのは定義がはっきりせず、「公共の福祉」に比べて「公的権力が定めたもの」というニュアンスが強くなります。

もし、政府が、「異性同士が結婚して子供を持つというのが公の秩序だ、それから外れる者は秩序を乱す」と主張したらどうなるのでしょう。

「同性婚を認めたいなら憲法改正に賛成しろ」という人が時々いますが、国会において多数派を占める自民党の改憲案は、「慶安のお触書きだ」と言われるほど(改憲派の憲法学者・小林節氏の言)、人権については前時代的な価値観のもとに作られています。同性婚の実現が可能になるためのタイムリミットは、現行憲法が有効な間だけと考えると、そう遠くはないのかもしれません。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

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