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たまなぎブログ by LTA出版事業部

荒魂と和魂~あのアマテラスも祟り神だった?

皆さんこんにちは、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

 

先日、天智天皇によって山から降ろされたと推察される、「筑紫の神」についてお話ししました。

国境を超える者の半分の命を奪ってしまい、「命尽クス」の神と呼ばれた、ちょっと怖い神様でしたね。

「筑紫の神」についてはこちら↓

【天智帝の神降ろし】筑紫神社①~山から降ろされた土着の神

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【天智帝の神降ろし】筑紫神社②~土着の神が降ろされたいきさつ

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ところが、日本の神様というものは、多かれ少なかれ、このような怖い面を持っているのです。

今日はそのお話をさせて頂きましょう。

 

1.荒魂と和魂

皆さんは、「荒魂(あらみたま)」「和魂(にぎみたま)」という言葉をお聞きになったことがありますか?

呼んで字のごとく、「荒々しい魂」と「温和な魂」です。

神社についての多くの著書がある作家の戸部民夫さんの著作『本当は怖い日本の神様』の初めにはこのように書いてあります。

実は、これらの神様には、やさしい和魂(善神)と荒々しくて怖い荒魂(悪神)の二面性があることは意外に知られていません。

私たちがふだん神社に参拝して祈願(交信)しているのはもっぱら和魂の側面、いわば親しみのある神さまの「表の顔」です。それに対してなじみのない「裏の顔」が荒魂の側面で、こちらはふだん隠れているので、ほぼ「見る」ことはできません(もし見えたりしたら、それこそ神様の機嫌を損ねて祟られるときです)。

(引用元;戸部民夫『本当は怖い日本の神さま』,ベスト新書)

イザナミノミコト、スサノオノミコト、アマテラスオオミカミなど、よく知られている神様たちも、恐ろしい一面を持っていることは神話にも知られています。

イザナミノミコトは夫のイザナギノミコトと共に沢山の神々を生んだ母神ですが、黄泉の国で変わり果てた自分を見られたことに怒り、夫を追い回し、最後には「地上の人を一日千人殺す」と呪いをかけます。

スサノオノミコトも、イザナギノミコトから生まれた三貴子の一人でありながら、大人になっても役目を果たさず泣きわめき、あらゆる災厄を引き起こします。その一方で、ヤマタノオロチを退治し、農耕民であることを強くうかがわせるクシナダヒメと結婚して子孫を反映させる、農耕と豊穣の神という側面も持っています。

また、筑紫の神は、恐ろしい祟り神でしたが、祀られることにより筑紫の守護神となりました。このように、もともと祟りをなす神を祀ることで慰撫し、善神に転じさせて利益を願う、という例もあまたあります。もともと祟り神だった菅原道真を祀った太宰府天満宮などはこの典型です。

 

2.アマテラスの祟り~皇祖神は祟りもすごい

皇祖神として、日本神話の神々の中でも最高位にあるアマテラスオオミカミにも、祟り神としての側面はあります。

しかもアマテラスオオミカミは、強力な神さまだけあって、祟りもすごいのです。

弟のスサノオノミコトの乱行に怒って天の岩戸に隠れてしまい、世界を闇に閉じ込めてしまったのはあまりにも有名なのですが、実はその後もアマテラスオオミカミは、子孫にたびたび祟っているのです。

一番有名なのは、崇神天皇への祟り。

崇神天皇の5、6年、国内に疫病が蔓延して人口の半分以上が死亡し、百姓の離散や人民の田反乱が多発します。崇神天皇が原因を占ったところ、天皇の宮殿内に祀られている八咫鏡に宿るアマテラスの御霊による祟りであることが分かったというのです。

その後、平安時代になってからも、「穢れた行為を見とがめられた」「祀り方が悪かった」などとアマテラスの怒りを買った天皇たちは、体調不良や自然災害など、アマテラスの祟りに苦しめられるのです。

「わたくしをこんなに雑に祀るなんてありえませんわ!😡おしおきですのよ!」

太陽神であり、皇祖神でもあるアマテラスにも、こんな恐ろしい一面もあるのです。

 

3.荒魂と和魂の分祀~八女津媛とタギリ姫

伊勢神宮には、伊勢神宮内宮の別宮に、「荒祭宮」という別宮があります。

祀られているのはアマテラスオオミカミの荒魂です。

荒魂は祟りをなすという恐ろしい面もありますが、活動的でエネルギッシュな面でもあるため、問題を解決したい時や新しいことを始めたい時はこちらにお参りするとよい、と同じくアマテラスオオミカミの荒魂を祀る神社の由緒記に書かれている例もあるそうです。

このように、神さまのうち、荒魂だけを分離して祀る、というのは日本の祭祀の中でもよく見られるそうです。

実は、福岡県にも同じような例があります。

筑紫の君磐井の本拠地・八女は、八女津媛神社という古い神社があります。

景行天皇が九州遠征に出かけた時に、この地に神がいるかと水沼君に尋ねたところ、「八女津媛という女神がおります」と答えたという記録が『日本書紀』に残されていることから、大変古い神様であることが分かります。

実はこの「八女津媛は、タギリ姫の荒魂である」という記録が、久留米市の赤司八幡宮という神社に残されています。

タギリ姫は、宗像三女神の長女で、オオクニヌシの妻の一人でもあります。宗像三女神は、天孫降臨に先立ってニニギノミコトを案内した海の神さま=海神(わだつみ)です。

ちなみに、『日本書紀』でも、宗像三女神が民をかすめ取った履中天皇に祟ったという記録があり、強い荒魂を持つ神様であることがわかります。この荒魂が八女津媛ということでしょうか。

水沼の君は、もともと宗像氏と同じ神様を祀っていたとされています。位置的に水沼の君の本拠地は、八女にも近い。ひょっとしたら筑紫の君も本来、宗像の君や水沼の君と同じ海神を祀っていたのかもしれませんね。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

(参考文献;戸部民夫『本当は怖い日本の神さま』,ベスト新書)

 

 

 

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