皆さん今日は、珠下なぎです。
今日も来て下さって、ありがとうございます!
さて、前々回の記事でご紹介した、11月30日に東京地裁で行われた同性婚をめぐる判決。
今回の判決を見て、私がどうしても引っかかったところがありましたので、お話したいと思います。
1.パートナーシップの拡大を勧める判決と、政府の夫婦別姓についての世論調査
今回の判決は、同性婚を認めない戸籍制度や民法の規定が「違憲」かどうかが争われた裁判でした。
憲法24条2項に対して「違憲状態」と判断したものの、結論として同性婚を認めない規定は「合憲」と判断し、国への損害賠償も棄却しました。
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皆さん今日は、珠下なぎです。 今日も来て下さって、ありがとうございます! さてさて、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』や『きのう何食べた?(何食べ)』など、同性愛 ...
同性婚訴訟3件目、東京地裁の判決に思う①(少しチェリまほネタも)
今回の判決では、「婚姻と似た制度の積極的な導入」は推進しましたが、同性婚そのものを推進する文言は判決文にはありませんでした。
これについて、京都産業大の渡辺康彦教授(家族学)は、「異性カップルと同様の法律婚よりも同性パートナーシップ制度などの導入を重視している印象を受けた。(中略)あえて過渡的な方法を強調したのは時代に合っていない」と指摘したのは前述の記事のとおりです。
このことで思い出したのは、2022年8月の報道。
以下朝日新聞から、選択的夫婦別姓制度について、政府が行った世論調査についての記事の引用です。
「前回2017年に「賛成派」は42・5%だったが、昨年末からあった直近の調査では28・9%になった。
ただ直近の調査は、選択肢として用意された意見の細かい内容や並び順などが、それまでとは異なっていた。
17年までの調査(旧版)では、賛成派に向けた選択肢は『夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない』だったが、直近の調査(新版)では『選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい』になった」
また、直近の世論調査では、「通称使用」の項目を独立させました。
この結果、「夫婦別姓賛成派」は数字上、激減したのです。
2.見せかけの「中庸」に流れやすい世論調査
これはどういうことでしょう?
簡単に言えば、選択的夫婦別姓について「賛成」「反対」の二択ではなく、一見「中庸」に見える、「通称使用の拡大」という項目を設けたことで、「賛成」を選択する人を減らそう、という誘導です。
実際、「通称使用」では解決できない問題が多数あるため、選択制夫婦別姓制度は求められているのです。
ですから、「通称使用の拡大」という選択肢は、実際は「選択的夫婦別姓制度のへの反対」に当たります。「反対」「反対」「賛成」の三択のようなものですね。
けれど、このように選択肢が並んでいると、人間は「賛成」「どちらでもない」「反対」ととらえやすく、特に白黒はっきりさせたくない日本人は、「どちらでもない」を選びがちになります。
(実際にこのことは社会心理学者の実験でも証明されています。
夫婦別姓、質問変えたら賛成派「激減」 政府世論調査を研究者が検証:朝日新聞デジタル (asahi.com))
さらに、「通称使用の拡大」という項目は、あたかも選択制夫婦別姓制度を導入しなくても、現状の問題は解決できると誤認させる役割も担っているのです。
実際、法務省は質問項目の変更について、与党の保守派議員に配慮したと述べています。
「保守派との関係でもたない」 夫婦別姓、世論調査質問変更めぐり 法務省、自民議員に配慮か:朝日新聞デジタル (asahi.com)
3.同性婚問題で同様の手法が使われるとどうなるか
同性婚問題で、同様の世論調査が行われるとどうなるでしょう。
2020年の朝日新聞の世論調査を見て見ましょう。
この時は同性婚に対して「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択で調査が行われ、賛成派46%、中立31%、反対派23%。
17年衆院選時に行った有権者を対象にした調査と比べると、夫婦別姓の賛成派は19ポイント、同性婚は14ポイントそれぞれ増えています。
もしこれを「同性婚を導入するのがよい」「パートナーシップ制度の拡充をはかるのがよい」「同性婚を導入すべきでない」という3択に変えたとしましょう。
賛成派のうちかなりの人数が「パートナーシップ制度の拡充をはかるのがよい」に流れるのではないでしょうか。
「パートナーシップ制度」は法律婚とは違い、法律上の権利や義務は全く発生しません。
パートナーシップ制度とは?メリットや結婚との違いについて解説 (best-legal.jp)
ところが、このような選択肢があると、同性カップルが直面している問題が、パートナーシップ制度によって解決されてしまうかのような印象を与えることができるのです。
今後、このような手法で世論調査が行われるようになるかもしれません。そうすれば、同性婚への賛成は、数字上激減するでしょう。この度の判決は、そういった方向に道を開いたという見方もできます。
4.差別を温存したい人のための判決
先ほどのサイトでも示したように、パートナーシップ制度は結婚制度とは違います。
同性婚への道を開かず、「結婚に類似する制度」としてパートナーシップ制度の拡充を求めた今回の判決において、一番尊重されたのは誰でしょうか。
それは同性婚を求める当事者ではなく、「差別を温存したい人」のように私には見えました。
「同性婚を求める人に多少配慮はするけれど、同性婚は絶対に認めません。異性婚との差は絶対に守りますから安心して下さいね」
そのようなメッセージがこの判決から透けて見えないでしょうか。
そう考えると、一部はっきり「違憲」と認めた札幌地裁の判決からは、やはり後退しているように見えますね。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました!