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たまなぎブログ by LTA出版事業部

チェリまほ122話感想~魔法・脱魔法をめぐって

皆さんこんにちは、珠下なぎです。

今日も来て下さって、ありがとうございます!

さて、本日は、先週Twitterで公開されたチェリまほ122話の感想です。新婚の二人のもとに、柘植さんが現れます。二人の時間を邪魔されたのに、「新婚」の一言で満面の笑みになる黒沢さん、実に分かりやすくて好き(笑)。ついでに3ページ目、揃って固まる二人の背景のトーン、可愛い。

https://twitter.com/toyotayou/status/1563120143802126338?s=20&t=yDdJX-LtaVOCBIuQQdI4_A

お互い思いを確かめ合ったものの、その後「何もない」ことに悩み、安達くん&黒沢さんカップルに相談をもちかける柘植さん。実写版では安達くんより先に脱魔法使いし、映画版では湊くんに同棲の約束を取り付けるまでに二人の仲を進展させた柘植さんですが、原作ではまだ魔法使いのままなんです。

この機会ですから、たまにはつげみなカップルと、魔法について考察してみたいと思います。ドラマ版・映画版・原作の盛大なネタバレを含みますので、どれか一つでも未履修の方は、これから先はお読みにならないことをお勧めします。

 

1.魔法・脱魔法をめぐる、原作とドラマの違い

突然ですが、私は柘植さんがわりと好きです。柘植さんの売れなかった時代の焦りを感じさせるセリフには共感しますし、執筆に対する心構えは、学ぶところが多いです。原作のセリフ「読んでくれる人がいないと、小説なんてただの戯言(たわごと)にすぎんからな」は名セリフ。肝に銘じます、はい。

さて原作において、安達くんの魔法・脱魔法はシンプルです。原作3巻のラストシーンで、安達くんは「こいつの心に触れるために 俺は魔法使いになったのかもしれない」と独白し、原作7巻では、「魔法なんかなくったって 黒沢となら大丈夫だって思えたから(魔法を失ったのだ)」と黒沢さんに告白します。

安達くんの魔法は、30歳になったとたんに突然現れ、そして、黒沢さんと結ばれたことで、これまた突然失われます。黒沢さんと結ばれることで魔法がなくなることを予想していなかった安達くんには、「魔法を捨てるかどうか」で逡巡する暇は与えられませんでした。

けれど実写版(ドラマ)では違います。柘植さんが湊くんと結ばれ、魔法がなくなってしまったことを先に知ってしまった安達くんは、「魔法を失うべきかどうか」で逡巡します。

先に魔法の力を失い、湊くんの心が読めなくなった柘植さんに、「魔法に頼りすぎるな」と忠告され、安達くんは魔法に頼らずに頑張ろうと決意します。けれどコンペに魔法の力を悪用してしまったことへの罪悪感、魔法を失うことへの恐怖など、様々な感情が絡まり合い、ドラマ11話で一度は黒沢さんと別れる選択をするまでに追い詰められてしまいます。

(安達くんと黒沢さんが一度別れてしまうことになったのは、他にも色々理由があり、一言では説明できません。チェリまほ11話について考察した記事はこちら↓https://ameblo.jp/dr-nagi/entry-12669880442.html

ドラマの描き方は、魔法の力を失うかどうかという選択を主人公である安達くんに与えることで、より強く魔法の力を意識させ、その意味について考えさせています。けれどその分悲劇的な展開を迎えることに。魔法の力をより掘り下げたとも言えますが、好みは別れるかもしれませんね。

 

2.つげみなカップルと二人の選択予想 

さて、柘植さんと湊くんについて。

ドラマ版では「ゲイ」と唯一セクシュアリティが明らかにされている湊くんですが、原作では彼のセクシュアリティは明らかではありません。柘植さんも、書いている恋愛小説は男女間のもののようですし、湊くんへの恋心を自覚した時に「相手は男でヤンキーで(そんなことあるはずがない)」と否定しようとしているところから見ると、もともと男性が好きな男性、というわけではなかったようです。

こうやって登場人物の性的指向をあえて明らかにせず、多様な恋愛を肯定している点で、チェリまほは通常のLGBTQを扱った作品よりもさらに進んだ魅力を持っていると思うのですが、これについては書くと長くなりますので、興味のある方はこちらをご覧下さい(https://ameblo.jp/dr-nagi/entry-12674606782.html

主人公カップルに比べて、進み方がゆっくりなつげみなカップルですが、実写とは逆で、まだ魔法使いなのに、「魔法を失う」ことが予測できる状況に置かれたのは柘植さんです。ひょっとしたら、今後、実写版で魔法喪失をめぐって安達くんが苦悩したように、魔法喪失の前に様々な思いに翻弄されるのは柘植さんかもしれませんね。その時、柘植さんがどのような選択をするのか……。ちょっと怖いけれど楽しみです。 

さて、このチェリまほ122話、ラストで黒沢さんが柘植さんにある提案をするようですが、何でしょう?特装版7巻で、柘植さんに恋愛相談をもちかけられた黒沢さんが「テーマパーク(多分ディズニー)ダブルデート」を提唱していることからも、Twitter上では「ダブルデートのお誘いでは?」というご意見が多かったです。私も同感です。答えは次回で明らかにされるのでしょうか?

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

 

 

 

 

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