皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。
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今回は前回の続き。怪談作家の東雅夫先生の編集による『鬼 ――文豪怪談ライバルズ!』の感想続きです。前回の記事はこちら↓
皆さん今日は、珠下(たまもと)なぎです。 今日も来て下さって、ありがとうございます! さてさて今日は、怪談作家の東雅夫先生の編集による『鬼 ――文豪怪談ライバルズ!』の感想です。2021 ...
東雅夫編『鬼 ――文豪怪談ライバルズ!』鬼好きによるマニアック感想①
今回もたまなぎの偏った好みでチョイスした作品を、独断と偏見に満ちた感想でご紹介します。前回よりもさらに暴走注意です。
④田辺聖子『水に溶ける鬼』
平安時代に生きる、鬼や異界のものに触れてしまった人々が、入れ替わり立ち替わり登場します。
一つの作品ですが主人公が固定されない、少し変わった形式の物語。正体の分からない板につぶされる武士の話から始まり、人知れず出産しようとして鬼婆の住処に迷い込んでしまった女房、地神を怒らせてしまった陰陽師……そして一番長いのは、小野篁の物語。
平安時代の貴族であり参議であった小野篁には、冥府と現世を井戸を通じて行き来したという伝説が残っています。その篁の、若かりし頃のひたむきな愛の物語。愛する女の死を経てなお続く、異様な愛の結末は……?
異様な愛の形の中にも、人の哀しさ・はかなさ、そして人を思う心の純粋さを感じさせる、これまた好みの物語でした。
⑤三橋一夫『鬼の末裔』
この作家さんは初読みだったのですが、今回の作品集の中で一番印象的だったのはこの作品でした。
男手一つで育ててくれた父を亡くした二十歳の青年が主人公。父は謹厳な教育者で、社会的な信用も厚い人物でした。父の部屋には十三体の仏像が置かれ、鍵のかかった木箱には、古いスペイン語で書かれた文書がしまわれていました。大学でスペイン語を専攻していた主人公は、辞書片手にそれを読み解き、遠い祖先の驚愕の過去を知るのです。そして父が生前に行っていたことも……。
主人公が父の部屋に置かれた十三体の仏像の意味に気づくシーン、それに続いて起こった出来事は圧巻で、正直言いましてトラウマ級の怖さでした。夢に見そう……。
また、ベースが私の推し鬼(!)・酒呑童子伝説をベースにしていることもあり、思わずのめりこむように読んでしまいました。
でも、でも、一言だけ言わせて下さい……!
茨木童子さまはイケメンです……!不細工じゃありません……!あまりの美少年ぶりに親に将来を心配されて神社に預けられ、その間にも女性からのラブレターが絶えなかったんです。その中に血文字で書いたラブレターがあって、そのせいで鬼になっちゃったんです……!
もちろん、そういう伝説があるというだけの話です、ハイ。文学作品だから好きにアレンジされてOKなんです。ただ、この伝説、気に入っていたので思わず一言言わずにはおられませんでした。すみません。
もちろん、『鬼の末裔』は素晴らしい作品で、今回の作品集の中では一番印象的だったのは本当です。
⑥手塚治虫『安達が原』
これは、人類が宇宙に進出した未来が舞台。主人公は人を取って食うという魔女を退治する命令を受けて、辺境の星へ向かいます。かつてレジスタンスだった主人公の過去がからみ……
かつては勇気あるレジスタンスだった主人公。けれど故郷の星は政権交代を繰り返しながらも、いずれの政権も瞬く間に腐敗し、同じことをくり返していました。それに気づかず、いつしか権力の犬となり果てていた主人公。そして、魔女の正体は……?
未来世界でなぜ『安達が原』?と疑問に思いますが、ラスト付近で一気にその謎が氷解します。何という哀しい運命。
主人公が序盤で恋人に対し、「女というものはかくもおろかなものか」と言い放った言葉は、見事に自分に返ってきます。人間の愚かさ、悲しさをいやというほどえぐり出した物語です。『安達が原の鬼婆』を換骨奪胎した物語はたくさんありそうですが、見事に独自のテーマを貫いた傑作です。
以上、たまなぎによる、『文豪怪談ライバルズ!鬼』の独断と偏見に満ちた感想でした。
同じく東雅夫先生の編集による、『日本鬼文学名作選』の感想はこちら↓
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東雅夫編『日本鬼文学名作選』鬼好きによるマニアック感想①
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東雅夫編『日本鬼文学名作選』鬼好きによるマニアック感想②
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